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第3話 研究所の番犬


「此処だ此処!」


ストライトはビックヒッポスに乗っている彼に呼びかける。


「ストライト遅くなった!」


そうストライトに返事を返すのは黒いハットを被った少々ダンディ-な青年、リトル・ブラット。


リトルはストライトと共に捕獲装置の商売を行い、主に裏で動くことが多い。今回リトルはストライトから連絡があった捕獲装置を研究所に運ぶべく、西の街から遥々やって来た。


「ストライトさん、あれが最新の捕獲装置ですか!?」


マ-ク博士は居ても立っても居られず、そわそわとしている。


「そうですよー! あの捕獲装置があればもう研究所からモンスターを逃さなくて済みます!」


「それは有難いことじゃ! これでモンスター脱走の心配をせずに研究に没頭出来るわい!」


マ-ク博士は度々逃してしまうモンスターの所為で返す借金を止められることに喜んでいた。





ズウウゥゥゥゥン




ゆっくりとした歩み。

それでいて豪快な一歩一歩をするビックヒッポスは間も無くマ-ク博士の研究所の前で立ち止まる。


「今そちらに行きますねー」


ハットを抑えながら、リトルはビックヒッポスの背中からかけられている縄はしごより降りる。その足取りは軽く、慣れた様子でスルスルと地面に着地する。


「とっ! --どうも初めましてマ-クさん! リトル・ブラットです、お見知り置きを」


パンパンと手をはたきながらマ-ク博士にそう挨拶をする。その礼儀のかけらも感じられないリトルにマ-ク博士はしばし困惑する。


「初めまして。ストライトさん、彼は?」


「彼は私の商売仲間ですよ。いつも裏方で動くもんですから言葉遣いはなっていませんけどね」


「そういうことですか。--リトルさん、今日はお願いしますね」


「まっかせてくださ-い!」


そのダンディな様は見せかけなのか、言葉と感じが合わさっていない。リトルはビックヒッポスが引いていた貨物のところに歩いて行き、同じく乗って来ていた者達と共にその接続部を外す。


「マ-ク博士、捕獲装置の設置は今日中に終わります。ですのでそれまで少し騒がしくなりますけどお許しください」


「宜しく頼みますよ」


「それとB通路の大破した穴はやはり自分で直されるんで?」


「あれくらい直せますとも! これまでも何回も研究所の修理はしてますからな! それに私には優秀な助手もいますから何とでもなります」


今朝スライムによって大破された穴など特に心配していなかったマーク博士だった。


「……そうですか。まぁ仮に何かその穴から入って来たとしても、マ-ク博士の研究所には優秀な番犬(・・・・・)もいますしね」


「そういうことです!」


「あの穴を見た時、じきに分かるなんて言った意味が分かりましたよ。まさかあんな可愛らしいワンちゃんが捕獲レベルAのモンスターだったなんてね。私はえらく嫌われたみたいですけど……。それに流石にこの辺りの地域で捕獲レベルAクラスのモンスターなんてまず居ません。でもだからといって油断するのも考えものですよ? マ-ク博士」


ストライトはマ-ク博士と研究所を見て回った際、レナがトマトと呼ぶ犬と会っていた。


「大丈夫じゃわい。そもそも研究所に好き好んで入って来るモンスターなどいやせん。彼らモンスターの情報共有能力は私ら人間より優れているからな。だから研究所に自分達を捕まえる装置があることなどとうに知られておる」


「マ-ク博士がそう仰るのなら私はもう何も言いません」


ストライトは準備を進めているリトルに目を移した。リトルは共に来た者達とビックヒッポスから外した貨物を研究所まで運んでいた。




「マ-クさんでしたっけ?」


マ-ク博士はこの失礼きわまりない若者リトルとどう接するべきか考えた。


「リトル!」


ストライトは少しばかりきつい口調でリトルを叱る。


「いいんじゃいいんじゃストライトさん。彼はそう、まだまだお若い。だからこれから色々と学んで行けばよい」


「すみませんねマ-ク博士。この子は教養というものを知らずに育って来たんです。言い訳がましく聞こえるかも知れませんが、今回はこの捕獲装置を無料で提供するということでご勘弁頂けますか?」


