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第168話「準備運動」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

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 ステファニーとの『腐れ縁』を断ち切る為には……

 彼女より遥かに格上、つまり高貴な身分の頂点ともいえる王族女子と結婚する。

 

 結果、第一夫人にはなれないとステファニーへは告げ、

 きっぱりと「ざまあ」して、別れを告げる。


 解決方法が皆無だった難題に対し、ノエルから妙案が出たのは嬉しい限り。

 だが……難度がめちゃくちゃ高すぎる。

 

 意味不明な愛を突きつけるステファニーは例外中の例外であり……

 通常は貴族と平民の結婚でさえ難しい。

 

 それなのに、身分の頂点に位置する王族との結婚なんて、

 絶対に無理ゲ―なのだ。

 とんでもない奇跡でも起こらない限り、ありえない。


 しかしディーノは思い直す事にした。

 少なくとも、無策ではない。

 解決案が、ひとつは出たと。

 考案してくれたノエルには感謝しかない。


 という事で、悩み話が終わり、ディーノはノエルとともに

 彼女の自宅へ戻る。


 道すがらノエルは言う。


「ディーノさん」


「はい」


「ひとつだけ余計なお節介をさせて……愛のない結婚はしちゃダメよ、絶対に」


「はい、肝に銘じます。アドバイスありがとうございます」


 ノエルの家に夫は居なかった。

 一緒に暮らす痕跡も気配さえなかった。


 ノエル自身何も語らない。

 アニエスも同様である。


 何か複雑な事情があるのだろう。


 でも、このような場合、沈黙は金。

 余計な事は聞かない方が良い。

 万が一、ノエルが話して来たら、聞いて気持ちを受け止めてあげれば良い。

 今までの経験から、ディーノが学んだ処世術である。


 そんなこんなで、ノエルの自宅へ帰還すると……

 庭先でケルベロス、オルトロスは並んで身体をよこたえていた。

 狼のような風貌の猛犬2体が睨みをきかせる……番犬には充分過ぎる。


『おう、ディーノ、お帰り』

『お疲れ!』


『少ししたら、修行に行く。ひとりで構わないから、良かったら付き合ってくれ』


『『了解!』』


 という会話を念話で交わしながら、

 ノエルは扉を開けた。

 ディーノはやや後方で控えている。


「ただいまあ!」


「あ~~、ママ! お兄ちゃわん! お帰りぃ!!」


「ママあ! 猫ちゃんといっぱい、いっぱい遊んでたんだよ~!!」


「へぇ、楽しかった?」


「楽し~、可愛い~、アニエスも猫ほし~」


 ご機嫌なアニエスを見て、ノエルも破顔。

 にっこにことなる。

 愛娘の笑顔が母親にとっては一番の活力剤だ。


 となれば、得意満面なのがジャンである。

 先ほどのケルベロス達同様、念話で話しかけて来る。


『どうだ! ディーノ。寝ているだけの犬っコロどもと違い、俺様はこういう地味な仕事もばっちり150%の結果で応えるにゃ』


『おう! お疲れ、良くやった、ジャン』


『えっへん! 女子には温かい笑顔と熱い愛をプレゼント! これが俺様のモットーにゃ!』


「お兄ちゃわ~~ん!!』


 と、ここでアニエスが抱き着いて来た。

 改めて自覚したがディーノは、子供好き。

 可愛いアニエスなら尚更だ。

 ひとりっ子のディーノには、未知である妹体験なのだ。


 甘えるアニエスをしっかり受け止め……

 ディーノは優しく彼女の背をなでていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 そんなこんなで既に時間は午後3時近かったが……

 マチュー村長に告げた通り、ディーノは修行を兼ねて、

 ポミエ村周辺を探索する事にした。


 相談した結果、同行するのはケルベロス、

 追い払ったオークの気配を追跡させる為である。

 

 ちなみにオルトロスとジャンは留守番として、ノエルの家で待機する事となった。


 ディーノが村の正門にて、開門を頼めば……


「何だ、あんた、こんな時間から出るのかよ?」


「すぐ夜になっちゃうぜ」

「丁度、いいや、魔物に喰われちまえ!」


 訝し気な表情で、尋ねて来たのは門番役の逞しい少年ダヴィドである。

 取り巻きらしい少年ふたりを連れていた。

 

 よそ者がいきなり来て、デカいツラしやがって!

