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今回もよろしくお願いいたします。
空母 準鷹 無人航空機管制室
「発艦準備完了しました。」
「よし、任務を開始する。UAVNo.7,8は発艦後情報共有網を元に安羅へと急行せよ。」
「了解」
そして2機のQA-2はカタパルトNo.1,2から発艦した。
「発艦完了しました。このまま安羅へと急行します。」
そう報告すると、操縦要員達はスラストレバーを前に倒し推力を上げ、安羅へ向かう。
しかし所詮攻撃機のためそこまで速度が上がらない。
攻撃隊が着くまでは時間の問題だった。
都市艦 信濃 官邸地下作戦室
「空母準鷹艦隊は今どうなっている?」
「はい、project artificialの人工島〔安羅〕―ではなく―ATF01付近にてEACUと交戦中です。」
「そうか……そろそろ例の作戦を指示してくれ。」
「ハッ」
(EACUめ……掛かったな。)
空母 準鷹 亜久留の寝室
「ピロロロ、ピロロロ、ピロロロ」
「…スースー」
「ピロロロ、ピロロロ、ピロロロ」
「スースー」
「ピロロロ、ピロッ『只今電話に出ることが出来ません。伝言を残される方はピーという音に続けてお話しください。ピー』」
『あ、亜久留さん。今朝早くにすみません。あっ、司令の由奈です。緊急招集が掛かっているのでなるべく早めに来てください。ちょっとキャシーさん。何やってるんですか!ああっ、日和さんまで!待って下さいよぉ~あ、またかけ直します。では!』
「ん……スースー」
その時、廊下から何やら「ドタドタドタッ」という音がしてきた。
やがてその音は亜久留の部屋の前で突然止み、「ハァ…ハァ…」という声が聞こえてきた。
しばらくして(と言っても数十秒の出来事である。)、「ガタン!」と部屋のドアを壊す勢いで開けながらどこぞのイカツいヤンキーだよ、と言いたくなる歩き方で歩く金髪ACMバカ娘が入室してきた。
「おはようアク。貴方ちょ~っと起きる時間遅すぎやしな~い?」
「……ん、おはよう。その声は…歩く金髪ACMバカじゃなくて―金のACM野郎でもなくて―キャシーか。……ん?キャシー?ってえ!」
寝惚けていた亜久留の脳が起動すると、今の状況がやっと理解出来るようになってきた。
「……誰が金髪ACMバカ野郎ですって?」
キャシーの顔は笑顔だったがその頬は引き吊っていた。
「あ……」
亜久留はこの時、無意識とは言え(むしろその方が酷い。)自らの失言を悟った。
「あ~っといや~そのぉ~」
「ん?」
亜久留は冷や汗でだくだくになり、キャシーの笑顔はもう頬を引き吊らせているものでは無かった為、もはや恐怖そのものだった。
「……スミマセンでした。」
キャシーは溜め息をつくと、「もういいわ。」と呆れ顔で言った。
「アク、早く支度しなさい。司令が呼んでいるわよ―って留守電聞いて無かったでしょ。もう!」
「あ~寝てたから聞いてなかったわ。じゃあ一旦部屋を出てってくれないか?」
「どうして―っていうのも野暮ってものね。では廊下で待っているわ。」
キャシーはそう言うと、部屋から出ていった。
「さて、と。」
亜久留はドアの鍵を閉め(勿論静かに。)、部屋から周辺にかけてノイズキャンセリングを起動させ、全体的に電子攻撃機にも劣らないと言われている強力な電波攻撃とレーダーによる索敵を行った。
(もうこれで何かを聞かれることも誰かに入られる事もないな。)
亜久留の隠蔽技術はほぼ完璧に出来ており、異常があればセンサーが感知し侵入出来ないようになっているのだが―
「んで、何故ここに日和と司令が居るのですかね?」
―しかし、この2人は違った。
「あの、えっと、いや、その、余り他の人には聞かれたくない内容を話しに来たんです。」
「私も由奈司令に誘われて―と言うより補佐役で来ました。」
亜久留は不思議に思い、ド直球に質問した。
「何ですか、ハッキングでもしましたか。」
「「………」」
結果は―黒だった。
そう、完璧と思われた亜久留の装備は事前にハッキングされていたのだ。
「はぁ……で、一体何の任務ですか?」
「えっと、とにかくこれを見てください。」
そう言うと、由奈はある一通の封筒を取り出した。
「?」
(何だ?異動命令でも下ったか?そりゃそうか、訓練生の癖に撃墜してしまったからな。)
亜久留はおそるおそる封筒を開けると、2通の通知書が入っていた。
(はぁ……さて、何処に異動だ?信濃区画2,3?それとも潜水艦?)
