UAV
今回もよろしくお願いいたします。
都市艦「信濃」の南方沖約300km、空母「準鷹」の東沖約150kmにあるプロジェクト【アーティフィシャル】こと、人工島「安羅」
この島は都市艦である信濃の後継として造られた人工島であり、今後信濃に暮らしている人々の永住の地として使用される。
そんな安羅に複数のホバークラフトが乗り上げ、武装した人々の影が人工島の地を、踏み込んでいく―
空母準鷹所属 E-4AWACS 機内
E-4AWACSとKC-4の2機は当番制で朝~昼、昼~夜、夜~朝と空母周辺を周回、監視している。
大体夜~朝には何も起こらない言わば無駄な監視と昔から呼ばれるほど何も起こらなかった。
今回も何も起こる気配がしなかった―
「ふぁぁぁ。今日も何も起こりそうに無いな。」
「こら、一応今も任務中だぞ、しっかりしろ!」
「だって……本当に何も無いじゃ無いですか。」
「ぐ……でもここ最近色々あるから何か起こらないとは限らないだろ。」
「はいはい分かりましたよ。」
(絶対何も来ない。断言出来る。本当これやる意味あるのかなぁ?)
E-4のオペレーター達はそう思いながらレーダー画面をぼんやり見ていたその時―
「レーダー反応あり!国籍不明機計6機と推測。機種は現在特定中です!」
「了解、直ぐに準鷹、信濃に通達。データリンクにもこのデータをアップしてくれ!」
「は!」
(本当に司令部からの通達通りに現れるとは…)
空母 準鷹 航空団司令室
「何ィ!?国籍不明機が6機出現しただと!」
つい由奈は素に戻って大声を上げていた。
「はい。E-4からの報告によると先程急激に現れたと。」
「その情報は確かなんだな?」
「ええ。」
(国籍不明機は多分EACUの機体。でも、機種が分からない以上どうやって沸いたかが分からない。もっと詳しい情報が入るまで待つしか無い。)
E-4AWACS 機内
「レーダー波照合完了しました!」
「それで、機種は何だったんだ?」
「それが…」
「―っ!」
「それが―F-40しかも北アメリカ統合所属機です!」
「な、何故UNAIが介入してきたんだ…?」
空母 準鷹 航空団司令室
「機種のデータが入りました!」
「機種は何だ?」
「UNAI所属―F-40です!」
「は……?EACUのJ-22の間違いじゃ無いのか?」
「いえ、間違いではないと。」
(今回の件、EACUはともかくUNAIは介入しても利益は無いはず。それどころかUNAIの人工島もほぼ完成に近づいている。だったら何故…?)
「無人航空機部隊発艦用意。偵察任務に向かわせる。但し自衛用に対空ミサイルの搭載を要請して。」
「了解しました!」
空母 準鷹 格納庫
「QF-1に出撃命令が下った。直ぐに対空ミサイルを搭載させろ!」
「「はい!」」
空母 準鷹 飛行甲板
「今ここにいる全機の発艦準備完了しました。」
「よし、カタパルトNo.1,2その2つからの同時発艦を開始、事実確認を行う。尚、相手から交戦を吹っ掛けてきた時には、交戦規定に従い対処せよ、とのことだ。」
「全デッキ・オペレーターに告ぐ、QF-1を発艦させよ。」
空母 準鷹 無人航空機管制室
「たった今、QF-1の出撃命令が下された。任務内容は―」
QF-1の操縦要員達は、自分を取り囲む様に設置された画面と、サイド・スティック等で構成される個人用管制卓に向かい合う形で座りながら今回の任務内容を聞いている。
「―と言うわけだ。その他質問があるやつは居るか?」
特には無いようだった。
「よし、では始めようか。」
「「は!」」
空母 準鷹 飛行甲板
飛行甲板ではQF-1がカタパルトに移送、発艦の為にカタパルトを付ける作業が行われていた。
ちなみにQF-1は空母に乗せられたUAVとして初めて実戦を行った機体である。
今回はあくまでも機体確認等の軽い措置のため有人で行われるが、空中戦の場合は、人工知能が判断して行う。
しかし、空中戦とはいえ、レーダーでの索敵や敵味方機の判断までは人が行い、そこから先は全てAIによる戦闘となる。
まだ発艦~戦闘~着艦を全てAIが行う日はあと3~5年先の話である。
そして―
空母 準鷹 無人航空機管制室
『発艦準備完了、後はお願いします。』
「了解しました。ご苦労様です。」
オペレーターは上にある甲板からの連絡を確認すると、発艦前の最終チェックを始める。
(補助翼、方向舵共に問題なし。)
サイド・スティックを前後左右に動かすと、甲板上の機体がそれに呼応するように翼端が動く。
オペレーターは正常に作動しているかどうかを、カタパルト付近に埋め込まれたCCDカメラの映像を画面に映し出して確認する。
しっかりと作動したことを画面上で確認すると、オペレーターはコンソールの脇にあるスロットル・レバーを最大推力になるまで前に倒す。
すると、エンジンの回転数を示す値が上昇する。
同時にサイド・スティックを手前に倒し、カタパルトから離れた直後に上昇出来るようにしておく。
発艦可能な回転数まで上がったことを確認するとオペレーターはコンソールにある『発艦』ボタンをタップした。
甲板にいる機体が電磁カタパルトによって勢い良く空に打ち出された。
その姿は何処か冷たく、何も寄せ付けない。そんな雰囲気があった。
QF-1…無人戦闘用航空機。陸上配備型と空母配備型との差はあまりない。