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第9話 策略の朝


--翌日の朝。研究所に鳴り響いたのは風と機械の音が混ざった爆発音のような暴風。


「なんじゃなんじゃなんじゃ!?」


マ-ク博士は眠りまなこに事態の状況を確認しに行く。




「何の音だ!?」


フランは急いでベッドから飛び出して廊下に出た。


「 何だよこの馬鹿でけえ音は!?」


当然この音の中眠っていられる筈も無くラックもドアを開ける。


「多分トマトだ」


それはトマトが起こす特有の風を身に感じたフランだからこそ分かることだった。


ラックは額に手を当てた。


そして一階で風が吹き荒れる中、物が散漫していく様を見ながら発生元に急いで行く。






「2人共遅い!」


レナは日課である外の手入れをしていた為、直ぐに研究所の異変に気付いたようだった。


「遅いってこの風の中なんだぜ!?」


ラックは逆立ちする髪の毛をおさえながら声を大きめにして答える。


「見て!」


レナは暴風の発生する場所を指差した。


「……何だあれは」


フラン達が目にしたのは捕獲装置に抵抗するトマトと、風を吸収する黒い穴。その黒い穴はばちばちと電撃を放ち捕獲装置四隅の空間から発生している。


トマトは自身の風を最大限まで放出し抵抗をみせている。


「待っていろトマト! 直ぐにこんな装置壊してやるからのう!」


その近くでは長いハンマーを両手で持って捕獲装置を叩くマ-ク博士もいる。しかし捕獲装置はビクともしていない。




「フラン何処行くのよ!?」


すると何かを思ったフランが走り出して行った。




(待ってろトマト!)


暴風吹き上げる中、フランは研究所の通路を走る。


「どれだ!?」


フランが着いたのは研究所の電気供給場所。


(どうなるか分からないけどやるしかない!!)


フランは主要の電源スイッチをブロックをした。






ヴヴゥゥゥゥンーー




間も無く研究所内の全ての電力が停止しそれと同時に暴風も収まっていく。




「……止まった」



研究所に朝日が入り込み、自然の光が辺りを照らす。


そしてマ-ク博士達の元に急いで駆け付けたフランは、トマトが元気そうにしているのを喜んでいるレナがいたことに安堵する。


「これはいよいよ持って拍車がかかったな! ワ-ムホ-ルなど一商人が扱っていいものではないぞ!」


マ-ク博士は喧騒めいた表情で言った。そしてマ-ク博士が言ったワ-ムホ-ルとは、本来なら禁止されている技術の一つ。

過去、街や村の間を瞬間的に移動する装置として開発された代物だったが目的地とは違う場所に飛んでしまうという事態が相次ぎ世界的に使用が禁止された。


「捕獲装置にワ-ムホ-ル……これで研究所のモンスター達を何処かに送ったのね」


レナは消えたワ-ムホ-ルの位置を確認している。


その後マ-ク博士はストライトを呼び出した。後、駆けつけたホワイト巡査によって事情聴取が始まった。





「ストライト、この捕獲装置はお前が持って来たもので間違いないな?」


「そうですが、それがどうかしましたか?」


ストライトは前回研究所に来た時同様、身なりの正した服装だ。そして自身の持って来た捕獲装置にモンスター誘拐の疑いをかけられているにも関わらず、至って冷静な対応を見せる。


同じ商人仲間であるリトルは別件である捕獲装置設置作業により来てはいない。


「じゃったらあのワ-ムホ-ルは何じゃ!? あれで儂の研究所のモンスターを盗んだのではないのか!?」


「ワ-ムホ-ル? 何ですかそれは?」


そんなことは知らないと言わんばかりの対応を見せるストライト。


「しらを切りおって!」


怒り顕わにマーク博士の怒声が飛ぶ。それはモンスターの生態調査、強化の為に人生の大半を捧げて来たからこそ思う感情だろう。


「マ-ク博士、ここは私が」


ホワイト巡査はストライトの前に立つ。



「ストライト、お前は過去に捕獲装置を高額で売っていた経歴があるな」


「ええ。それが何でしょう?」


ストライトは過去、新性能を備えた捕獲装置を店に揃え高額で売っていたという経歴があった。それは同じく捕獲装置を販売する他の商売人から買い占めて売っていたという事実だった。


