Project artificial
遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
「あの…どうしてキャシー様が俺の部屋にいらっしゃるんですかね…」
「さあ?アクは何も聞いていないの?と言うより私の方が色々聞きたいことがあるのだけれど。」
「いえ…それは…その…何でしょうかねぇ…」
亜久留はサウナから出て来たのか、というほど汗だくになっている。
「何故アクは空母に配属されたのかしらね?後、何故何も言わず出て行ってたのかしら?その理由を―」
その時だった―
「亜久留さ~ん先程はお疲れ様でした~」
「げっ日和!?ってかキャラ変わってるぞ!」
「ねぇアク、その子は?」
「あれ、亜久留さん…その金髪ひ〈プライバシー保護のため、放送出来ません。ご想像にお任せします。〉野郎は…亜久留さんの…何なんですか…?」
日和の―目から―光が―消えていた―
「ヒイッ!?」
(ヤバイヤバイヤバイ、このままだとマジでひでぇ殺され方をされかねない。具体的には、A/Bに焼かれ、その後、何処かの海に棄てられるといったような感じだな。)
「あらやだ、私そこまでひ〈プライバシー…以下略〉じゃ無いわよこのデカ〈プラ…以下略!〉女。」
「まあ…亜久留さんの…一番は…私…ですからね…問題…ありません…よね……」
「はっ…はい!ええ、勿論その通りでございます日和様!」
(ひぃぃぃぃぃぃ怖ぇぇよぉぉぉぉぉ誰かヘルプミー!)
「でも、私はアクとあんな事やこんな事もした仲よ。まぁ、貴女はそこまでは行っていないようだけれどね。」
(ちょっと何事実無根なこと言っちゃってんのこの人。変に対抗心燃やさなくて良いのに。)
「ちょっと一旦落ち着こう君たち。俺から二人とも説明するから。」
「「ちょっと黙ってて(ってなさい)!」」
「申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ」
亜久留はほぼ、半泣きの状態に成っていた。
(何で俺だけこんな酷い目に遭わなきゃならないんだよ、不公平だ、理不尽だ、もうやだ、こんな生活。)
亜久留は
180°方向転換すると、これまでに無いスピードで駆けて行った。
「「あっ!?」」
二人共亜久留を追い掛けに部屋を飛び出した。
「おいアク!何処だ!」「亜久留さ~ん何処ですか?」
二人が廊下を駆けていく、しかし、二人とも気付いていなかった。今までに通った所の何処かに亜久留が潜んでいたことを。
(あっぶねえ~もうちょっと遅かったらマジで捕まってたかも。しかし、このあと如何にしてあいつらから逃げるかねぇ?)
亜久留は大きな溜め息をついた。
信濃 官邸地下作戦室
「ほぅ、J-31を撃墜したのか。あの亜久留とやらが。」
「はい、これで彼の実力が少し露になりました。」
「それもそうだが、ついにEACUが我々の【アーティフィシャル】に介入してきたな。今後奴等はどう出ると思うかね?」
「この画像を見てください。」
すると、スクリーンにある1枚の衛生画像が映し出された。
「これは…」
「ええ、【アーティフィシャル】周辺の海域にいるEACUの艦隊です。」
「強襲揚陸挺×1、イージス駆逐艦×2、高速補給艦×1、あと、潜水艦×2か、と、言うことは―」
「―もうお気づきの通り、そろそろ本格的に上陸作戦に乗り込んで来るのではないかと予想されます。」
「そうか……よし、準鷹に対地、対艦任務が直ぐに出来るよう待機させろ。又、イージス艦と潜水艦を準鷹の護衛として派遣させろ。」
「了解しました。」
(EACUめ…何時これに掛かってきても大丈夫な状態に整えといてやる。)
しかし、この時まだEACUの艦隊を全て調べ切れてはいなかった―
準鷹 艦長室
「それで、信濃司令部からの通達は以上か。」
「はい、それ以外の通達は来ていません。」
「そうか……」
「艦長?」
「いや、何でも無いわ。では、JASSM、マベリック、JDAMを準備するよう兵器科に伝えてくれる?」
「はい。」
(いよいよ本格的に戦闘が始まる…なるべく犠牲者は減らす様にしなくては…)
久留美は改めて気を引き締めた。
準鷹 航空団司令室
「た、対地/対艦せ、戦闘よ、用意ですか?」
「はい、由奈司令。」
(何かこの状態だと、話し難いな。)
「そ、そうですか……。」
「……」
何となく気まずい空気になってしまった。
「とりあえず、まだ戦闘命令は下っていないので大丈夫だと思いますが。 」
「そ、そうですよね……。」
「……」
やはり、会話が、続かなかった―
EACU 強襲作戦司令部
「都市艦―信浓からの分隊は確認出来ていないんだな?」
「是。現在の所、人工島―浙江周辺に信浓保有艦隊は確認されませんでした。」
「よし、明日、05:00に強襲揚陸部隊を派遣、上陸させる。
同時に支援機としてJ-22に対空ミサイル、J-31に対艦ミサイルを積ませろ。」
「是。しかし何故また対艦ミサイルを積ませる必要があるのですか?」
「幾らまだ見つかっていないとはいえ、奴等がこの海域に潜んで居てもおかしくない。」
「もし見つけられればその場で撃沈、見つからなければそれはそれで問題ない。まぁ要するに保険だよ。」
「……」
「そこまで硬くならなくて良いから。力抜いておけよ。」
「……」
EACU所有艦内 兵器科
「J-22,J-31発艦準備を開始!J-22に対空ミサイル、J-31に対艦、対地ミサイルを搭載しろ!分かったな!」
「「是!」」
EACU所有艦内 飛行班
「―以上が上層部からの指令だ。各自出撃準備せよ。」
「「是!」」
EACUの下士官達の士気は最高潮に達した。
EACU所属空母 山東
まだ太陽の日が昇らないうちに空母山東の甲板にはエンジンのキィィィンという高周波の音が鳴り響く。
艦載機J-22とJ-31のパイロット達の顔は、緊張と、不安と、期待に満ちた表情をしている。
今、2機の機体が艦首の右と左に並行して発艦待機をしている。
EACUの空母は、準鷹等と違いSTOBAR方式を採用しているからだ。
彼らパイロットの目の前には反り上がったスキージャンプ台が天に向かって彼らを任務の成功への道を示している、そんな様にも思えた。
そしてその道を辿るように、力強く、スキージャンプで金メダルを獲得するかの如く、A/Bの炎と共にスキージャンプ台を掛け上がった。
もうすぐ運命の朝がやってくる―
STOBAR方式…スキージャンプ台により発艦し、アレスティング・システムにより着艦する方式。