ストライトはリトルの頭を下げてマ-ク博士に謝らせた。


「ーーリトル君。捕獲装置の設置、宜しく頼むよ」


マ-ク博士はリトルの顔を上げさせ、にっこりとしながらそう言った。


「ま、まっかせてくださ-い! マ-クさん(・・)!」


「博士!」


ストライトは強調する。


「マ-ク博士……」


リトルはまた一つ、世の中の常識というものを知った。


その後、共に来た者達と共に研究所に元々あった全ての捕獲装置を運び出した。

後、新たに研究所に設置された捕獲装置は、マーク博士が研究の間に作った捕獲装置とは比べ物にならないほどしっかりとしている。


その作業は数時間ほどかかり、終わったのは日が暮れる夕方のことだった。






「--では、これで捕獲装置の設置は終わりました」


研究所の入り口では、マ-ク博士、レナ、フラン、ラック、そして今回話を持ちかけて来たストライトとその商売仲間であるリトルと運び代行の人達が話をしていた。


「本当に助かりました。……でも本当に御代はよかったんで?」


「マ-ク博士も心配性ですね。大丈夫です。お金は頂きません」


そうストライトが再度説明すると、ほっとした表情でマ-ク博士は安堵する。


「それでは置かせてもらった捕獲装置に何かあったらいつでも言ってください」





「マ-ク博士! またな~!」


リトルはマ-ク博士に手を振った。しかし隣にいるストライトに頭をバシッと叩かれている様子を見て、マ-ク博士は苦笑いで手を振り返しながら今後のリトルの事が心配になる。


ストライトとリトル、運び代行の人達を見送り、マ-ク博士達は研究所に戻った。



「おじいちゃん、今日はお疲れ様!」


レナは深々とソファ-に腰を下ろしたマ-ク博士の前のテ-ブルにコ-ヒ-を置いた。


「ありがとうレナ。頂くよ」


マ-ク博士はそのコ-ヒ-を手に取る。

直ぐ側にはこの研究所の番犬と呼ばれているトマトがうるうるとした目でその様子を見ている。ラックはそのトマトがどうなるか知っている為、怯えながら離れた場所にいた。


「ほらっトマト! お前はこれが欲しいんだろ」


そう言ってフランはトマトに野菜であるトマトを差し出す。


「ワン!」


トマトはそのトマトにかぶりつき、美味しそうに食べている。


このトマトと言う名前は文字通り野菜のトマトが大好物だからとレナが付けた名前。トマトの外見はそのトマトのように赤い訳では無く、中型犬程の大きさで白と黒が混ざったような色をしている。


「ほんとにトマトが好きなんだな」


フランは美味しそうにトマトを食べる様子を見て、自分もお腹が空いて来てしまう。


「……じゃ、じゃあ私晩御飯作って来るね!」


ぐぅ~となったお腹の音はレナにも聞こえていた。レナはリビングの反対にあるキッチンに向かった。

その様子をズズッとコ-ヒ-を飲みながら見ていたマ-ク博士は、その日常の風景を感じていた。




「フラン、フラン!」


そう遠い位置からフランを呼ぶのはやはりトマトが苦手だからだった。

ラックは大きくも静かな声でフランに手招きをする。


「何?」


フランはリビングの入り口から呼ぶラックの元に行く。


「あのさ、ちょっと部屋で話したいことあってよ」


ラックはマ-ク博士を気にしているようで、耳伝いに話す。


「話したいこと?」


「いいから! 部屋行こう!」


ラックはフランの背中を押して部屋に連れて行く。





「……子供だな」


マ-ク博士はラックが何を言っていたのか聞いてはいないが、子供が考えることなどたかが知れているということを知っていた。





バタンッ



ラックは研究所2階、自分の部屋として使わせてもらっている場所にフランと入る。


研究所には地下を入れると3フロアが存在しており、フランとラックが今いるのはその最も上のフロアにある数部屋のうちの一つ。


「何だよ! そんなに急いで!」


「まあ落ち着けって! 今から話すことはフランにとってもそう悪い話じゃないから!」


ラックはそう言うが、フランは分かっていた。


昔からの馴染みでラックが持ちかけて来る話の多くはまともなことではなかったからだ。そしてそれは今回も例外ではなく、マ-ク博士から隠れるようにラック自身の部屋に呼び込んだことから分かっていたことだった。


「とか言って。ま-たロクでもないこと考えてんだろ!」


「いいから聞けって!」


少しばかり声が大きくなってしまい、一つしたのフロアにいるマ-ク博士とレナに聞こえてはいないかとラックはヒヤリとする。しかしそれは聞こえていなかったようで、深妙な面持ちでラックは話し始めた。


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