第1話「ディーノとステファニー」
新連載です。
幼馴染モノです。
何卒宜しくお願い致します。
クレメンテ・ジェラルディはヴァレンタイン王国冒険者ギルド所属の中堅クラス冒険者であった。
気心の知れた仲間とクラン『スティゴールド』を組み、リーダーとしていくつもの任務を受け、成功させて来た。
しかし、残念ながらクレメンテはクラン名のように「輝き続ける」事は出来なかった。
とある依頼を遂行中に魔物との戦いで大きな怪我をし、引退を余儀なくされ、クランも解散したからだ。
依頼者のオベール騎士爵はこれまでに何度も、
クレメンテ率いるクラン『スティゴールド』に依頼をし、自らの出世につなげて来た。
オベールは冷酷な王都貴族には珍しく、人間として非常に義理堅い男であった。
冒険者として立ち行かなくなり、生活の手立てを失ったクレメンテを引き取ったのだ。
そして自分の屋敷における雑用担当の召使いとして雇ったのである。
冒険者を引退したクレメンテには亡き妻との間に息子がひとり居た。
息子の名はディーノといい、当時11歳の少年である。
ディーノは元冒険者の父に似ず、幼い頃から大人しく、あまり目立たない子供であった。
また魔法もあまり使えず、武道も苦手であったので、父のように冒険者になろうとは思わなかった。
穏やかな性格のせいなのか、子供ながらに……
地味に目立たず安全に生きて行こうと考えていたのである
クレメンテとふたり王都で暮らしていたディーノは、
父に従い、オベール家の屋敷へ共に入った。
一方オベールにも美しく気が強い……
否、気が強すぎる荒馬のようなひとり娘が居た。
娘の名はステファニー。
ディーノよりひとつだけ年上で、当時12歳になっていた。
愛娘ステファニーの召使い兼遊び相手には丁度良いと、
オベールはクレメンテへ申し入れをし……
ディーノをステファニーの『従者』としたのである。
この平凡な少年ディーノが後に『英雄』と呼ばれるほどの強さを身につけ、堂々たる冒険者になるとは、当時は誰もが想像だにしなかった。
そして時が流れた。
負傷したクレメンテがオベール家へ仕えるようになってから約4年が経った……
幼かった少年ディーノも15歳となっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……ここはヴァレンタイン王国遥か南方、僻地と呼ばれる田舎町エモシオン。
町の最奥、高台にあるオベール辺境伯家の城館である。
2年前オベール騎士爵はこれまでの多大な貢献を認められ、
異例の大抜擢を受けた。
何と!
3段跳びで辺境伯に任ぜられたのだ。
そもそもヴァレンタイン王国における『辺境伯』とは、
伯爵よりやや格下といえる地方長官の役職名である。
オベールが辺境伯になれたのには裏事情があった。
少し前にエモシオンを治めていた前任者が王家に対する謀反を企てた事が発覚、処刑されたのだ。
王家は辺鄙な管理地へ行く後任の人選をしたのであるが……
なかなか良き適任者が見たらなかった。
そこで王家は、信頼厚き忠臣オベール騎士爵へ、
前例がない特別な抜擢人事を行う事に決めたのだ。
という経緯で、オベールは南方の街エモシオン、及びその周辺の広大な地の領主を命じられ、去年王都セントヘレナからこちらへ移って来ている。
そして今や日常茶飯事となった出来事が……
そう、今日も城館内に起きていた。
16歳となったステファニーの雷のような怒声が飛んでいたのである。
このエモシオンへ移ってから、ステファニーは大いに不満であった。
確かに父は上級貴族の端くれとなった。
しかし折角お洒落な王都で暮らしていたのに、
今や超が付く田舎暮らしとなってしまった。
日々変化に富んだ王都での日々。
対して、時の流れが止まってしまったようなエモシオンの平々凡々な日常。
退屈と暇を持て余したステファニーは、気晴らしに何か習い事をしようと思ったが……
彼女が望む王都で流行るような モノは何もなかったし、教えてくれる者も皆無だった。
考え抜いた末に……
選択肢の無かったステファニーは剣を習おうと決意した。
何せ彼女が住むのは辺境の地。
周囲には怖ろしい魔物が跋扈していたから、
護身術くらいには役立つと考えたようだ。
お嬢様のステファニーは、乗馬は中々の腕前であったが、
今迄剣を握った事はなかった……
だが元々、相当な素質があったらしい。
仲の良い副従士長カルメン・コンタドールに手解きを受け、
師匠が同性の気安さもあって素晴らしい腕前に上達して行った。
しかし……
結局、ステファニーの欲求不満は完全に解消されず、
はけ口は、ほぼ従者ディーノへ向けられていた。
「こらぁ! ディーノぉ! トレーニングは終わったぁ? あら、まだ途中だったのぉ! エモシオンの町へお使いに行って来てよぉ!!」
「は、は、はい! お嬢様 や、やっとダッシュ100本とお庭のランニング30周、腕立て、腹筋が各300回、木刀の素振り1,000回と乗馬訓練1時間が終わったところです。でもまだ掃除、洗濯、料理の修業、王都のお友達へのお手紙の代筆が終わってませんが……あ、肩もみとお部屋のお片付けもま、まだなんですが……」
「ホントに愚図でのろまね! 買い物を先にして! 超早くね! 15分以内に必ず戻って来て! もし1秒でも遅れたらきっついお仕置きしてあげるわよ!!」
「わ、分かりました」
「駄目ぇ! 口の利き方が全然なってないわっ。言い直して! かしこまりましたでしょ?」
「か、かしこまりました」
「もう! ディーノは私の忠実なる下僕なんだからっ!! 命令には100%絶対服従、加えて言葉遣いも品よく丁寧にっ! 以後気をつけて!! 分かった?」
「……あの俺、忠実なる下僕じゃなく、単なる従者なんですが」
「は? 俺?」
「い、いえ……私……です」
ディーノの大人しい物言いを聞くと、何故かステファニーは火が点いたように、著しく早口となる。
「宜しい! 何か文句ある? それに良いじゃん、下僕って呼んだって。従者と同じようなもんでしょ? 今度反抗したら罰として私の靴を舐めて掃除して貰うわよっ!!」
「分かり……いや、かしこまりました」
「うふふ、その代わり5分以上早く10分以内に戻って来たら、素敵なご褒美をあげる。私のおやつのケーキを半分あげるからっ♡ 頑張って一緒に食べようねっ! その後は一緒に剣の稽古よ! びしびし鍛えてあげるよっ」
ご褒美にケーキ?
食べられるわけがない。
指示された店は片道徒歩10分近くかかる。
全速で走らなければ絶対に間に合わない。
それに、剣の稽古?
稽古と名の付く一方的なイジメじゃないか!
そんなディーノの無言の抗議など完全スルー。
ステファニーは冷たい微笑を浮かべていた。
ディーノは思う。
ステファニーは表と裏があり過ぎると。
ごくごくたまに優しい言葉をかけられる。
お礼を言うと、「ふん!」と鼻で笑われた。
4年間で数回「好き♡」と言われた事がある。
その度に「お嬢さま、お戯れを」と返したら激怒された。
何故怒ったのか分からなかった。
正直、ステファニーは『不思議ちゃん』と、
使用人の間では噂されている。
ディーノも正直ステファニーが何を考えているのか分からない。
こんな会話と生活が毎日毎日続いている。
元々ディーノはおとなしい性格だったが……
いいかげんストレスが頂点に達しようとしていたのだ。
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