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第166話「愛の執念? いや愛の怨念!!」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

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 ディーノは、助けたノエルとともに、ポミエ村の村長宅に赴いていた。

 村長はマチューといい、40歳半ば過ぎ、陽気な雰囲気の男性である。


 ディーノがギルドの登録者証を示し名乗ると……

 何度もノエル母子救出の礼を告げた上、ふみ箱から書面らしきものを引っ張り出して来た。

 何故か、うんうんと納得し、笑顔で頷いている。

 そして、ディーノの顔をまじまじと見て言う。


「お~、君が噂のディーノ君なのか!」


「あ、そうよ、私も思い出した!」


 ノエルもポンと手を叩く。

 記憶がよみがえったという面持ちで。


「私もどこかで聞いたことがある名前だと思ったんですよ!」


 何か……話がおかしい。

 不審に思ったディーノは、


「あの、噂のって、村長さん、ノエルさん、その言い方は、もしかして俺の事知ってるんですか?」


「そりゃ、そうさ! 王国から、お達しがあったんだ。先日村民達にも告げてある」

「ええ、そうなの、村長さんから聞いたのよ」


「お達し? 何ですか、それ?」


 ディーノが聞くと、マチューは先ほどふみ箱から取り出した紙を見せた。


「これさ、緊急魔法鳩便で送られて来た」


「緊急魔法鳩便? 何かの手紙ですか?」


 例によって、全く話が見えない。

 ディーノは、マチューの言葉を待った。


「ああ、手紙というか公文書さ」


「公文書?」


「ああ、王都騎士隊一斉発信、各町村の長宛で、ゴブリンやオーク等、人喰いの魔物が活発化しているから、厳重注意の上、治安維持に万全を期すようにっていうお達しさ」


「な、成る程。でもその公文書が何故、俺と関係が?」


「何言ってる。その公文書内に、実例として、ウチの隣村、楓村で発生した魔物襲来事件の経緯が詳しく書いてあった」


「な、成る程、実例ですか……それなら記載されてた内容を、教えて頂けますか?」


「はあ? 教えてくれだと? 君も自分の事なのに察しが悪いね!」


 マチューはまるで、キャルヴィン・ライアン伯爵のような物言いをした。

 ディーノは思わず噛んでしまう。


「自分の事? ど、ど、どういう意味でしょうか?」


「仕方がないなあ、じゃあこれを読んでみなさい」


「ありがとうございます……ええっと」


 ディーノは、渡された書面を読み始めた。

 

 ……これはマチューの言う通り、各町村の長宛に出された公文書らしい。

 確かにカルパンティエ公爵らしき署名がある。


 内容は……

 魔物の発生頻度の急上昇に関して事前の警戒、襲来に対する心構え、実際に発生した場合の対策などが記載されており、実例も示されていた。


 気になる『実例の部分』をディーノは声に出して読み上げて行く。


「領主、管理官、騎士隊の応援が間に合わない場合、充分ではない緊急事態の場合、ひとつの方法として、外部の者、特に身元が確かな冒険者ギルドの冒険者を雇用するのが賢明かもしれない……

 

 今回、楓村においては……ステファニー・オベールという勇敢で美しい貴族令嬢の冒険者と、同じく冒険者で彼女の婚約者、平民ディーノ・ジェラルディが組んで1万頭のゴブリンをあっさり退治した……えええええっ! こ、婚約者ぁ!?」


 またも、してやられた!

