第168話「準備運動」
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ステファニーとの『腐れ縁』を断ち切る為には……
彼女より遥かに格上、つまり高貴な身分の頂点ともいえる王族女子と結婚する。
結果、第一夫人にはなれないとステファニーへは告げ、
きっぱりと「ざまあ」して、別れを告げる。
解決方法が皆無だった難題に対し、ノエルから妙案が出たのは嬉しい限り。
だが……難度がめちゃくちゃ高すぎる。
意味不明な愛を突きつけるステファニーは例外中の例外であり……
通常は貴族と平民の結婚でさえ難しい。
それなのに、身分の頂点に位置する王族との結婚なんて、
絶対に無理ゲ―なのだ。
とんでもない奇跡でも起こらない限り、ありえない。
しかしディーノは思い直す事にした。
少なくとも、無策ではない。
解決案が、ひとつは出たと。
考案してくれたノエルには感謝しかない。
という事で、悩み話が終わり、ディーノはノエルとともに
彼女の自宅へ戻る。
道すがらノエルは言う。
「ディーノさん」
「はい」
「ひとつだけ余計なお節介をさせて……愛のない結婚はしちゃダメよ、絶対に」
「はい、肝に銘じます。アドバイスありがとうございます」
ノエルの家に夫は居なかった。
一緒に暮らす痕跡も気配さえなかった。
ノエル自身何も語らない。
アニエスも同様である。
何か複雑な事情があるのだろう。
でも、このような場合、沈黙は金。
余計な事は聞かない方が良い。
万が一、ノエルが話して来たら、聞いて気持ちを受け止めてあげれば良い。
今までの経験から、ディーノが学んだ処世術である。
そんなこんなで、ノエルの自宅へ帰還すると……
庭先でケルベロス、オルトロスは並んで身体をよこたえていた。
狼のような風貌の猛犬2体が睨みをきかせる……番犬には充分過ぎる。
『おう、ディーノ、お帰り』
『お疲れ!』
『少ししたら、修行に行く。ひとりで構わないから、良かったら付き合ってくれ』
『『了解!』』
という会話を念話で交わしながら、
ノエルは扉を開けた。
ディーノはやや後方で控えている。
「ただいまあ!」
「あ~~、ママ! お兄ちゃわん! お帰りぃ!!」
「ママあ! 猫ちゃんといっぱい、いっぱい遊んでたんだよ~!!」
「へぇ、楽しかった?」
「楽し~、可愛い~、アニエスも猫ほし~」
ご機嫌なアニエスを見て、ノエルも破顔。
にっこにことなる。
愛娘の笑顔が母親にとっては一番の活力剤だ。
となれば、得意満面なのがジャンである。
先ほどのケルベロス達同様、念話で話しかけて来る。
『どうだ! ディーノ。寝ているだけの犬っコロどもと違い、俺様はこういう地味な仕事もばっちり150%の結果で応えるにゃ』
『おう! お疲れ、良くやった、ジャン』
『えっへん! 女子には温かい笑顔と熱い愛をプレゼント! これが俺様のモットーにゃ!』
「お兄ちゃわ~~ん!!』
と、ここでアニエスが抱き着いて来た。
改めて自覚したがディーノは、子供好き。
可愛いアニエスなら尚更だ。
ひとりっ子のディーノには、未知である妹体験なのだ。
甘えるアニエスをしっかり受け止め……
ディーノは優しく彼女の背をなでていたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなこんなで既に時間は午後3時近かったが……
マチュー村長に告げた通り、ディーノは修行を兼ねて、
ポミエ村周辺を探索する事にした。
相談した結果、同行するのはケルベロス、
追い払ったオークの気配を追跡させる為である。
ちなみにオルトロスとジャンは留守番として、ノエルの家で待機する事となった。
ディーノが村の正門にて、開門を頼めば……
「何だ、あんた、こんな時間から出るのかよ?」
「すぐ夜になっちゃうぜ」
「丁度、いいや、魔物に喰われちまえ!」
訝し気な表情で、尋ねて来たのは門番役の逞しい少年ダヴィドである。
取り巻きらしい少年ふたりを連れていた。
よそ者がいきなり来て、デカいツラしやがって!