「確かにそのことに関してはとやかく言うつもりは無い。--ただなストライト。ロットマンという男の名を聞いた事はないか?」


その名前を聞いた瞬間。ストライトの表情に緊張感が現れる。


ストライトの額からつうっと汗が流れる。


「ロットマン?」


フランには聞いたことのない名前だった。


「ロットマン、有名な名だ。悪い意味でな」


ホワイト巡査から出たその名前に、マ-ク博士は落胆の表情を浮かべている。


「元オルカ研究所の所長であり、勇者に転身した異端者。そして現在はその行方を眩まし、あの闇の組織(・・・・・・)と関わっていると言われている。お前が知らない筈が無いだろう」


ホワイト巡査はストライトに問い詰める。


ホワイト巡査がそう言ったのは捕獲装置を積極的に購入、使用をしていたロットマンは商人の間でも有名だったからだ。


そういった情報は目撃者の人伝えによって街の保安官達の耳に入る。勿論、彼ら保安官達も違法な取引や商売をしていないか見て回っている。


「だから何だと言うんですか? 確かに私はロットマンを知っています。でも、それは私だけじゃないでしょうに」


それは真っ当な言葉だった。


「では、ワ-ムホ-ルの開発に携わった1人がロットマンだということも知っているな?」


過去、街や村の移動する手段として一時的に使用されていたワ-ムホ-ル。その技術に目を付けたロットマンは、モンスターの生態調査の為に乱用を繰り返した。

結果、それはモンスター自身に影響を与えることになり本来の生態調査とは異なる情報を公表していたということが明らかになった。


その為、事態発覚後オルカ研究所は一時的に休業を余儀無くされた。


そして程なくしてそのことが要因となり、世界的にワ-ムホ-ルの使用及び開発は禁止されることになった。


「……全く。しつこい保安官です。ええ、認めますよ。私はワ-ムホ-ルを内蔵した捕獲装置をマ-ク博士に提供しました」


「くっ! 開き直りよって! 儂の……儂の研究所のモンスター達は何処にやったんじゃ!!」


マ-ク博士はストライトの肩を掴み怒りをみせる。


「さぁ? 何処に行ってしまったんでしょうね」


しかしストライトにはまだ余裕があるように思える。


マーク博士は手をぎゅうっと握り絞め、今にも殴りそうな勢い。


「それとマ-ク博士、貴方何か忘れてはいませんか? 私は無料で捕獲装置を提供する代わりにモンスターの調査をさせて頂くという条件を出していた筈です」


それはマ-ク博士がストライトから捕獲装置の提案があった日に聞いていたことだった。


「た、確かに言うておったなそんなこと。じゃがな、例え調査というてもこんな乱暴なやり方があるか! それにワ-ムホ-ルの使用など、そもそも犯罪じゃぞ!!」


「……ああ言えばこう言う。全く、研究者というのはどうも頭が堅い」


この時、ストライトは既にワ-ムホ-ルを使用したという事実がある。それはイコ-ル、禁止されていた技術を使用した場合、理由の如何に関わらず逮捕されることを意味していた。


