金の乱入
今回も宜しくお願いします。
キャシーの待つ宣言から程なくして。
「お、やっと来たなあいつ。周囲を警戒しながら入って来たぞ。」
「そうねえ。まだ私には気付いて居ないみたいね。」
キャシーはその様子を楽しげに観察している。
(もう流石にキャシー殿は帰ったでござるな)
ミハエルは自分の席へと向かう。
「ふぅ。やはりこの席は落ち着くでござるよ。」
「そうなの?落ち着く座席は人それぞれだから良いのだけれど。」
「そうなのでござるよ―って…え!」
もう待ちかねた、と言うようにキャシーはミハエルの座席に来てしまったのだ。
「ななな何ゆえ此処にいるのでござるか?」
「その前に一つ聞きたい事があるのだけれど、さっきは本当に私に気付かなかったのよね。」
「全く以て気付かなかったでござる。」
そんな二人の会話に亜久留は人知れず溜め息をついた。
(二人共白熱しているみたいだから、俺はさっさと格納庫に行くかな。)
亜久留は一人格納庫へと向かった。
格納庫では双発・単尾翼で機首はシャープだが、どことなくずんぐりした印象を持つT-10が何機も駐機している。
「さて、どんなもんかな?」
亜久留はピカピカに磨かれた機体の周りを一周しながら確認する。
一応T-10は訓練機なので複座であり操縦にはサイド・スティックを使用する。だが、この機体は訓練機のはずが実弾も搭載出来る為、機関砲の為の穴も空いている。
「大丈夫そうだな。今日も頑張ってくれよ!」
彼が乗る機体を軽くポンポンと叩いたあと、格納庫に隣接している建物に入って行った。
この建物では今日行われる訓練の内容を確認するミーティングが行われていた。
「今日使用する滑走路はK01L、K01Rは民航機が使用するので注意するように。又…」
「今日は北風なんだな。」
「その様ね。」
「てか、結局お前がパートナーかよ。ミハエルはどうした?」
「あの人ならあそこに居るわ。どうにかなったみたいね。」
確かにミハエルは他の人を見つけられた様だ。
「適当だな~」
「何か文句があるなら言ってみなさい?」
「いえ、何でもありません。」
「なら良いわ。」
「―以上でミーティングを終了する。全員格納庫へと向かえ。」
皆ぞろぞろと格納庫に向かって行く。
今日の二人の割り振りは亜久留が前で操縦し、キャシーが後ろでアシスト兼監督役となった。
二人で(亜久留は二度目の)機体外部チェックを行い、問題点が無かった為コックピットに乗り込む。
乗り込んだ後はエンジンスタートを開始した。その直後、
「Aki,aki,this is kotani grownd. 」
(アキ、アキ、こちらは港谷グラウンドです。)
「Kotani ground this is aki,go ahead.」
(港谷グラウンドこちらはアキ、どうぞ。)
「Taxi to runway 01L」
(滑走路01左への走行を開始しなさい。)
「Roger. Taxi to runway01L」
(了解、滑走路01左への走行を開始します。)
「では行こうかキャシー。」
「そうね、アク。」
アキ…亜久留とキャシーのハンドルネーム