一応港谷高校のパイロット達は全員垂直離着陸機の操縦訓練を受けている。
「え~と、どれどれ?」
亜久留は早速、通知書を読み始めた。
「………」
「「………」」
亜久留の紙をめくる「ペリッ」という音だけが部屋に響く。
「………」
「「………」」
「……っ」
亜久留の今まで真剣だった眼差しが一瞬、曇った。
「……その通知の通りです。」
由奈は目を伏せながら言った。
「……作戦実行日は何時ですか?」
そう言う亜久留の声は少し震えていた。
「……明日の05:00A.M.に打ち合わせ開始予定です。」
「そうですか……了解しました。」
(クソッ、信濃司令部もどうかしている。)
EACU所属空母 山東艦内 強襲作戦司令室
「浙江強襲揚陸作戦部隊の様子はどうだ?」
「どうやら展開完了したようです。」
「ふむ、では本隊に上陸指示を。」
「是」
EACU所属 強襲揚陸挺艦内 上陸作戦本隊
「只今、司令部より上陸指示が入った。各自準備しろ。」
「「是」」
直後、軽い衝撃と共に揚陸挺が人工島に着岸した。
艦首にあるドアが前に倒れ、揚陸挺と人工島を繋ぐ橋の様になった。
その橋の上を武装した上陸部隊が小走りに渡っていく。
「よし第一、第二小隊は島東。第三、第四小隊は島西に展開しろ!」
本格的な占領作戦が始まった―
空母 準鷹艦内 亜久留の部屋
「………ハァ」
亜久留はさっきの出来事を思い返していた。
『一応打ち合わせの時にもお話ししますが、使用する機体は前回同様F-12。兵装は対空ミサイル×2,対艦ミサイル×2,滑空誘導爆弾×2の計6発。
任務内容としては、先程の通知書の通りです。』
『はい。』
『その他に何か質問はありますか?』
『……いえ、特には。』
『そうですか……では、また明後日打ち合わせの時に。』
『………』
そして、もう何度目だろうか。渡された通知書を読み返していた。
(EACUだけならまだしも……)
因みに通知書の内容はこんなものだった。
1、現在建設中の人工島にEACUの艦船が接近していること。
2、恐らく艦船の種類からして揚陸部隊であること。
3、揚陸部隊が上陸していようがしていまいが人工島を沈めるさせること。
4、人工島にはまだ人が残っている可能性があるが、構わず沈めることを最優先すること。
5、EACU所属の艦船を発見した場合、民間だろうが軍艦だろうが構わず沈めること。
等、さまざまなな事が書かれていた。
(……っ民間人には何も罪は無いのにっ……)
「亜久留さん……」
現在、亜久留の部屋の男女比は1:1―つまり亜久留が一人、誰か女子が一人と言うことになる。
亜久留の隣に座っている夕日の光に当たって髪が黄金に光っている様にみえるが……果たして―
「亜久留さん、ここ、使って下さい。」
その女子は少し恥じらいで頬を赤く染めながら自分のフトモモを指しながら言った。
「あ、いいですそういうの。」
「……まぁそうだよね。いきなり押し掛けてきてこう言われたら誰だってそうなるよね。」
「大半のひとはそうなると思いますけど…一部の―と言うより命知らずを除いて。」
「……デスヨネ―」
「はい。」
「―って普通に会話してましたけど誰ですか貴女は?」
「今更だね~亜久留君よ。この私を忘れたか。」
「本当に誰ですか?」
その女性は何か含んでいるような笑みを浮かべている―
空母 準鷹 無人航空機管制室
「UAV7,8〔安羅〕上空に到達しました!」
「了解、状況は?」
「映像では先程と何も変わっていません。」
「そうか……」
その時だった―
『Warning,warning.Network disconnected.』
と、ディスプレイに表示された。
「え……」
管制室内の時間が停止した―
潜水艦とパイロットの関係…皆さんお気付きだと思いますが、一応言いますと、潜水艦の後方にSTOVL機専用の滑走路があるため、空母から潜水艦への異動もあります。(本当に数少ない例ですが。)