「むむむ……。じゃったら! 今すぐにこの研究所にある全ての捕獲装置を撤去するんじゃ!」


「構いませんが、それだと撤去費用を含め本体費用と設置費用も頂きますよ?」


「な、何を抜かしたことを言うておる!?」


淡々と説明をするストライトにマ-ク博士は呆れてしまった。


そして今まで黙っていたラックが口を開く。


「おいあんたさ! さっきからめちゃくちゃなこと言ってるぜ! 今更金取るってそりゃ詐欺じゃないのか!?」


「詐欺? 何を言うかと思えば……。契約書にしっかりと書いてますよ」


契約書。それはマ-ク博士がストライトから捕獲装置を受け取る前にサインしたもの。


マ-ク博士は血相を変えて契約書を取りに行った。




「マ-ク博士……」


フランは、ただただどうすることも出来なかった。




間も無く戻って来たマ-ク博士の手には一枚の契約書を持っていた。


「……確かに書いておる」


その契約書には小さな文字で『捕獲装置撤去時は掛かった全ての費用を負担して頂きます』、と記載されていた。


「き、汚ねえぞお前!」


それを聞いたラックはストライトに飛びかかった。


「殴るんですか? いいですよ。ただそうなるとあなたも逮捕ですね。そうでしょう? ホワイト巡査」


「ラック君、その手を離しなさい」


ホワイト巡査はストライトの胸ぐらを掴むラックに言った。


「ちっ!」


ラックはストライトから手を離す。


ストライトはラックが掴んだ跡に出来た皺を正している。





「何だい? 騒がしい朝だな」


するとあの暴風音があったにも関わらず、目を覚ましたマ-テリーが起きて来る。



(この人、今まで寝ていたのか? どんな神経してるんだ)


フランは目をこすりながら歩いて来るマ-テリーを見る。


(ん? あの顔、見覚えがある……。そうだ! アイツはいつぞやの勇者! 何故こんなところに)


マ-テリーを見るな否や、ストライトの額から再びつうっと汗が流れる。


「お前は……」


マ-テリーは直ぐにストライトに気付いた。


ストライトはマ-テリーから顔を背けて、その時のこと(・・・・・・)をバレないように必死に取り繕う。


「マ-テリーさん、その人のこと知っているんですか?」


フランはストライトの顔を覗き込むマ-テリーに聞いた。


「思い出した! お前はあの時、港町ルベルカで捕獲装置を密輸していた人間!」


びくりと。ストライトの体が動く。



「貴方は?」


ホワイト巡査はいきなり話に入って来たマ-テリーに問う。


「おっと失礼! 僕はマ-テリー・カレン。この研究所には少し用があったもので」


「……なるほど、勇者の方ですか」


ホワイト巡査はマ-テリーの服装、雰囲気からそう判断した。


「ええ。それが生業なもので」


「やはりそうでしたか。我々も時に貴方達勇者の手を借りることもありますから。それはそうとマ-テリーさん。この男を見たその時のこと、詳しく教えていただけますか?」


「いいですけど、随分前の話だからうる覚えですよ?」


「構いません」


マ-テリーとホワイト巡査が話しているその間、ストライトは明らかに動揺を隠せないでいた。それはストライトがしきりに足を揺する様からフラン達は感じ取っていた。



「……そうだな。あの時、僕は--」


今から数年前。勇者マ-テリーは港町ルベルカから出航する船を待っていた時のことだった。その時はまだ、今仲間であるグリフォンはおらずマ-テリーは体一つで毎日を過ごしていた。


そして商人ストライトを見かけたのは、港町ルベルカにやって来る貨物船を見ていた時だった。その貨物船ル-ベリー号は研究所が必要とする捕獲装置を運ぶ船。

まだまだ捕獲装置製作者が少ない現状、少しでもアストリア大陸にと他の大陸で作られた捕獲装置を運んで来ている。

しかし本来、正規のルートで港町ルベルカに来る捕獲装置だったが中にはそれを守らない人間達もいた。

そしてその人間の中の一人がストライトだった。


カタストロフィ。いつ、どのような形で何処の場所に現れるか分からなかったが、それは唐突に起こった。


雷が7本トレ-ドマ-クである紋章。それが彼らカタストロフィを見分ける唯一の手段。マ-テリーは偶然にもその紋章を持った人間がストライトと何かを話している様子を見ていた。


