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第171話「宴会」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

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 ディーノはナイフを使い、手早く猪を解体して行く。


「わあ! ディーノさん、巧い! プロの猟師さんみたい」

「ホント! お兄ちゃわん、上手!」

「ほう!」

「たいしたもんだ」


 ノエルとアニエス、他の村民達も感心するほど、ディーノの手際は良い。

 ステファニーの狩猟に付き従い、習い鍛えた腕は相当なものだ。

 加えて、英雄亭でも仕入れた肉の処理を行っていたから尚更である。


 更に肉塊を食べやすい大きさにカット、スライスするのを見て……

 本職の肉屋のようなナイフさばきに、村民達は凝視し、唸るしかない。


 ノエル母子もディーノの見事な手際に唖然としていたが、

 先に我に返ったアニエスが、ノエルの脇腹をつんつん。


「ママ、お野菜」

「あ、そ、そうねっ」


 愛娘に促され、ノエルはカットした野菜を山盛りした箱を、

 急いでディーノへ差し出した。


「ありがとうございまっす!」


 ぐうううううう……

 ぐううううう~~


 ここで計ったように、タイミング良く村民達の腹が鳴る。


 既にバーベキューコンロには炭がくべられている。

 さあ、バーベキューパーティーの開始だ。


 笑顔のディーノはどんどん肉と野菜をコンロに並べて行く。

 既に温まっていたコンロは、じゅうじゅうと音をたて……

 あっという間に肉と野菜の焼ける香ばしい香りが辺りに満ちた。


 ごくり……

 ひとりののどが鳴ると、


 ごくり、ごくり、ごくり、


 腹の虫同様、止まらなくなる。


 コンロの火力は強く肉、野菜はすぐに焼き上がる。

 やはり焼き立てが食べたい。

 と、村民達はディーノへ迫る。


「さあ、ちゃんと、並んで、並んでねっ!」


 アニエスの声が可愛く響き、

 ノエル母子以外、他にも手伝いを買って出た有志の村民達が、

 皿に次々と盛り、皆へ配って行く。


 そしていつの間にか……


『おおっと、やっぱり来ましたか、おふたりとも』


『やっほ~、ディーノ。呼ばれたから来てあげたわよ~、私達にも肉いっぱい頂戴!』

『何だ、言うに事を欠いてやっぱりとは……ヴィヴィから聞いたぞ。お前の作った美味い朝食とやらを、食べ損ねたから、わざわざ来てやったのだ』


 人間の少女に擬態した、

 ヴィヴィとオリエンスの肉食系精霊女子がしっかりと手を差し出していた。


 何故ふたりが来たのかといえば……

 先ほど、ディーノが念話で「お時間があれば」と、呼びかけておいたのである。


 食べ物の恨みは怖ろしいという。

 何も、音沙汰無しに放置すると、必ずや怖ろしい『災い』が起こると、

 ディーノが危惧したからだ。


 案の定、山盛りの肉を前にふたりの女子は至極、ご機嫌であった。

 口の周りを油だらけにし、ガツガツとむしゃぶりつく。


 ふたりの上級精霊が喜ぶ様子を見て、ディーノは胸をなでおろし、ホッと軽く息を吐いた。


 何故なのか……普段は見かけないこのふたりに関心を持つ村民は皆無だ。

 ディーノには未知の特別な魔法を使っているらしく、ノエルやアニエス達村民が

 怪しがる素振りはなかった。


 ふと、見やれば……

 広場の片隅で、アニエスが、ケルベロス達戦友にも食事を与えていた。

 幼い彼女はやはり動物好き。

 ジャンだけではなく、戦友全員と馴染んだらしい……


 ホッとしたそんな中、ディーノは更に『ある者達』を待っていた。

 先ほど会った中年の門番男性?

