第159話「不器用」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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『ディーノ、丁度良い』
『は? 何が丁度良いのですか、オリエンス様』
『地上への帰還を兼ねて、飛翔魔法の練習をするが良い。人の子の言葉で言えば、急降下訓練だな』
『きゅ、急降下の!? 訓練!』
『うむ、ディーノよ、私の教授した言葉を憶えておるか?』
『は、はい! 憶えていますっ!』
ディーノはオリエンスの教えを反復する。
彼女の言葉が、心にリフレインする。
『お前の周囲を取り巻く魔力の風は、防御壁として敵の物理的な攻撃を大幅に和らげるのは勿論、心身の不調さえも是正する力を持っている』
『我が風の息に……すなわち気流に逆らわず、無駄な力を抜いて身を任せ、水中を自然に泳ぐような気持ちで大空を進んでみろ』
『うむ! 頑張れ! 飛翔魔法の発動の際、言霊はフライト。私の名を心に想い浮かべ、ただシンプルにひと言、そう詠唱すれば良い』
そんなディーノの気持ちを見抜いたかのようにオリエンスは言う。
『ほう! 我が言葉をしっかり心に刻んだようだな……では、下界まで、数千メートル……一気の降下に挑んでみよ』
『えええっ!? すすす、数千メートル一気ぃ!?』
『ふん! これくらいの高さが何だ? もしや臆したか?』
『す、少し……だけ』
『大丈夫だ! ノープロブレム。お前がまとう私の風だけではなく、お前が着けている指輪の力も防御力に加味される。もしも着地に失敗し、地面に激突しても死ぬ事はないだろう』
『うわ! し、死ぬ事はないって……』
『言葉通りだ。万が一死んだら、骨くらいは拾ってやる! ほら、我が風の使徒よ、時間が無い! さっさと行けぃ!』
『りょ、りょ、了解です!』
と、ここでヴィヴィのフォローが入る。
『ディーノ! ジャストモーメント! どんな魔法でも基本は呼吸法よ』
『そ、そうでしたよね! 深呼吸します』
ディーノは正式に魔法を学んではいない。
父のクラン『ステイゴールド』に所属していた魔法使いに、
少しだけ手解きして貰い、低レベルの生活魔法を何とか習得したのみである。
しかしそんなディーノでも、さすがに全ての魔法の基礎は呼吸法だと認識していた。
呼吸法は、術者の体内魔力を高め、精神の集中と均衡を培うのに最適な訓練方法なのだ。
『す~は~、す~は~』
呼吸を整えながら、ディーノは眼下を眺めた。
大陸の広大な地が広がっている。
発動済みだから言霊は不要。
しかし!
気合を入れなおし、飛翔魔法を使う為、言霊を詠唱しようとディーノは決めた。
『飛翔!』
びゅわわわわわわ~~っ!
詠唱と同時に!
極限まで、引き絞られ放たれた矢のように、
凄まじい速度で、ディーノは地上へ降下して行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
予感がする。
もうすぐディーノが帰って来る。
無事で帰って来る。
予感は……確信へと変わって行く……
『む? 何だ?』
『おいおい兄貴! ……聞こえねぇか?』
上空を見たケルベロスとオルトロスの魔獣兄弟が首を傾げ……
『にゃう! 間違いない! 天空で音がしてるにゃっ!』
と、ジャンが叫んだその時!
ひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~っっっ!!!
風を凄まじく切り裂きながら、何かが飛んで来る。
何と!
人間のようだ
3人には、何かが『誰』なのかは、すぐに分かった。
片や、遥かに高い天空から降下したディーノは真っ逆さまに降下!
そして……ひらりと着地!
するはずが、ぶっぶっぶー!!
見事に失敗!!!!!
結局、ディーノはキャンプ地のど真ん中に、無様な格好で……落ちた。
どっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお~~~んんんんん!!!
ディーノが地面に叩きつけられた瞬間!
凄まじい音がして刈り取った草地には直径10mほどの大穴が開いてしまった。
木につながれていたレンタル馬は哀れ、再び失神した……
『ああ! ディーノ!!』
『おおおっ! ディーノ!!』
『ぎにゃうっ! ディーノ!!』
慌てた戦友3人は、開いた大穴を覗き込む。
結構奥深い穴でもあった。
深さも、直径と同じく10mは楽にある。
しかし3人が目をこらして一番底を見ても、ディーノの姿は見当たらない。
気配だけは感じるのだが……
『おいおい、ディーノ、どこ行った?』
『消えちまったぞ!』
『隠れてないで、出て来~いにゃ!』
し~~~~~~~~んんんん……………
不気味な静寂が辺りを支配する。
『ディーノ! 返事をしろぉ!』
『大丈夫かよ! ディーノぉ!』
『ディーノぉ、生きてるかにゃ~!』
改めて3人が穴の底へ呼びかけたが……
ディーノからの返事はない。
と、そこへいきなり!
戦友達にも聞き慣れた女子達の声が響いた。
『もう! ダサダサっ! あいつ、ホント不器用ですね、オリエンス様』
『全くだな、ヴィヴィ……単なる降下訓練でさえこの始末……これで地と風の使徒を名乗るとは、先行き大いに不安だ』
いつの間にか……
ヴィヴィとオリエンスが穴の傍で、空中に浮いていた……
ふたりとも呆れた!
という表情をしている。
当然、ディーノに対してのものだろう。
しかし……生まれて初めて飛行したディーノが、
いきなり数千mの降下訓練がクリア出来ないのも無理はない。
ディーノはけして天才ではない。
というか、この結果は当たり前といえば当たり前。
ふたりの精霊の合格ラインが厳し過ぎるといえよう。
否、ディーノには更なる高レベルに上がって欲しいという叱咤激励、
もしくは期待か願望なのかも……しれない。
『あ! ヴィヴィ様!』
『オリエンス様も!』
『おい! おふたりさんっ! ディーノは! ディーノはどこにゃ!?』
渋面のヴィヴィとオリエンスの精霊ふたりへ、
心配度200%の戦友3人が「ずいっ」と迫った
『あいつは大丈夫、絶対生きてるわ。ノープロブレム!』
『うむ、ヴィヴィの言う通り、ディーノなら頑丈だから、無傷でピンピンしておるわい』
『え? 絶対生きてるとは?』
『頑丈だから、無傷で……ピンピンですか?』
ケルベロスとオルトロスが、女子ふたりの言葉を復唱。
一方……
穴の底から、『マ〇ハンド』のような泥だらけの手が、
「ぬぼっ」と伸びるのを、ジャンは目撃する。
『あ、あ~っ!! あの手はディーノだあ!!!』
『ええっ!』
『ど、どこだ! ジャン!』
『お、おい! あそこ! あそこだよっ!! 犬兄弟!!』
『おお! 居たぞ! 無事かあ!!』
『ディーノ! 良かったあ!!』
相変わらず苦笑するヴィヴィとオリエンスの傍らで……
覗き込み、歓声をあげる戦友達の目には……
これまた泥だらけのディーノの笑顔が、はっきりと捉えられていたのである。
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