距離にして数メートル。マ-テリーは恐る恐る詰め寄り耳を傾けた。




『良質な捕獲装置がまた入った。これは先日の礼だ』


紋章を持ったその人間はストライトに数百万近いゴ-ルド札を渡していた。


どうやら話によると、その頃からストライトは捕獲装置を使ってモンスターを狙い何処かに売っていたようだった。

程なくして紋章を持った人間はルーベリー号の奥に行ってしまったが、その後ストライトは一人でこんなことを言っていた。



『良い商売だよ全く。私がコツコツとやって来た捕獲装置販売も、ああいう連中と組めばこれだ。--ふふ』


その様子を見ていたマ-テリーは明らかにこれは闇の組織、カタストロフィが絡んでいると踏んだ。




ガタッ


『誰だ!? 誰か其処に居るのか!?』


足を入れ変えようとした際、木箱に当たった音がストライトに聞こえてしまった。そしてマ-テリーは果敢にもストライトの前に出た。



『……誰だか知らないが聞いていたかな? 今の会話』


『いや僕はただこのルーベリー号を見に来ただけさ! 見てくれよこの壮観! いや~ほんとルベリカに来て良かったよ』


『……ふん。ただの観光客だったか』


そう言ってストライトは港町の賑わう中に去って行った。





『何とか疑われずに済んだようだな。--それよりもあの男、あの紋章の奴らの関係者か……』


カタストロフィ。


破壊の名を掲げる組織は世界的に見ても危険と名高い。それは水面下で動いている状況が続いていたがマ-テリーが港町ルベルカに来る前に寄った、情報が集まる都イエロで知ったことだった。


その思想の根源は文字通り組織の名前であり、それが一体何を破壊するのかが明確にされていない。


だからこそ派手な動きを見せない組織に対して警戒を促しているのが世界のガ-ディアン達。


彼らは言わばこの世界を守る番人であり、街にいる保安官とはまた違う。ただ表だって動くわけでは無く、伝えられる情報は都イエロなどに置かれる。

その為情報の伝達は比較的に遅く、こうしてマ-テリーがカタストロフィについて知っていたのもイエロに寄ったからだった。






「ーーだいたいの話はこんな感じです」


マ-テリーが話している間、当の本人ストライトは眉をひそめる。


「マ-テリーさん、貴重な情報ありがとうございます。--ストライト、まだ何か言うことでもあるか?」


これ以上反論の余地は無いと踏んだホワイト巡査はストライトに問い詰める。


「……飛んだ邪魔者が出て来たもんだ。--そうです。私はこの研究所に捕獲装置を置き、それに仕込んでおいたワ-ムホ-ルでモンスター達をいただきました」


淡々と述べるその様子を見ていたマ-ク博士、フラン達は怒りを通り越して言葉も出なかった。


「漸く認めたな。ではこれからお前を連行する」



バシッ



ストライトに手錠をかけようとしたその時だった。ストライトはホワイト巡査が手に持っていた手錠を振り払った。


「これで私が終わったと!?」


ストライトは脇うちに手を入れて正方形の小さな物体を取り出した。


「何じゃそれは!? まさか爆弾ではあるまいな!?」


「爆弾、それも良いがもっと良いものです! これを起動すればそう、今この研究所にある全ての捕獲装置のワ-ムホ-ルを開きモンスター達を強制転送させることも可能! そして!!  出力を最大限に解放すればこの場所もただでは済まない!! さあ、ショ-タイムです!!」


ストライトは持っている装置を起動させた。





「……な、何故……何故反応しない!?」


ストライトは執拗にカチカチと鳴らし起動装置のスイッチを入れる。


その一方その場にいた一人の少年がにやりとする。


「小僧! 何がおかしい!? 」


「やっぱりな。正解だったよ」


「正解!?」


フランはつかつかとストライトの元に歩みを進める。



「そもそも俺は初めからあんたなんか信用してなかった。捕獲装置を無料で提供? そんな美味しい話何処にあるんだよ。マ-ク博士もだよ。そんな話、初めから嘘だって分かるはず」


