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第170話「企画提案」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

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 ダヴィドとの『勝負』が終わって、

 1時間と少し後……既に陽は西の水平線近くだ。

 

 ディーノはポミエ村から少し離れた森の中に居た。

 無論ケルベロスも一緒だ。


 ディーノが森に居るのは、何故か?

 当初の予定通り、修行しながらオークの巣を探す為か?

 あたらずとも遠からず。

 実は奴らの巣を探索しながら、狩りをする為である。


 狩猟許可は探索を申し出た際、村長のマチューから取っていた。

 その際、どのような動物――獲物が、どこの場所に居る等も聞き出している。


 ヴァレンタイン王国における森での狩猟権は、

 基本的にその地の領主や管理官が有している。

 魔物は別として、食用になる鹿や猪など大型の獣は、

 勝手によそ者が狩りをしてはならないという不文律がある。


 だが、ポミエ村の領主は、村長のマチューにある程度の権限を与え、

 「乱獲さえしなければおかまいなし」という緩い条件で、村民の狩猟を許可していた。

 ディーノはマチューの代理という名目で狩りをしていたのである。


 そもそも……

 何故、ディーノが修行を兼ねた村周囲の探索に専念せず、

 狩りをしているのか?


 実は、マチューに提案し、ノエルが賛同した『企画』を、

 今日行おうと決めたのである。

 村民達と懇親し、深くコミュニケーションを取る企画を。

 ダヴィドとの勝負で思いのほか時間を取られた事も理由である。


 と、その時。


 100mほど先に動くモノが居た。

 索敵をしているから、正体が何なのか、ディーノにはすぐ分かる。


 どしゅっ!

 間を置かず、風の魔法剣が放たれ、目標の『猪』が「どう!」と倒れた。


「よっし! やった!」


 ディーノが近寄ると、猪は既に絶命していた……


「悪いな……」


 申しわけなさそうに一礼したディーノは、改めて猪を調べ始める。

 手早く血抜きをする。


 仕留めたのは、『牡の成獣』である。

 体長は1m以上、体重も100㎏を楽に超えていた。

 この付近に生息する猪として、超大型とまでは行かないが、

 『そこそこ』という感じだ。


 ディーノがステファニーに連れられ、参加していたオベール家の狩猟では、

 このように一頭仕留めただけでは終わらない。

 食料として確保するのも売るのにも少な過ぎるからだ。

 

 しかし、今回の『企画』にはこれで十分であろう。


「よっと」


 ディーノは少しだけ気合を入れ、猪を肩に担いだ。

 

 ルイ・サレオン指輪の効力により、俊敏さだけでなく……

 膂力も大幅にアップしている。

 

 今のディーノにとっては、

 100㎏以上の猪を担ぐのも造作ない。


『おい、ディーノ。獲物は俺が運ぶよ』


『いやいや、これも修業さ……身体に負荷をかける方のね』


『ふむ、成る程……良い心がけだ』


『この後は……ヴィヴィ様から、授けられた転移魔法の修業だな。それで今日は終了』


『うむ、オークどもの探索は明日以降だな?』


『ああ、今日はこれで打ち止めだ。少なくともこの森に奴らの気配はない』


『了解!』


『じゃあ、村へ戻ろう。俺の居る半径10m以内に入ってくれ』


『分かった』


 ディーノの呼びかけに応じ、ケルベロスはディーノの傍らへ移動した。


転移トランジション!』


 言霊が詠唱された瞬間!

 猪を担いだディーノとケルベロスは、煙のように姿を消していたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 転移魔法は上手く制御(コントロール)出来た。


 ポミエ村の正門付近の雑木林へ転移し、さりげなく現れたディーノを出迎えた門番は、ダヴィド……ではなかった。


 中年男性の一般村民であり、聞けば、ダヴィドから急に交代を頼まれたらしい。

 それも本人ではなく、取り巻きからの伝言だという。


 ダヴィドは村のどこかに姿をくらました……ようだ。


「うわ! ダヴィドの話なんかよりも、これは何だい、でけえ猪だ……すげ~な!」


「ええ、村長さんと約束しましたから」


「おお、《企画》って奴は、俺も聞いてるぞ。もう村の皆が広場で準備に取りかかってる」


「ですか」


「うん、でもまだ若いのにさすがだな! 村長が自慢してたランクAっていうのはホントだったんだ」


「いや、単に運が良かっただけです。後で、中央広場へ来てください、ご馳走しますから」


「おお! それは嬉しい。猪は大好物なんだよ、じゃあ、誰かと交代したら、……そうだな、2時間後くらいに行くぞ」


「了解っす! 肉、ちゃんとキープしておきます」


 笑顔のディーノは先ほど腕相撲をした際の記憶を手繰った。


 全くディーノに歯が立たず……

 「瞬殺された」ダヴィドはよほど悔しかったらしい。

 未練がましく何度も何度も雪辱戦を挑んで来た。


 「仕方がない」と、ディーノも応えて受けてやった。

 何度も何度も何度も……


 しかし通算30回目の勝負にダヴィドがあっさり敗れた瞬間、

 審判役の村長マチューが遂にストップをかけ、『試合』は終了したのである。


 村民達の見守る中……

 大恥をかいたダヴィドは絶叫して、逃げ出し、その後を散り巻ふたりが追いかけて行ったという次第。

 

 そのまま村のどこかに隠れてしまったのだろう。

 ディーノの索敵で、ダヴィドの気配は……

 間違いなく村内にあるのを感じるから。


 さてさて!

 ディーノが、村の中央広場まで歩いて行くと、門番の男の言う通り、

 既に大勢の村民達が集まっている。

 村民達は、村長経由でディーノの呼びかけに応えたのである。


 と、ここでマチューが進み出る。

 捕えた大猪を見て、驚愕している。


「おおおお! 凄いな、ディーノ君、有言実行だな!」


「はい、運良く有言実行っす。コイツを何とかゲットしました」


「そんなにでかい猪を軽々担ぐなんて、ものすげ~な!! さ、さすがランクAだっ!!」


 そして、ノエルとアニエスも、


「わあ! 凄いわ!! ディーノさん、こちらの準備はOKよっ!」

「わあおっ! 大きい猪!!! お兄ちゃわん、すご~い!! ほらあ見てぇ!!」


 喜ぶアニエスが指さした先には……

 バーベキューパーティーのセットが組んであった。

 傍らのテーブルには、処理した野菜が山盛りとなっている。


 そう……

 ダヴィドとの腕相撲勝負という余計なイベントが起こってしまったが……

 

 ディーノはノエル・アニエス母子生還記念と銘打って、

 村長のマチューへ、お祝いのバーベキューパーティを企画提案したのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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