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スギボウの大冒険  作者: うああじた
ウエストロッド
3/20

3話 アルヴィアールとの出会い

「ニイさん、こないな奴さっさと倒してくれへんかの。檻の中は狭いは臭いはたまらんわ」

「人質の癖に随分適当言ってくれるな……ま、言われなくてもちゃちゃっと終わらせてやるぜ」

「ほぉ……見たところ武器も持たず丸腰のようだがどう我輩達を倒すというのだ? よほど腕に自信がある人間みたいだな」


 まるで捕らえられている実感のなさそうな関西弁の男をよそに、デューロックという緑色の怪物たちは、原始的な剣や弓などの武器を構えてはぞろぞろと集まってきて囲まれる。

 その中で他のデューロックと違い一人動物の骨や羽等の装飾品を身につけたデューロックに向かって、握りこぶしを前に出し、力強く呪文を叫ぶ。おそらくこいつがボスデューロックだと睨んで。


「ふっ、みてな。俺の超パワーを!! いくぜッ、うおるんぬんッしゃらべっぽッ!!!!」

「――――!!!!」


 それは夜の森の中で虚しくべっぽ……べっぽ……べっぽ……と木霊した……。

 沈黙の空気が痛い、静けさが虫の音と焚き火の音を引き立てた。

 しかし握りこぶしを構えたまま硬直する俺をよそに、デューロック達は警戒し続けていた。


「な、何が起きたのだ……小僧の見た目は変わらないし……強い魔力変化もなさそうだが……お前たちは大丈夫か?」

「ええ……なにも……ですが、奴の自信……時間差でなにかが起こる技かもしれませんよ! おかしらぁ!」


(あ、あれ……うおるんぬんじゃなかったっけ……? うおえんぬん? うおいんいん? やべっ……呪文忘れた……)


 術の不発に額から冷や汗を垂らしながら、失敗を悟られないように強気な表情を崩さないでいる、そこに、一人のデューロックが血相を変えて走ってきて、ボスデューロックに報告する。


「おかしらぁ!! た、大変ですゴーマーニ様が住む森が何者かによって消滅してました~っ!!」

「なんだとぉ? 我が兄弟ゴーマー二と連絡がつかないと思えば……そんなことが起きていたのかぁ!?」


 森が消滅という不穏な報告をする部下の話を一緒に聞いてハッとする、「それってあの森か……」と呟くと、察したデューロックの親玉の顔色が急激に血の気が引き怖気づくのであった。


「まさか……こ、こいつが今の術で、も、森ごと……な、なんて恐ろしい魔術なんだ……」

「にっ、人間の中には神の力を使うものも……稀にいるそうですぜっ……イオークいじめしか出来ない我々じゃ敵わないかもしれやせん……っ」


 このデューロックという種族は、どうやら信仰心が強く神の力といった類の物を恐れる傾向があるようだ。

 俺の未知の力に相当怯え始めている。

 それをみていた檻の中に閉じ込められていた関西弁の男が発破をかけ初めた。


「ほらほら、デューロックはん、長いものには巻かれろって言うやろ? わいを逃してこの人のご機嫌とっておいたほうが村の存続の為になりまへんかぁ?」

「ふっ……、俺は長いものなら切り刻んで短くするタイプだがなっ!!」

「ニイさん……、いまは黙っててくれまへん……? ニイさんのフォローしとるんやで?」

「すまん……」


 威勢をはったら、小声で注意されてしまった……。

 デューロックにはそれは聞こえていなかったらしく、耐えられなくなって、恐怖が限界になってしまったようだ。


「き……切り刻まれるッ……!!?? うわぁぁぁぁ!! 謎の力怖いよぉー!! びっくりどっきりどっきどきぃ~!!」

「おかしらぁ、置いてかないで下さいー!! びっくりどっきりどっきどきぃ~!!」


 デューロックたちは謎の悲鳴を上げ一目散に逃げ出していった。


「……なんだ、あいつら……びっくりどっきりどっきどきってなんだよ……」

「ま、デューロックなんか、基本みかけだおしぃや」


 デューロックの姿が完全に見えなくなり、見掛け倒しのデューロックというと、男は懐から拳銃をとりだし、金属製の檻を中からバンバン撃って破壊し自力で抜け出しやがった。

 一応鉄を加工する技術もこの世界にはあるみたいだな。


「なんだ、俺が来なくてもどうにかなったみたいだな」

「デューロックはこの辺では最弱の亡魔獣(ぼうまじゅう)やろからね」

「はぁ……じゃあ、なんで捕まってたんだよ……」

「おのれの松明(たいまつ)使うのがもったいなくてのお……節約術やでっ!」

「ドケチかよ」


 にっこりと微笑む謎の兄ちゃん、デューロックは、知的種族ではあるが大人しく抵抗できない者しか相手に出来ないいじめっ子レベルのモンスターなんだな……。

 そんなデューロックを良いように利用していたらしく、関西弁の兄ちゃんは改まって自己紹介を始めだした。


「わいは、商人あきんどのアルヴィアールや。助けに来てくれたことは嬉しく思うで。よろしゅうお願いしまんねん~」

「よろしくな、俺は杉木泰弘、あだ名はスギボウ、黒曜高校の3年だ」


 手を差し出され、握手をする。挨拶の仕草も日本式で、言葉もどうやら通じる。化物とは会話できるけど、現地人とは言葉が通じないとかだったらどうしようかと思ったぜ。

 アルヴィアールと名乗った男は、僅かに垂れ下がった目尻から年齢は俺より上そうだが、赤味がかった濃灰色の髪をツンツンさせた短髪は若者っぽい。服装も、ダメージデニムを着こなし、カッコイイスニーカーを履いていて都会っ子っぽい感じだ。


「スギボウね……で、スギボウはんは何のjobやろか? 武器も無しに外の世界に出て、勇気があるんやね」

「job? 学生だし今はバイトもしてないからまぁ無職かな?」

「や、学生とかやなくぅ、jobやで? まさかjobに就いてへんとかないやろ? 普通は6才過ぎたらjobに就くものやからな……」

「6才? 過ぎたら? job??」


 話が噛み合っていない、辛うじて言葉は通じるみたいだが、その内容に齟齬(そご)が生じている。

 jobと呼ぶものが何やら固有名詞で職業とは別に存在していて、それがこの世界では6才を基準になるものだという。ちんぷんかんぷんな表情をしていると、アルヴィアールが「まじかぁ」という表情で気を使い始める。


「スギボウはんは、記憶喪失やろか? それともこの国の人間ではおまへんとか?」

「うーん……ぶっちゃけそんな感じかもしれん……jobってなんだ?」

「ひえぇ……これは、どえらい人とであってしもたぁ……!!」


 オーバーリアクションで驚くアルヴィアール。

 ジョブとは何やねん!

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