 ……否、違う。


 やがて……

 「こそこそ」と恥ずかしそうに現れたのは……

 ダヴィドとその取り巻き、都合3人の少年達であったのだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ダヴィド、少しは思い知ったか? でも勝手に仕事を投げ出してはいけないぞ」


「…………」

「…………」

「…………」


 ディーノが声をかけてもダヴィド達3人の少年は無言だった。

 俯いて言葉を発さない。


 無理もない。

 『男の約束』を破って、勝負直後に姿をくらましたばかりか……

 課せられた門番の仕事まで放棄し、他人へ押し付けたからだ。


 だがディーノは、これ以上3人を責めるつもりはなく、許すつもりでいた。


 小村ポミエにおける生活は質素で苦しいものだろう。

 毎年課せられる税金も重いに違いない。

 ノエル母子がオークに襲われたように魔物など外敵の脅威もある。


 しかし、彼等にはこのポミエ村という良きふるさとがあり、

 村民達という深い絆の同胞達が居る。


 ダヴィド達は……

 ディーノのように『苛烈な主=ステファニー』に仕えた事などないし、

 ひとりで全ての事をこなすよう求められる事もない。

 殴られて罵られる事もない。

 遠慮しながら、窮屈さを感じながら、育ち盛りの子供にとって充分とはいえない、他人の家のメシを、こわごわと食った事もないのであろう。


 村においては……

 次世代を担う貴重な子供として、大事に育てて貰ったに違いない……


 ディーノはダヴィド達の暮らしぶりを知らない。

 だから、このように考えた事も、所詮想像には過ぎないが……


 ……ダヴィド達が、根拠のない自信を振りかざす、

 痛いハナタレ野郎どもだった事は確かなのだ。


 小馬鹿にしていた、自分と同じくらいのさえない少年……

 そんなディーノが、勝負にあっさり勝ち、

 僅かな間に、大きな猪まで狩って来た。

 己よりも……遥かに強靭な心身を有していた。

 

 つまり……

 ディーノは、自分とは遥かに器が違う。

 そう感じたに違いないのだ。


 と、その時。


 ぐううううう……


 ダヴィド達の腹が鳴る。

 彼等も相当、空腹らしい。


 なのでディーノは、ためらう3人の背中を押してやる。


「おいダヴィド、リセットだ」


「え? リセット?」


「分からないのか? 許してやるよ」


「ゆ、許すって……」


「お前達をしもべなんかにはしない、裸で村を3周もナシだ。ノーカウントだよ。ほら、さっさと肉を食え」


 背中を押し、手を差し伸べてくれたディーノ。

 さすがにダヴィドも反省し、深く頭を下げた。


「ディ、ディーノさん! あ、あんたすげぇよ! あんなに腕相撲やった後で、しれっと、こんなにでっけぇ猪を捕って来るなんてさ!」


「もういいから、食えって」


「いえ! 俺、ちょっと腕っぷしが強いだけで思い上がってました……ご、ごめんなさいっ! 許してください!!」


「すみません!」

「反省しますっ!」

「謙虚になりますっ!」


「よし! 反省したなら全員許す! ガンガン猪食え! 野菜も忘れるな! 食ったらすぐ仕事に戻れよ」


「りょ、了解っす! ディーノさんの言う通り、肉と野菜、バランス良く頂きま~っす!」


「うまそ~」

「猪なんかひさしぶりだ~!」

「野菜も食うぞ~!」


 こうして……

 ダヴィド達はディーノと出会い、腕相撲をした事で、世間知らずだったガキから脱却した。


 人と人の出会いとは不思議なものである。

 

 ディーノにとって、ポミエ村の少年ダヴィドは、

 印象に残らない、通り過ぎ行くその他大勢の出会いにすぎない。

 いつか、記憶の底へ沈んで行くやもしれない。

 

 だが……

 逆にダヴィドにとって、ディーノと出会い、勝負したこの腕相撲は、

 大人への第一歩を踏み出す、生涯忘れない、

 人生の重要なターニングポイントとなったのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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