訓練
宜しくお願いします。
「ふぅ、やっと一息出来る。」
「アク、気抜き過ぎよ。まだこれからが本番なんだからね。
一応言って置くけど今日の訓練負けたらあのgraciousで色々買ったり奢ったりして貰うから。」
「マジかよ…勘弁して下さい。」
Graciousとは信濃でも結構高いブランドが集まる店でキャシーはその中でもGWSと呼ばれるスイーツ専門店が大のお気に入りだ。
そんな亜久留の様子にキャシーがクスッと気付かれ無いように笑った。
しかし、その瞬間。
「Aki kotani control.exchange inducement to mission aria.contact 133.5」
(アキ 港谷コントロールです。訓練空域までの管制を交代します。周波数を133.5に変更して下さい。)
「Roger.」
(了解。)
指示された通りに周波数を変更する。と、
「Aki,this is kotani CIC.」
(アキ こちらは港谷高校CICです。)
亜久留はその声を聞いて何故か引っ掛かりを覚えた。
(この声、何処かで聞いたような…)
「今回、CICでは管制及び安全確認を担当させて頂きます。
まず事前ミーティングで指示された予定地まで飛行して下さい。当空域では民航機は飛行して居ませんが、万が一のため注意して下さい」
「了解。所定の位置まで飛行します。」
この交信の後、亜久留とキャシーの機体は左旋回をして指定されていた位置に着く。
そして亜久留は、「所定の位置に到着しました。」と港谷CICに報告する。
「―了解。相手機も到着したようなので訓練を開始して下さい。」
その瞬間亜久留はレーダーをオンにした。すると、相手機もオンにしたらしくこちらも察知される。
「一応IFF打っとくか。」
「そうね、これ訓練だから。」
MFDのレーダー画面には機影が白く写っていたが、すぐに訓練上の敵であるオレンジに変わった。
「さて、どうしようかな?」
「まさか…ノープランなんてことは無いでしょうねぇ?」
「えーとですね。それが…」
「もうそれ以上言わなくても分かったわ。じゃあ奢り決定。文句、クレーム一切受け付けないから。」
(―おっとそれが有ったか。だから…これに負けたら俺、金銭的に死ぬ。)
「はぁ…頑張るしか無いか。」
亜久留はそう言い、前から来ている機体とヘッドオン状態に持ち込む。
相手機もそう考えたらしくそのまま進入してくる。レーダーでは相手機をロックオンしており、相手も同様だ。しかし、ミサイルを撃つにも距離が足りない。よって相手機と自機は交差した後直ぐにそれぞれ左旋回を開始、背後を取ろうとする。が、
(まずい、速度を誤ったかも。)
(何やってるのよ!こんなの旋回後相手機に機首を向けられて即終了じゃないの。)
案の定相手機に斜めから機首を向けられ、背後を取れる様に互いにまた旋回、結果やはり最初でミスをした亜久留が背後を取られる。よって後方からロックオンされ撃墜判定となった。
「……あ。」
「兄さ―アク、港谷CICです。時間の関係上離脱し、ベースに戻って下さい。」
心無しかその声は怒気が少し孕んでいる様にも思えた。
「うん、いつもの事だしな。」
そう言い港谷高校に戻って行く。
最後まで読んでいただき有り難うございました。