2-12.宴と王宣言
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カプリコーンの一件から約十数時間後
泥のように眠っていたジンは自分のテントで目を覚ました。
カプリコーンの聖歌を聞いた後、事後処理をユウカに任せて自分は眠りについたのだった。
(いい匂いがする)
覚醒した意識に飛び込んできたのは何かが焼けるいい匂いだった。醬油の香ばしい匂い。
反射的にぐぅーと腹の虫が鳴った。
空腹で限界だったため、匂いに釣られるようにジンは急いで着替えて、テントを出た。
◇◇◇
キッチンにて
人々は全てを忘れて肉を焼き、思い思いに食していた。それだけでなく大人には酒が、酒が飲めない人には甘いものがふるまわれおり、まさに宴が開かれていた。
この生活初めての焼き肉と酒に人々は上機嫌で昨日のことを忘れて心から楽しんでいるようだった。
その光景に圧倒され、キッチン付近で立ち尽くすジン。
鉄板で焼ける肉の音と匂いに心の中で食欲と理性がぶつかったが、勝ったのは食欲だった。
ジンは無心で肉争奪戦に混ざり、なんとか肉を確保した。そして、飲み物とともにキッチンから少し離れた木の下まで移動し、気の赴くまま貪った。
「おいしい」
少し筋っぽいが、ダレに付け込まれていたためか臭みもなく白米が欲しくなる味であった。
いままで食べたことのない感じなのだが、不思議なことに無限に食べられるような感覚で手が止まらなかった。
「楽しんでいるかい?」
見計らったように最後の肉を口に含んだ時、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこにはユウカがいた。左手には酒の入った竹製のコップを持っており、顔が赤い。
肉を水で流し込んでから
「......ユウカさん。一連の事件について話してください」と、
ジンは尋ねた。
ユウカはジンの隣に黙って座り、長くなるかもという前置きをしてから話しだした。
いままでカプリコーンが何を感じてこの騒動を起こしたのか?
それに伴ってアノン、ジェミニはどう受け止め行動したのか。
なぜアノンはジンを頼ったのか?
細かいユウカの考察はまるで見ていたかのように全て順序立てて話した。
そして、最後に
「今回はきみに迷惑をかけたね。主として謝罪する。すまない」
とジンに向かい合って謝った。
「......いえ、私も今回のことで色々考えさせられるきっかけになりました」
「そうか......。今回の一件では各人が自分で考えて行動した。それが誰も失われることのない結果に終わった。私的には大満足だよ」
肩の荷が下りたようにユウカはほっと息を吐き、残った酒を一気に飲み干した。
「......あのっ-」
「さて、私はそろそろ行くよ。......“覚悟”を決めなければならない」
そう言い残してユウカは去っていった。
聞きたかったことを聞きそびれ、取り残されたジンは一人食事に戻り、自分なりに考察してみた。
ジンが引っかかったのは“キーメモリ”とアノン達ユウカに創られた存在のことであった。
詳しいことを直接聞いたわけではないためはっきり言えないが、わかっていることはあった。
1つ、大前提としてユウカという存在に創られた。
2つ、彼らは食事を必要としない。
3つ、普段の能力には制限があり、そのリミットを外せるのはおそらく“キーメモリ”というもの。
4つ、人をモチーフにしているが人間ではない。
そんなことを考えているとユウカに関する一つのことがジンの頭をよぎった。
「神様......なんてな」
ジンは小さく呟いた。今までそう感じていたのを飲み込んでいたのにとうとう口にしてしまったのだ。
◇◇◇
そんなことを考えているうちにどこからかカプリコーンの歌が聞こえてきた。その方向を見ると木でできたステージの上で彼女は歌っていた。
アノンがギターのような楽器を弾き、カプリコーンが歌う。二人が織りなすアップテンポで楽しい雰囲気の曲に聴衆は食事に手を止め、ステージの近くに群がっていた。
たった一曲の演奏であったが曲が終わると、二人は丁寧に礼をした。すると、人々は熱狂し、割れんばかりの拍手を送った。
巻き起こるアンコール。
だが、二人はそのままステージを降りて、代わりに別の人物が登った。その様子に人々はどよめいた。
その人物が歌う雰囲気を漂わせてなかったからではない。
群衆にとって白い外套を身にまとったその女性は一度だけ自分達の目の前に現れて、隠れた才能を見つけてくれた神様のような存在だったからだ。
その女性はつかつかとステージ中央まで歩き、口を開いた。
「敬愛する諸君!いや、コミュニティの同胞諸君!」
ユウカは以前アノンがマイク代わり使っていた石を持っているが、必要ないといった声で叫んだ。
その声に群衆のざわつきは一段と増した。
「私はユウカ。このコミュニティを創設し、諸君を救った者達の主である!先に言っておこう、気づいている者も多いと思うが人類は謎の天変地異に見舞われた!それにより、人々は二種類に分けられたのだ!石化した者と生き残った者に。つまり、ここにいない者は石化したと言っていい!」
絶望的な状況を改めて突き付けられて、黙る聴衆。先ほどとは一転し、不安、落胆などの感情に包まれた。
「だが、ここにいる諸君は今も生きている!いままで私が表に出なかったのはこの国が王を必要とする国ではなかったからだ。しかし!」
感情を隠すことなく叫んでいたユウカは一度ためて、言葉を続けた。
「不安が飽和し、進むべき道を見失った者が多い以上。しばらくは私が“王”として舵をとる!もちろん、政治や法が機能するまでの間だ。それは確約する」
「今の生活は不便で不安だろう。つらいだろう。だが、それでも......私についてきてくれ!何故頭を下げる?何故悲しむ?」
身振りを交えながら感情をぶつけていたユウカは一転、静かに語りかけた。
「人類は幾度となく環境に適応してきた。世界は変わっただとすれば適応すればいい。立ち上がれ!現実と戦うのだ!」
「ここにコミュニティの王として宣言する。私はどんな憂鬱も受け入れよう。そのためにこの右手を差し出そう。諸君はその手を掴んでくれ」
ユウカは微笑みながら聴衆を見つめて、右手を開いて前に差し出した。
蜘蛛の糸を求めるように、希望と握手を求めるがごとく、聴衆の右手はその手を求めた。
「気高き理想と人類の未来のために戦うのだ!我々の文明を取り戻すために!」
ユウカは最後にその右手を閉じて大空に掲げた。
沸き起こる『ユウカ』コール。
人々の希望が伝播し、その声は広がっていった。人々の咆哮が天さえも震わせる程大きくなる。
神々しさまではらんだ壇上の人物に対して人々は期待し、熱狂した。
最後に『ありがとう』と言ってから地を割るほどの歓声に包まれてユウカは退場した。
◇◇◇
人々が絶望の中から光を見つけて歓喜するそんな時、
「けっ、つまらないな」
群衆の中にいた一人の男性が吐き捨てるように呟いた。
光が輝く程に濃くなる影の正体は?
次回に続きます。
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