9話 ◆◆屈辱◆◆
◆◆屈辱◆◆
僕が所属している美術部では、
最初から活動などという言葉はない。
1つのテーブルに4人くらい座って
みんな好きなように喋ったり、
ふざけていたりするだけだ。
僕の班には、
僕、ピヨ、孤華の3人が居た。
孤華はもともと美術部ではなかったのだが、
僕が美術部なのを知ったら
自分の部活そっちのけでいつも遊びに来る。
つーかもう入部してるんじゃないかってくらい。
僕としては、
頼むから来ないでくれって感じなのだが…。
ある日のこと。
人に寝顔を見られるのは嫌だから
普段は絶対寝ない僕が、
その日、委員会やらなにやら重なって
だいぶ疲労が溜まっていたせいか、
うっかり寝てしまった。
あのピヨと孤華の前で。
まさか、あんなことになるとは知らず…
それから少し時間が経った。
僕は、ゆっくり目を覚まして、
あることに気づいた。
猫「な…?なんだよこれは!!?」
椅子に体が括りつけられていた。
背中で手首は縛られているし、
足もガムテープで固定されていた。
孤「あ、やっと起きたぁ〜」
雛「おはよー猫♪」
僕の目の前で
2人が笑っている。
猫「は…ちょ、あんたら何して…!?」
ピヨが、ガムテープをまた用意した。
丈夫そうな紐まで持っている。
雛「口にするの?鼻は?」
孤「鼻までやったら息できなくなっちゃうよ〜」
雛「首は?」
孤「陽菜、それは犯罪。」
訳の分からない会話をしている2人。
猫「おい!?これ…え!?」
雛「ごめんね猫!あんまりぐっすり眠ってるからつい…」
つい、なにしてんだ豚野郎!!!
孤「大丈夫だよ祢子。怖がらないで。」
いや怖がってなんかねぇよこのドS!!!
会話を進めながらも、じわじわと2人は近付いて来た。
猫「あ…こ、こっち来るな…!!!」
雛「何もしないよ〜」
孤「ちょっと我慢するだけだから★」
猫「我慢って…な…!?」
その直後、孤華が思いっきり
僕が縛りつけられている椅子を蹴っ飛ばした。
破壊的すさまじい威力をもつ
孤華のドSパワーは、
僕を床に叩きつけた。
猫「がっ…!!」
身動きが取れない僕は、
椅子ごと体を強打して倒れ、
2人を床から見上げた。
雛「孤華ちゃん、やりすぎじゃない?」
孤「平気だよ、手加減してるから。」
どこがだ、と思いながらも
僕は必死にもがいた。
でもしっかり縛られている縄は解けず、
手首に食い込むばかりだった。
2人が、言った。
雛「無理だよ猫?」
孤「それ絶対に自分じゃ解けない縛り方なんだわ〜」
猫「いっ…くそっ…」
孤華だからと言って
一目置いて冷静な口調で喋れる余裕はない。
僕は全身の力を入れて
足掻いていた。
そして、ピヨが倒れている僕の隣に座り、
猫「ひっ…!」
冷たい手が、僕の首に触れた。
孤華が反対側に座り、
猫「あ…!?」
2人して僕の急所を、
くすぐった。
2人は長時間に亘り
僕をくすぐり続けた。
僕は声を上げて笑う、ということをあまりしない。
だからなのか、
こういうことをされるとき、変な声が出る。
次第に声が出なくなってしまうのだ。
雛「あれ、猫、どうしたの…?」
猫「ひっ…は…はぁっ…!!
孤「顔赤いぞ…♪」
猫「ちょ、やめ…くそっ…!!!」
こいつら、鬼だ。
ここは部活だ。
何してんだこの2人。
馬鹿なのか!?
人に体を触れられるのは、大嫌いだ!!!!
その後その地獄から解放されたのは、
部活終了5分前のことだった。
僕はすっかり生気を失い、
ぐったりしていた。
この日の屈辱のことを一生忘れない。