 という反感がはっきりと、日焼けした顔に出ていた。


 ディーノが村長に許可を取ったと前置きし、

 外出の趣旨を告げると……


 ダヴィドは舌打ちをしながら、いやいやながらという雰囲気いっぱいで、

 門を開ける。


「おい、あんた! 午後6時までに戻らなかったら、ぜって~門を開けないからなっ」


「締め出してやる!」

「泣いても知らねぇぞ」


「了解」


 つんけんされてもディーノは平気だった。

 ダヴィド達の態度は高慢だが……

 あのステファニーの横暴さ、凶暴さに比べればどうという事はない。


 そのステファニーに指摘された通り、ディーノは以前とは違う。

 何の取り柄もないと、己をひどく卑下していた頃とはまるで違うのだ。


「ふん! こんな青びょうたん、このまま出て行って欲しいぜ!」


「そうだそうだ」

「出てけ出てけ」


「…………」


「けっ! こいつ王都のランカーだか何か知らないが、ひ弱なガキの癖に偉そうにしやがって」


「ぜって~インチキしたんだぜ」

「ギルドマスターに裏金でも掴ませたか?」


「…………」


 ダヴィド達の悪態は止まらない。

 無言で応えていたディーノだったが……

 ここは少し釘を刺しておいた方が良さそうだ。


「おいお前ら、いいかげんにしろよ。口だけは達者だな」


「な、何だと! 口だけだと!」


「ダヴィドの兄貴、こんな奴、やっちゃってください」

「ぶち殺しちゃいましょう!」


「ほう! 腕によほど自信があるようだな」


「おうよ! 王都の青びょうたん! てめえなんか瞬殺だ」


「いいぞ、いいぞ、あ・に・き!」

「やっちまえ兄貴!」


 取り巻き達にあおられ、ダヴィドは拳を突き上げる。

 無言で苦笑するディーノ。


 遂には調子に乗って、ダヴィドが言う。


「おい、青びょうたん、俺と勝負しろ!」


「そうだ! 勝負だ!」

「たたんじまえ!」


 こうなったら、仕方がない。

 相手をしてやるか……

 少しだけ、な。


「分かった、勝負しよう、ダヴィド。まあお前レベルじゃあ、俺には300%勝てないがな」


「さ、300%勝てないだとぉ!」」


「な、な、何言ってるこいつ!」

「ぜ、ぜ、ぜって~ハッタリだよ、ハッタリ!」


 ディーノの挑発とも聞こえる言葉に、ダヴィド達は大きく噛み叫んだ。


 どうやら、ディーノが勝負を受けると思っていなかった……らしい。

 威勢が良いのはどうやら口だけのようだ。

 

「よ、よ~し! ち、畜生! や、やるか、コノヤロ!」


「兄貴の強さを、こいつの身体に教えてやりましょう!」

「そうです! 目にもの見せてやりましょうよ!」


 ディーノから、勝負と言われ、明らかに動揺しているダヴィド。

 

 もしや剣を使って戦うと考えているのか、

 腰から提げた、古びた剣の柄を握りしめている。


 無論、ディーノは剣で戦うつもりはない。

 本気で戦うつもりもない。


「おいおい、何、ビビってる。俺は決闘やケンカをするわけじゃない。お前とは腕相撲で勝負してやる」


 ディーノは付近に置かれていた樽を指さした。

 腕相撲の勝負に使うにはうってつけの樽である。


「え!? う、腕相撲だと!?」


「ああ、腕相撲だ。俺が以前仕えていた貴族家では、ケリをつける為、良くやっていたぞ」


「よ、よ、よしっ! い、いいだろうっ! ……や、やってやろうじゃねぇかぁ!」


「兄貴! 待ってました!」

「こいつが、二度とこの村へ来たくないと思うくらい、徹底的に痛めつけましょう!」


 ダヴィドは……びびりながらも勝負に応じた。

 

 こうして……

 ディーノは修行の前に、軽く『準備運動』をする事となったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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