「最もじゃフラン。儂もどうかしていた」


研究所の多忙の多くを一人で抱え込んで来たマ-ク博士は、その美味しい話に対して何の躊躇も無いほど追い詰められていた。

それは度重なるモンスター逃亡を許したことで研究所が勇者に返さなければならないお金は多大になっているからだった。


しかも勇者に返すお金だけならまだいいが、モンスターを調査する費用の負債もある。


「そんな話はどうでもいい! この!!  起動装置は何故動かない!?」


ストライトは起動装置をフランに突き出す。


「簡単なことだよ。ワ-ムホ-ルだって電力が必要だろ?」


「そうだわ! フランがあの時研究所の電気を止めたから!」


「電気を止めた!? ……そうか! 私としたことが!」


ストライトは研究所で会った番犬トマト、レスキロスの価値に気付き、今朝、遠隔操作により最も捕獲度の高い捕獲装置Aを起動させた。

しかし思いの外トマトの抵抗は強く、結果フランが研究所の全ての電力を止めて程なくを得た。


その時フランは戻る最中、予備の電力も止めるということもしていた。

それは研究所に来たストライトを怪しんでいたからこそであり、フランの咄嗟の行動だった。研究所に来てからまだ一週間という短い期間だったが、フランは人知れず研究所のことを考えていた。


自分が招いた結果により、最後に企んでいたストライトの思惑は見事に崩壊した。そしてホワイト巡査によってストライトの両手に手錠がかけられ、この一連の事件の幕は閉じることになった。









「それではマ-ク博士と皆さん。くれぐれも今回のようなことが起きないようにお気をつけください」


「ホワイト巡査、ご苦労様でした。これからは安易な判断をせぬように気をつけます」


マ-ク博士はホワイト巡査に頭を下げ、今回自分が招いたことを反省した。


そしてストライトがホワイト巡査に連れて行かれる中、後から駆けつけたリトルが口を開く。


「あーあ。まさかストライトが悪者だったなんて」


「リトル君、これも一つの経験じゃよ。儂も君も、またいつ今回のようなことに巻き込まれるやもしれん。儂はもう歳じゃが、君はまだまだこれから。こんなことで落ち込むではないぞ」


「分かってますって! --じゃあ俺はもう行きますね!」


リトルは足早に遠くに見えるビックヒッポスの元に走って行った。




「マ-ク博士。今回のことはお気の毒でした」


「マ-テリー、お前儂を心配してくれるのか?」


そうマ-ク博士が聞くとマ-テリーは不機嫌そうな表情をする。それはマ-テリーが勇者として有名になり出した頃、真意に対応してくれたのが何を隠そうマーク博士だったからだ。


「そんな顔をするなマ-テリー。大丈夫じゃわい! もう慣れてもうたからな! わっはっは! まぁ何とかやっていけるじゃろ!」


あいも変わらずマ-ク博士はお気楽思考だった。


現在返さなければならないお金が多額にも関わらず、今回ストライトによって何処かに転送されてしまったモンスター達の問題も増えた。

それにも関わらずマ-ク博士が暗い表情を見せないのは、そんなことは何の解決にもならずただ負の感情を増幅させることだと知っていた為だった。


「おじいちゃん! 私に何か手伝えることがあったら何でも言って!」


「そうですよ博士! 俺とフランはまだこの研究所に来て少しですけど、きっと役に立ちます!」


レナとラックは悲観を見せないマ-ク博士の心中を思っての言葉をかけた。


「ありがとうお前達。その気持ちだけで充分じゃよ」


しかしそうは言っても、研究所が抱える課題が増えたという事実には変わりなかった。


「マ-ク博士。でもいくら誤魔化しても現実は変わりません。生意気言うかもしれないですけど、この研究所が抱える問題は多過ぎます」


すると客観的に見ていたフランが少しばかり厳しい言葉を放った。


それはフランの言う通り、勇者達に返すお金、モンスターの調査、能力開発費用、そして先日のスライムが引き起こした爆破によって大破したB通路の修繕費。


極め付けは今回ストライトによって持ち込まれた捕獲装置の撤去費用。それに何処かに行ってしまったモンスター達の行方も探さなければならない。


いくら悪徳な商売の罠にかかったと言っても契約書にサインした事が無効になるかは現状では分からない。


「……そうじゃなフラン。まぁ何事も焦りは禁物じゃ。事の成り行きを待つとしよう」


「おじいちゃん……」


それでもマ-ク博士が慌てることが無かったのは物事には終わりが必ず来るということを理解していたからだった。


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