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1章 幕間 アノンの報告

幕間の二つ目です。

次話から新章予定です。

 男性と女性の二人組がコミュニティから外に出て、東に向かう。二人は赤を基調とした外套を身に纏っていた。


「さっきの話は本当なのかな。アノンっち」

 レオが隣を走るアノンに問いかける。


「マスターのお言葉ですよ。間違いがあるはずないでしょう」

 アノンがきっぱりと答える。


「そうだけど......。自力でこのコミュニティにたどり着こうとする人々がいるなんて信じられない。......ニャ」

 レオがとってつけたような語尾を付ける。


「人間にも優秀な方がいるのでしょう。ところで、レオ」


 少しアノンの声色が低くなる。


「その語尾、続けるのですか?あなたは獅子、ライオンですよ。我らの創造主はあなたを獅子座をモチーフにお創りになられた。あなたも誇りに思っていたはず。それなのになぜ猫のような安直な語尾を?」

 アノンは丁寧な口調で疑問に見せかけた非難を浴びせる。


「うーん。そうだなぁ。アノンっち、レオ達は人々から見れば異能が使える怪物に見えるかもしれない、ニャ」

 言葉を選んでレオが答える。


「だからこそ、この外套でしょう。これで、我々は人間から見つかりにくくなる。必要以上に人間に関わることはないと思いますが?」

 レオが何を言っているのかアノンにはわからない。


「......マスターが言った言葉を覚えてるか、ニャ?」

「ええ、もちろんですとも。創造主のお言葉を忘れるわけあるはずないでしょう」


「アノンっちが“人々と必要以上に関わらない”と解釈したようにレオはマスターの言葉を“人々と仲良くすること”と解釈しただけ、ニャ。」

 レオが覚悟を持って答える。


「そのためならば誇りを捨てると」

 急に足を止めて、レオの目を見る。


「いや、レオは“考えて”結論を出した。まずは形から。猫として人々と仲良くする。これは誇るべきことだ、ニャ」

 アノンの目を見てはっきり答える。


「そうですか......。あなたが深く考えてのことであるならば何も言いませんよ」

「ありがと、アノンっち」

 レオがフードを被っていてもわかる程の屈託のない笑顔を浮かべる。


「ふむ、いえ、やっぱりやめました」

「えっ、アノンっち」

 アノンの180度逆の言葉にレオが驚き、焦る。


「あなたが獅子の誇りを忘れないように私が隣にいる時は「獅子でしょう」と言うようにします」

 優しい笑顔を浮かべてアノンが宣言する。


「アノンっち。......そういう所レオは好きだ、ニャ」

「そうですか......。もうそろそろ、マスターの言っていた橋に着きますよ。戦闘準備!」


 冷たくあしらい急にアノンが走り出す。


 アノンは生まれて初めてのよくわからない感情に蓋をした。今は大切な任務であると自分に言い聞かせて。


「アノンっち。あれ......」

 レオ達が骸骨であふれかえった橋を目撃する。


「そうですね......骸骨がまだいるということは人間達は無事である可能性が高い。建物の屋上に登り、少し様子を見ましょう。いざとなれば、我々なら3秒で全滅できますから」


「了解、だニャ」

 ビシッとレオが敬礼する。


「ふざけてないで行きますよ」

「あっ、待って、ニャ」


 レオ達が能力を使って屋上に登り、橋の様子をうかがう。


 女性が男性に剣を突き刺し倒れる。

 倒れる女性を男性が受け止め、骸骨に向かい合う。


「凍れ!!!!!」


 男性の声が雨の世界を切り裂く。


「わー、すごい。これも能力か、ニャ?」

「関心してる場合ではなさそうですよ彼は......長くもたない。行きますよ!」

「わかった、ニャ」


「《グラビティ・ルーム》」


「《ライトニング・エッジ》」


 二人は屋上から橋にダイブし、能力で骸骨を粉砕する。


 彼らを助けた後、ひと悶着あったが、迎えの荷台車が来て無事全員をコミュニティまで運ぶ。


 アノンはレオとアリエスに保護した人々のケアを任せて、ユウカに報告に向かった。



 ◇◇◇



「マスターのお言葉通り、橋の上で避難中の人間と遭遇、骸骨との戦闘の後、無事保護しました」

 片膝をつき、ユウカに報告する。


「ご苦労様。アノン。ありがとね」

 ユウカはペンを走らせながらアノンの報告を聞く。


「ありがたきお言葉。......ところで少し気になる点がございまして」

「ん、なんだい?」

 ユウカのペンは止まらない。


「コハルと呼ばれた女性とジンと呼ばれた男性に能力覚醒の疑いがあります」

 ユウカのペンが止まり、顔を上げる。


「アノン。詳しく話してくれ」

 ユウカの声色が変わる。


「かしこまりました。骸骨との戦闘中に女性が恐怖に潰れていた男性を剣で刺したと思われた時、彼女の服と剣は消え、倒れました。服は元に戻ったのかと。それとは反対に刺されたはずの男性が何事もなかったかのように骸骨に立ち向かい“氷漬け”にしました」


「そうか......。ありがとうアノン。下がってくれ」

「かしこまりました」


 アノンが一礼し、部屋を後にする。

「これは、一度話してみるかな」

 ユウカがポツリとつぶやく。


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