 お約束の『フェイクニュース』である。

 勇敢で美しいなどと美辞麗句が躍るところをみれば、

 文面の製作者はステファニー本人に違いない。

 

「おお、しっかり《婚約者》だと金色の太文字で、凄く目立つように書いてあっただろう? それにカルパンティエ公爵様の署名がしてあるから、絶対間違いのない内容さ」


「…………」


「まあ、この書面は配布枚数が多い。だから、サイン共々、直筆ではなく、魔法で印刷処理したのは確実だけどね」


「配布枚数が多いって……これ……どれくらい配られたんですかね?」


「どれくらい? 確か王国内、全ての町村だと聞いたけどな」


「げっ! 全ての町村!?」


 とんでもない話である。

 いかにステファニーが、辺境伯家の後継者として、自分に箔をつけるとはいえ、

 フェイクニュースを王国全土へ流すなど、やり過ぎという感が否めない。


 しかし、そんな常識は一切通用しない。


 自分のモノは当然自分のモノ。

 他人のモノだって、自分のモノ。


 世界は自分を中心に回っている。


 自分に甘く他人には厳しい。

 究極のダブルスタンダード女子。

 それがステファニー・オベール。


 あ~はっはっはっははは~~!


 衝撃を受けたディーノの心の中に、ステファニーの高笑いが響いていた。


 ディーノにはすぐ分かった。

 この発信は、ステファニーの『次なる手』なのだと。

 多分、彼女がカルパンティエ公爵へ提案し、了解を得たのだろう。


 王国首脳のお墨付きの上、王国全土へ……

 ディーノが自分の婚約者だというフェイクニュースを周知する。

 それも己の懐を痛めず公費を使って……既成事実を作ってしまう。

 凄まじい愛の執念、いや怖ろしい愛の怨念である。


「ディーノ君、どうした? 気分でも悪いのか」


「いや……何でもありません、村長さん。少し疲れただけです」


「いやあ、でもディーノ君は人生の成功者だよね! 冒険者として、ランクAの超が付く実力者で、婚約者は美貌の貴族令嬢、王国のお偉方さんにも受けが良さそうじゃないか」


「いやまあ……そんな事はどうでも良くて……」


「は? どうでも良い?」


「いえ、何でもありません……それより村長さんへお願いがあるんですけど……」


「お願い?」


「ええ、俺が撃退したオークどもなんですが、楓村の時のゴブリン同様、この近くに巣があるような気がして」


「巣が!? そ、それは大変だ!」


「村の周囲を探索して、奴らの巣があれば突き止め、殲滅しておきたいのですが」


「うむ! それは願ったり叶ったり。だが……ウチの村ではランクAに相応しい報酬が出せないと思うぞ」


「いえ、報酬は不要で構いません。丁度、修行をしようと思っていたので……その間、村のどこかに泊めて頂けるだけで助かりますから」


「それはダメだ! 英雄みたいな君にタダ働きさせたら、王国から責められかねん。第一、プロが報酬なしで仕事をしてはいかん」


「そうですか」


 と、ここでノエルが「はい!」と手を挙げた。


「報酬と呼べるようなモノではないですけど……命の恩人であるディーノさんには、絶対ウチに泊まって貰います。いつまで居てくださっても結構です! アニエスも喜びますから!」


 ノエルの提案を聞き、マチューもにっこり笑う。


「よっし! ノエル頼むぞ! ディーノ君を精一杯もてなしてくれよ」


「当然です! 下にも置かず、もてなします!!」


「うむ、いいぞいいぞ。ウチの村も楓村同様に、英雄が村民を救い、滞在した村として箔が付く! それと、本当に少なくて申しわけないが、オーク討伐の報酬も私のポケットマネーから、金貨20枚を出そう」


 鼻息荒い村長の意気込み。

 少し引いたディーノは、


「お、おふたりとも俺へのお気遣い、ありがとうございます。つきましては村長さん、ノエルさん、もうひとつ、俺から提案があるのですが」


「ほう、提案って、何だい?」

「何かしら?」


「あの……ノエルさんとアニエスちゃんの命が助かったので、俺、こういう事をしたいのですが」


 ディーノが考えていた事を話すと……

 マチューは「素晴らしい企画だ」とばかりに賛成。

 ノエルも笑顔で了解した。


 こうして……

 ディーノは、戦友達と共に、しばらくポミエ村に滞在する事となったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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