第105話「魔法剣士ブレーズ・シャリエ①」
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
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『先に邂逅したふたりと同じく! 私もお前に託そう……我が志と力を、そして叶わなかった夢も……』
今の言葉で『全て』が分かった。
伝説の流浪の騎士ブレーズ・シャリエが、ディーノへ渡したいモノとは……
ロラン、アルドワンと同じく、己の志と能力……
そして見果てぬ夢である。
『ディーノよ、時間があまりないようだ。手短かに伝えよう。私の石像に手を触れるが良い』
目を閉じ、跪いていたディーノは、目をカッと見開き、ゆっくりと立ち上がる。
ディーノが立ち上がる気配に気付いたエミリーが、
「あれ、ディーノ、どうしたの?」
と尋ねるが、
「…………」
何故か視線を向けず、返事もせず、ディーノは無言である。
「ディーノ……」
反応の無いディーノを見て、エミリーは不安そうである。
しかし無言のまま、ディーノは石像に近付くと、おもむろに軽く手を触れた。
その瞬間!
「きゃああああっ!!! デ、ディーノぉっ!!!」
エミリーが叫んだのも無理はなかった。
触れた石像とともに、ディーノの身体全体が発光し、眩く輝いた。
古びたブレーズの石像に触れた瞬間!
ディーノの全身が熱くなり、発光したが……
心だけは遥か彼方へ飛ばされていた。
一瞬、周囲は真っ暗となり、気が遠くなったが……
気が付けば、遠き次元と長き時間を超越した場所に、
ディーノはひとり、立ち尽くしていたのである。
ヴァレンタイン王国、王都郊外のひなびた楓村に居た筈なのに……
見覚えのない異国の、それもとんでもなく大きな旧い街に立っていたのだ。
ぎっしりと建ち並ぶ白壁の家の様式はヴァレンタイン王国と全く違っている。
改めて周囲を見やれば……
ディーノの周囲を多くの人々が歩いていた。
着ている服もディーノとはまるで違う、
遥か古代のクラシックな雰囲気を醸かもし出している。
しかし、道行く人はディーノを気に留めようとしない。
どうやら……周囲の光景はブレーズの記憶から生み出された幻らしい。
呆然とするディーノの心にブレーズの声が響いて来る。
『ディーノ、お前が立つこの街は我が故郷ガルドルド帝国の帝都……』
『ガ、ガルドルド……帝国?』
驚くディーノに対し、ブレーズは誇らしげに言い放つ。
愛と誇りを込めて。
『そうだ! ガルドルドは古の魔法帝国と呼ばれた強き国だった』
『…………』
ブレーズの最後の物言いは『過去形』である。
気になったが、ディーノは何も言わず、ブレーズの言葉を待った。
『長き歴史を持ち繁栄したガルドルドであったが、ある日、突如終焉を迎えた』
『え? 終焉!?』
『ああ……我が故郷は、魔物どもの急襲によりあっという間に滅んだのだ』
ブレーズのナレーションが終わった瞬間、明るい街中のシーンが変わった。
周囲は真っ暗な闇と化したのである。
故国が滅んだ際、絶望した彼の心のように……
対して、ディーノは慌てず動じず、無言で話を聞いている。
『…………』
『空には竜の大群が舞い、地の底からは悪魔を始めとした夥しい数の魔族が這い出て来た……』
『…………』
『思い出すだけでも怖ろしい……地獄とはあのような場所なのかと思う』
『…………』
『私は、魔物の攻撃により……両親と妹を亡くした』
『…………』
『あまりにも敵は強大で多かった。我が帝国軍は、武力も魔法も全く歯が立たなかった』
『…………』
『多くの仲間が死んだ。生きたまま喰われた者も数多居た……後に聞けば、大破壊という名の大禍らしい……』
『…………』
『衆寡敵せず……幸いにも命を拾った騎士の私は敗残兵となり、やむを得ず帝都を脱出した。いつか奴らに復讐する日が来る事を信じて……』
ブレーズの放つ波動が悲しみの色に染まって行く……
『私は身分を隠し、この大陸全土を流浪者となりさまよった……そして知った。我が国だけではなかったのだ。数多の国が大破壊の害を受けていた。帝国と同じく壊滅した国がいくつもあった』
『…………』
『私は自分が生き残った償いに……難儀する人々の為に、日々戦い続けた。そして長き旅の末、この村にたどり着いた』
『そういう事……だったんですね』
『うむ! 私は騎士であり、且つ魔法剣士でもあった』
『え? 騎士で魔法剣士……ですか?』
『そうさ! あらゆる武技、体術を極め、ふたつの属性を使いこなす魔法使い、複数属性使用者でもあったのだ。だから私は大破壊の中、生き残る事が出来た』
『…………』
『その力で私は少しでも多くの人々を……世界を救おうと決心した』
『成る程……その志は素晴らしいと思います』
『しかし!』
『しかし?』
『この楓村で私は出会ってしまった。エマと運命の、否! 宿命の出会いをしたんだ』
ブレーズはそう言うと、感極まったらしく……
暫くの間、言葉を発さなかったのである。
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