という反感がはっきりと、日焼けした顔に出ていた。
ディーノが村長に許可を取ったと前置きし、
外出の趣旨を告げると……
ダヴィドは舌打ちをしながら、いやいやながらという雰囲気いっぱいで、
門を開ける。
「おい、あんた! 午後6時までに戻らなかったら、ぜって~門を開けないからなっ」
「締め出してやる!」
「泣いても知らねぇぞ」
「了解」
つんけんされてもディーノは平気だった。
ダヴィド達の態度は高慢だが……
あのステファニーの横暴さ、凶暴さに比べればどうという事はない。
そのステファニーに指摘された通り、ディーノは以前とは違う。
何の取り柄もないと、己をひどく卑下していた頃とはまるで違うのだ。
「ふん! こんな青びょうたん、このまま出て行って欲しいぜ!」
「そうだそうだ」
「出てけ出てけ」
「…………」
「けっ! こいつ王都のランカーだか何か知らないが、ひ弱なガキの癖に偉そうにしやがって」
「ぜって~インチキしたんだぜ」
「ギルドマスターに裏金でも掴ませたか?」
「…………」
ダヴィド達の悪態は止まらない。
無言で応えていたディーノだったが……
ここは少し釘を刺しておいた方が良さそうだ。
「おいお前ら、いいかげんにしろよ。口だけは達者だな」
「な、何だと! 口だけだと!」
「ダヴィドの兄貴、こんな奴、やっちゃってください」
「ぶち殺しちゃいましょう!」
「ほう! 腕によほど自信があるようだな」
「おうよ! 王都の青びょうたん! てめえなんか瞬殺だ」
「いいぞ、いいぞ、あ・に・き!」
「やっちまえ兄貴!」
取り巻き達にあおられ、ダヴィドは拳を突き上げる。
無言で苦笑するディーノ。
遂には調子に乗って、ダヴィドが言う。
「おい、青びょうたん、俺と勝負しろ!」
「そうだ! 勝負だ!」
「たたんじまえ!」
こうなったら、仕方がない。
相手をしてやるか……
少しだけ、な。
「分かった、勝負しよう、ダヴィド。まあお前レベルじゃあ、俺には300%勝てないがな」
「さ、300%勝てないだとぉ!」」
「な、な、何言ってるこいつ!」
「ぜ、ぜ、ぜって~ハッタリだよ、ハッタリ!」
ディーノの挑発とも聞こえる言葉に、ダヴィド達は大きく噛み叫んだ。
どうやら、ディーノが勝負を受けると思っていなかった……らしい。
威勢が良いのはどうやら口だけのようだ。
「よ、よ~し! ち、畜生! や、やるか、コノヤロ!」
「兄貴の強さを、こいつの身体に教えてやりましょう!」
「そうです! 目にもの見せてやりましょうよ!」
ディーノから、勝負と言われ、明らかに動揺しているダヴィド。
もしや剣を使って戦うと考えているのか、
腰から提げた、古びた剣の柄を握りしめている。
無論、ディーノは剣で戦うつもりはない。
本気で戦うつもりもない。
「おいおい、何、ビビってる。俺は決闘やケンカをするわけじゃない。お前とは腕相撲で勝負してやる」
ディーノは付近に置かれていた樽を指さした。
腕相撲の勝負に使うにはうってつけの樽である。
「え!? う、腕相撲だと!?」
「ああ、腕相撲だ。俺が以前仕えていた貴族家では、ケリをつける為、良くやっていたぞ」
「よ、よ、よしっ! い、いいだろうっ! ……や、やってやろうじゃねぇかぁ!」
「兄貴! 待ってました!」
「こいつが、二度とこの村へ来たくないと思うくらい、徹底的に痛めつけましょう!」
ダヴィドは……びびりながらも勝負に応じた。
こうして……
ディーノは修行の前に、軽く『準備運動』をする事となったのである。
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