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第108話「ステファニーの本音①」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

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 エミリーと仲睦なかむつまじく手をつなぎ、戻って来たディーノを見て、

 ステファニーは嫉妬から不機嫌な感情を露わにし、

 眉間に「ぎゅっ」としわを寄せた。


 思わず「かっ」としたステファニーではあったが、

 軽く息を吐いて、クールダウン。

 努めて冷静に告げる。

 但し、こめかみに血管が浮いてはいるが……


「ディーノ、我がクラン鋼鉄の処女団(アイアンメイデン)は、明日に備え、交代で睡眠をとるわ」


「ええ、今のうちに休養を取るのは良い考えだと思います」


「ふん! その代わり、翌朝4時には起床、全員集合して、対ゴブリンの作戦をじっくり練る。それで良い?」


「構いません、OKです」


 と、答えたディーノに続きカルメンも賛成する。


「ステファニー様、私も賛成です」


「よっし!」


 同意してくれたカルメンへ頷いたステファニーは、

 次にアンセルムへと向き直る。


「爺さん! 村民へ今一度、気合を入れ直しなさい! ゴブリンは基本的に夜行性、陽が沈んでこれから行動が活発になる。絶対に警戒を怠らないで!」


「分かった!」


「良い? 北門エリアはあんた達、村民全員へ任せたからね。私達助っ人は南門エリアを交代で見張る」


「うむ!」


「警戒するのは門の破壊だけじゃない! 奴らが猿みたいに防護柵をよじ登って村内へ侵入しないよう充分注意して!」


「おお、了解した。交代で村中を巡回もしよう」


「OK! と、いうわけで最初は私とディーノが南門物見やぐらで見張る。2時間ごとに交代。カルメン達は先に寝てて良いわ。私とディーノ以外、誰と誰が組むかとか順番は、任せるから」


 リーダーシップを発揮し「ガンガン仕切る」ステファニー。


 その上、休息も取らず、いきなり見張り役をやると、宣言した……

 驚いたのはカルメンである。


「ス、ステファニー様!」


「何?」


「先ほどの戦いで、相当お疲れではありませんか? 私が見張りをやります。先にお休みになってください」


「はあ? 全然疲れてないわ。すっごく元気」


「で、でも……」


「カルメン、ランカーのあんたには分かるでしょ?」


「は、はい」


「あれくらいのバトルは、この私には単なる準備運動。それに、こいつとふたりで話したい事もあるのよ」


 ディーノを指さし言い放ったステファニーへ、今度はエミリーが迫る。

 負けられないという表情で。


「わ、私も! ディーノと一緒に南門を見張ります!」


 しかしエミリーの申し入れはあっさりと却下される。

 当然ステファニーによって。


「ダメよ、エミリー! あんたも爺さんから、指示を受けて、他の村民と一緒に、北門周辺を見張りなさい」


「きっぱり」とはねつけたステファニーへ、エミリーは諦めず食い下がる。


「で、でも……」


「大丈夫、約束は守るから」


「え? 約束?」


 ステファニーの言葉を受け切れず、エミリーは不可解だと首を傾げた。

 そんなエミリーを見て、ステファニーはれて鼻を鳴らす。


「はあ? 忘れたの? エミリー、あんたを第二夫人にするって事」


「あ! だ、第二夫人……そ、そうでしたね」


 約束を交わした記憶がよみがえり、

 「ようやく」という感じで納得したエミリーへ、

 

 だが、ステファニーの話は更に続く。

 何とか機嫌が直ったのか、シニカルな笑みを浮かべている。


「ふん、少しだけ訂正しておくわ。第二夫人確定とはいえないけど、こいつの妻、その他大勢のひとりには必ずしてあげるから」


 ヴァレンタイン王国は一夫多妻制を許容している。

 ステファニーはそれを踏まえ、エミリーへもの申したのだ。


「そ、その他大勢のひとり? 必ず? わ、分かりました……あ、ありがとうございます」


 貴族特有の高圧的な物言いに、臆しながら、何とかエミリーは礼を言った。


 ひと通り、ふたりの会話が終わるのを待って、

 ディーノが「待った」とブレーキをかけようとする。


「ちょっと、ジャストモーメント! ステファニー様。俺を完全無視して、勝手に話を進めないでください」


 しかし……


「シャラップ! 黙って! 私が世界の中心、すなわちルールだから良いのよ」


 先ほどのエミリーに対して同様「きっぱり」とはねつけたステファニー。

 凄まじい物言いに、ディーノはもう苦笑するしかない。


「世界の中心、ルールって……あのね」


「ディーノ、ぐちゃぐちゃ言わない! ほら、話があるから、さっさと物見やぐらへ登りなさい!」


「りょ、了解」


 結局……

 ディーノは追い立てられるように、南門の物見やぐらへ、登ったのである。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


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