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スギボウの大冒険  作者: うああじた
ウエストロッド
6/20

6話 おじさんとの思い出

「おお、これは中々いけるぜ、おじさんとのジビエ(野生の動物を食べる事)経験が役に立ったぜ」


 母の友人であるハンターのおじさんは、父親の居ない俺にとっては父親代わりの頼れる存在だった。

「男は常にワイルドでなきゃならん!!」と小学生の頃から海や山に連れて行かれては最低限の調味料だけで後は現地調達のサバイバル。

 そんなおじさんも中学を卒業する頃に癌で亡くなり、アウトドア趣味はあるにはあったが、一緒に楽しむ相手が居なくなったことで、することがなくなっていた。


「異世界の豚、おじさんと一緒に食べたかったなぁ……。獣臭いかとおもったけど、イヴの匂いに比べたら全然マシだし、野生の割に意外と甘い感じだな」


っていうかあいつらもこっちに来てるんだろうか、元の世界に残って元気にやっていれば良いんだけど。母さんもいきなり俺や犬たちが居なくなったら寂しいだろうし、あいつらだけでも元の世界に残ってくれてたらいいな。


「結局朝飯のつもりだったが、昼飯になっちまったな」


 夢中になって豚を追いかけているうちに太陽は登りきってしまった。


「今から何だっけな、ウエストロッドっていったかな? 其処に向かえば着くのは夕方くらいかな、牌を使えばもっと早そうだけど」


 疾風牌はアルヴィアールは10個渡してくれていて、残り9つ、1回で大体5分位効果時間が続くっぽい。

 フルで使えば1、2時間くらいでウエストロッドに到着するだろう。

 まったり歩いていくか、ささっと目的地に行くか少し迷う。


「使っていくか! そこにいけば俺がこの世界に来た意味が見つかる気がする」


 偶然にこの世界に来たのだとは思わなかった。

 これも、おじさんとの思い出の言葉なのだが、「この世界に生まれてきたものには必ず意味がある」俺は、この言葉が好きで、自分がこの世界に来たことにも必ず意味があるのだと信じていた。


 それに、job職業だ。

 アルヴィアールが6歳になったら当たり前にこの世界の人間は身につけるって言っていた以上、この世界で生きるためには、身につける必要があるはず。

 ウエストロッドに、job職業に就くことが出来る施設があるような事をアルヴィアールが言っていたので、街に早く到達することは絶対条件だ。

 疾風牌を使用しようと指に力を入れかけたときだった。

 地面が大きく揺れる。


「じ、地震? いやこの揺れ方は……」


 何か、大きなものが地面に落ちて揺れるような感じだ。地響きはその後も止まること無く間隔を置いて繰り返される。

 原因を探ろうと周囲を見渡すと、ここから遠くない場所で誰かが居て、火球のような物を打ち込んでいるようだった。


「あれって、もしかして魔法ってやつか? すげぇ、本当に魔法だよ! おおーっ!!」


 ついに目の当たりにする魔法スキルと思われし火球に感動して感嘆の声が漏れる。

 近くで見ようと思い、魔法をつかっている人物に近づいてみる。


「あれが魔法かぁ……ということはあの子は魔術師のjobなのか? よくファンタジーでみるローブみたいなの着ているし」


 魔法を打ち込んでいる人物は、漆黒の色をしたフード付きのローブに身を包んだ金髪に琥珀色の瞳をした小柄な女の子だった。裏地は表生地と違い暖色系の赤い色をしているっぽい。胸元のヴィンテージっぽい銀の留め具がいいアクセントになっていてカッコイイ。

 だが、険しい表情で不機嫌そうにヌメロドロ相手に打ち込む魔法は明らかにオーバーキルで、ド派手な閃光と衝撃にその度に地面が揺れる。


(どうみても、雑魚に使うレベルの攻撃じゃないよな、加減ができないのか? 隕石みたいなのめっちゃ落としてすげえ揺れるけど、おっぱいは揺れてない、Aカップだな)


 まず女の子と出会ったら最初に確かめるのは胸。体型のわかりづらいローブ姿でも俺にはそれがわかるのだ、俺はおっぱい星人だからな。


「……はぁ、出ないわね……」


 貧乳魔法少女が溜息を吐いて、攻撃の手を休める。

 ヌメロドロから何かを狙っている様子に、ハッと気がつく。


(あの子、これを目当てでヌメロドロ乱獲してるんじゃないか? 魔術師が欲しがるとか言っていたし、間違いないだろ!)


 この世界に来たすぐに手に入れたヌメロドロの結晶。アルヴィアールが高級品だと言っていたし、滅多に手に入らないレアアイテムなのだろう。

 探しているみたいなので、彼女と交渉すべく、声をかけようと近づいていく。


「おーい、そこのお嬢さーん、君が欲しいのってこれだよねー!!」

「はぁ……もう面倒くさいし、森ごと焼き払ってあとで使い魔に探しに行かせようかしら……、よし! そうしましょう!」

「……え゛っ?」


 もう諦めて狩りを中断したのだと思い近づいていったら、先程はまだあれでも手加減していた方らしく、彼女の周囲から紫色の火花の様な光が散って、それが片手サイズの杖の先端に集まって圧縮していく。

 本能的にこれは近づくのは危険だと感じて脳が震えるが、もう遅かった。


「そーれっ、クリムゾンノヴァ!!」


 これは死んだかもしれん、俺は死を悟った。


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