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第106話「魔法剣士ブレーズ・シャリエ②」

⛤『魔法女子学園の助っ人教師』

◎コミカライズ版コミックス

(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)

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何卒宜しくお願い致します。

 ブレーズは、感極まったらしく……

 暫くの間、言葉を発さなかった。


『…………』


『ええっと、ブレーズ様?』


『ああ、すまん……私にとってエマとの出会いは生涯忘れられぬ運命の出会いなのだよ』


『エマさん? ……ですか?』


『ああ、エマだ』


 ブレーズが出会ったエマというのは……

 エミリーが言っていた楓村出身である少女の名であろう。


『楓村を襲った魔物どもを何とか退けた私はエマと恋に落ち、この村に永住した。結局、世界の人々を救うという夢は完全には果たせなかった』


『良かったというか、残念というか、幸せは手に入りましたが、夢が叶わず微妙ですね』


『ああ、幸せは得たが、夢は叶わなかった。魔物へも復讐は出来なかった。襲われ死んだ家族の事を思えばとても悔やまれるが……全力を尽くした結果だ、後悔はしていない』


『…………』


『私は楓村を救い、エマと幸せに暮らす事が出来た。それで満足だ』


『成る程……』


『ちっぽけな人間の力では大いなる運命にあらがう事は難しいかもしれん』


『…………』


『だから、その場その場で、出しうる全力を尽くせればそれで良い』


 数奇な運命に翻弄されたブレーズは、達観したように言い切った。

 やれる事をやり、持てる人生を完全燃焼した。

 そう言いたいに違いない。


 ディーノも、余計な事を言うつもりはない。


『そうかもしれません』


『というわけで、ディーノ。私の魔法剣士としての能力ちからと共に、果たせなかった夢も継いで欲しい』


 ブレーズから告げられた夢……

 世界を救う。

 大きすぎる夢であり、ディーノ自身荷が重過ぎると感じる。


『いえ、ちょっと待ってください。ブレーズ様のお考えは素晴らしいし、お持ちである魔法剣士の能力はとても魅力的でしょう。でも俺如きが世界を救うなんて、到底無理ですよ』


『はははは。大丈夫、夢を完全には果たせなかった、私はそう言っただろう?』


『…………』


『ディーノよ、己が実行出来なかった事を何故君へ強いる事が出来ようか』


『…………』


『もしも完遂出来なくとも前向きな志を持ってくれれば良い。無理をして世界全てを救う事はない』


『…………』


『この楓村だって世界だ。本当に小さな村だけど確実に世界の一部なんだからね』


『…………』


『楓村を救った私自身、そう思ってる。この村を救った事を誇りにしている。そして残りの人生を使い、エマを幸せにし、第二の故郷を守り抜いた』


『…………』


『それだけで、私はこの世に生まれた価値があると思っている』


『…………』


『ディーノ』


『はい! 何でしょう?』


『否定されてしまったが……君はやはり勇者なのだ』


『…………』


『君は……底知れぬ素質を秘めている。私には分かる』


『…………』


『秘めた素質は著しく開花しつつある。自信を持ち、私の力も堂々と継いでくれ』


『…………』


『論より証拠さ。既に君は立派に身体を張って、外敵を圧倒し、私とエマの楓村を救ってくれた。私は全てを託し、天へ……エマの下へ還るのが嬉しい』


 ブレーズは礼を言ったが、ディーノは首を横に振った。


『まだです! まだ危険は……楓村の危機は去っていません。だから俺は最後まで全力を尽くします!』


『ありがとう、ディーノ! そう言って貰えると心強い。……だが死ぬなよ』


『はい!』


『そろそろ時間だ。……では君に私の力を渡し、天へ還る前にふたつ、遺言を伝えよう。心して聞いて欲しい』


『遺言をふたつ?』


『うむ! ひとつめは私の子孫を……エミリーを宜しく頼む。結婚するのか、恋仲になるのか、任せるが……どうか、優しくし、慈しんでやって欲しい』


『分かりました』


『もうひとつは私をかたどったこの石像だ。私が天へ還った後、君が行使する地の究極魔法で有効に使ってくれ』


『え?』


『私とエマの子供達……エミリー達の目の前で……この石像が見事に外敵を排除すれば、君と共に彼等彼女達へ大きな勇気を与え、これからの人生に対し、前向きになれるだろう』


 何と!

 ディーノがアルドワンから受け継いだ地の魔法を、ブレーズは知っていた。

 驚くディーノを尻目に、ブレーズは話を続ける。

 本当に時間がないようだ。


 と、その時。

 ディーノの心を、全身を、何者かが通り過ぎたような感触を味わった。


『今、私の力を渡した』


『え?』


『ディーノ、君の心と身体へ剣技と体術、そして魔法の極意を刻んだ』


『…………』


『最高の極意を得るために、更なる修練は必要だが、君は既に火と風の力を使いこなす魔法剣士となっている』


『…………』


『私が極めた至高の魔法剣だ。心にイメージするだけ、無詠唱で使えるぞ。世の為に役立ててくれ……では、さらばだっ!』


 ブレーズから最後の……別れの言葉が響いた瞬間。

 閉じられていたディーノの双眼が、ゆっくりと開かれたのであった。

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

宜しければ、下方にあるブックマーク及び、

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