第116話「導く声」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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ぎゃっぴいいいっ!!!
ぎえあああああっ!!!
ぎゃううううんん!!!
断末魔の悲鳴が轟き、おびただしく地に満ちるゴブリンどもの中に、
ぽっかりと空間が生まれた。
その空間から大きな声が響き渡る。
「ステファニー様あ! 助けに来ましたよお!!!」
その『声』は村内へ入って来たゴブリンを、しゃにむに斬り倒していた、
ステファニー達へも伝わった。
「えええっ!? あ、あああっ! ディ、ディーノぉぉぉ!!!」
聞き慣れた、そして聞けば心が落ち着く、大好きなあいつの声……
『声』を聞きつけたステファニーは驚愕且つ絶叫し、急ぎ物見やぐらへ登った。
そして彼女が目にしたのは……
待ちわびた『あいつ』の姿だった。
ぽっかり空いた空間、ゴブリンどもの死体の中に立っていたのは、
剣を大きく打ち振る、ディーノ・ジェラルディであった。
どうして!?
ディーノが敵の囲みを破れたのかという疑問はある。
何故!?
敵のど真ん中に現れたのかという疑問もある。
しかし『絶体絶命』の今、ステファニーはそんな事を考えてはいられない。
「ディーノおおおおおっ! ここよおっ!」
ステファニーは呼びかけに応えるよう、
物見やぐらから、大きく手を打ち振った。
その姿を見たディーノは安堵した。
伝わって来る波動で分かる。
仲間は何とか『無事』だと!
だが、その時!
きゃああああああっ!
北門付近を、アンセルム達と共に守っていたエミリーが、
大きな悲鳴をあげたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
エミリーの悲鳴は、物見やぐらに居たステファニーの耳にも入った。
状況を知る為、ステファニーは眼下のカルメンへ叫ぶ。
「カルメ~ン!! どうしたのおおっ!!!」
「大変です!! 北門が破られましたあっ!」
「な、なに~っ!」
ステファニーが安堵したのも、束の間。
ゴブリンの攻勢は衰えていなかった。
北門は村民だけで守っている。
個々の守備力では劣るが、南門を守る少数のステファニー達より、
遥かに数が多い。
だからステファニーは何とか守り切れると判断し、戦力を配分したのだ。
しかしステファニーは計算違いをしていた。
戦闘の不慣れさはともかく、敵の大群を見た村民の戦意喪失を軽視していたのだ。
そしてステファニーには与り知らぬ事であったが……
北門が破られたのは、南門よりも組し易しと見て、北門攻撃に重きを置いた、
敵軍のリーダー、ゴブリンシャーマンの優れた判断力が起因していた。
「しまった!」
自分の判断ミスを一瞬にして悟り、
一気に物見やぐらを飛び降りたステファニー。
「ステファニー様!」
駆け寄ったカルメンへ、ステファニーは厳しい表情で言い放つ。
「カルメン、南門は任せた! 私は北門へ行き、侵入した敵を掃討する」
「は、はい!」
主の身が心配ではあったが……
有無を言わさぬステファニーに、カルメンは了解するしかない。
ステファニーは、なおも叫んだ、
「ディーノが戻った! あいつが来れば必ず形勢は逆転する! それまで何とか守り切るのよっ!」
言い切れる根拠は全くない。
だが、勝利への確信は間違いなくあった。
ステファニーは言い捨てると、脱兎の如く駆けだしていた。
一方、こちらは北門のエミリーである。
カルメンが言った通り、ゴブリンどもは持っていた得物で北門へダメージを与え続け、遂に破壊に至ったのだ。
破られた北門からは「どっと」という言葉がぴったりするくらい数多のゴブリンどもがなだれ込んで来た。
奴らに呑み込まれたら……
人間も家畜も、生きとし生ける者は、
骨まで喰らいつくされる。
「こ、これまでかっ!」
悔しそうに村長のアンセルムが叫んだ瞬間。
歯がみするエミリーの心に、聞き慣れた声が響いた。
『エミリー!』
声はゴブリンの巣穴へダメージを加える為、出撃したはずのディーノであった。
何故!?
不思議!!
村内に居るはずのない彼の声が、それも自分の心に聞こえるのか、
エミリーには分からない!
「え? ディーノ!? ど、どこっ!? どこに居るの~っ!!!」
『話している暇はない! 俺を信じて、皆と一緒にブレーズ様の石像まで走ってくれ!』
「な!?」
『早くっ!!!』
物言わぬ、動かぬブレーズ様の石像へ行ってどうなるのだろう?
状況が変わるとは思えない。
エミリーは迷った。
しかし!
もうディーノを信じるしかない!
「みんな~っ! 撤退よ~っ!! ブレーズ様の像まで走って~っ」
エミリーは必死に防戦する村民達へ向かって、
あらん限りの声で叫んだ。
そして、ディーノの言葉に従い、思い切り駆け出していた。
……楓村は狭い村だ。
同じ方向に、全速力で走った女子ふたりは……
すぐに遭遇した。
丁度、ブレーズの石像の前である。
「ああっ!? エ、エミリーっ!!!」
「うわっ!? ス、ステファニー様っ!!!」
お互いの名を呼び合った後、
更に同じ言葉が重なった。
「「どうしてっ!」」
ディーノを信じる!
信じてここまで撤退して来た!
その強き思いから、エミリーは相手より先んじて大声で叫ぶ。
「ディーノにっ!!! 導かれましたっ!!!」
気合のこもった、エミリーの揺るがぬ声を、
ステファニーは真っ向から浴びた。
「ええっ!? み、導かれたっ!?」
意味が分からない!
わけも分からない!
先ほど、ディーノからの声を心で聞き、
戸惑ったエミリーと同じ思いをステファニーは覚えていた。
だがステファニーは異常に勘が鋭い。
先ほどディーノがいきなり現れ、謎めいた風の力で、
数多のゴブリンを殲滅したのを目にしていた。
改めて見やれば、100メートル先に数百のゴブリンどもが迫っていた。
もう逃げ場はない!
ディーノを信じ、エミリーと村民達を守りながら戦うしかないのだ。
「「ディーノおおおおおっ!!!」」
ふたりの女子はあらん限りの声で、同じ『想い人』の名を絶叫した。
その瞬間!
またも奇跡が起こった!
苔むし、古びたブレーズの石像が再び、眩く眩く発光したのである。
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