プロローグ
はじめまして
S.T.Oと申します。
名前の元ネタはプロレス技のスペース.トルネード.オガワです笑
私自身昔銀行員だったこともあり、池井戸潤みたいに銀行員のお話を書いて見たいと思い執筆しました笑
あくまでも昔銀行員だったので今とは違うところがあるかもしれませんがよろしくお願いします
「金子君さ~今日の数字は?」
2月13日水曜日午後4時埼玉県にある関東銀行岩槻支店2階営業室の事。
嫌見たらしい声がする、声は半ばため息交りである。嫌味たらしい口調で話す課長の大熊 豪は返ってくる答えの検討はついていた。
「すいません。0です」
恐る恐る答える主人公、入行4年目営業3年目金子 忠成の声は震えていた。当然この後に何を言われるかも分かっていた。
数字とは今日の仕事で取れた実績。
0とは何も取れなかったということである。
「金子くんさ~今日も0だよね?昨日も0だったよね?君は0という数字が好きなのかな?永遠の0なのかな?ちなみに今日は0だったの君だけだよ?」
周りの仕事仲間達は黙って見守っていた。むしろ金子が怒られるから自分が課長から責められる事が減ると仕事仲間は思っていた。
半ば虐待されている小動物のように仲間達は自分に被害が来ないことだけを祈っていた。
「金子くんさ?君はもう学生じゃないんだよ?給料をもらって働いてるんだよね?けど君が働いても給料分稼いでないよね?ということは君は実質タダ飯ぐらいなんだよ?君が上司ならそんな部下についてどう思うかな?」
「すいません……」
金子は下を向き黙って聞く。
「すいませんで済むの?前の支店では表彰受けたというから期待してたのに全然だね?今期は後ろから数えた方が早いんじゃないの?それとも前の支店の数字はまぐれだったのかな?この支店に来て半年も立つのに数字取れませんは許されないよ?」
銀行には半年に1回営業上位の者が表彰される制度がある。
金子は確かに表彰を受けていた。ただし、銀行員生活3年目で初の受賞であり、期の最後に大きな融資を実行したことによる滑り込みでの受賞であり、実際の営業成績はせいぜい中の中が良いとこである。
銀行の営業成績は融資を実際に行った件数ではなく、融資でお金を貸した金額で決まる。
よって1件極端に融資金額が大きい融資をするとこのような事が起こる。
つまり、1000万の融資を5回行った人より1億円の融資を1回行った人の方が評価が高くなるのである。
「まぁ、いいや。今日は定時上がりだから上がる準備して。金子くんは明日は取れるように考えてきて。明日も0なら来期は営業下ろすからね。」
「はい。すいません、頑張ります。」
東洋銀行では水曜日は5時に全店で帰宅することに決まっている。この日はどんなに忙しくても強制的に5時に帰る事が決まっていた。
下ろすというのは営業職から事務職に配置転換させるということである。
営業職から事務職に配置転換させられるのは銀行員にとっては出世ルートを外れる事を意味し、営業にとっては最大の屈辱な事である。
課長には人事権があるため支店内の配置転換について意見することができる。最終的に決めるのは支店長だが直接の上司の意見はとても大事なものであり、課長の言葉は脅しではなかった。
「忠成!飲みに行くぞ!」
声をかけてくれたのは5つ上の入行9年目営業8年目の先輩野村 良平である。
彼は金子や他の銀行員とは違い、銀行内において連続表彰常連の優秀な銀行員である。
野村は成績優秀なだけでなく後輩の面倒見も良く、後輩が落ち込んでるようだと慰めるために良く飲みに誘っていた。同じ支店の営業内の誰もが、野村が課長だったら良かったのにと思っていた。
「お前らも行くだろ?」
野村は他の営業課の2人、森 伸平、高松 明にも声をかけた。
森は入行2年目、営業1年目の新人
高松は入行6年目、営業5年目である
なお、銀行員の世界に先輩から飲みに行くと言われたら後輩に拒否権はない。
そして、課長は呼ばないのが暗黙の了解である。
課長が来た瞬間に楽しい飲み会は説教の場所に意味合いを変えるからである。
最も野村は誰からも好かれる性格だった為、2人は断る気は全くなく、2人とも行きますと答えた。
そして4人は近くの居酒屋に行くのであった。
話に出てくるお説教の部分は全部実体験です。
本当はもっと酷い事言われたことあります笑
この程度なら優しい方ですね笑