空中戦
遅くなりましたが今回もよろしくお願いいたします。
『あー、ヒウラ、ヒウラ、ホーク。敵機、4シップス、オールエアクラフトJ-22。』
『了解』
その時―
データリンク表示していたMFDに何か白い点が隊長機から発射された。
(何だこれ?)
『ヒウラ、ホーク。囮の発射を確認、状況により交戦を開始せよ。』
(あ~なるほどね、こいつを撃墜すればそれを口実に落とせる訳か。)
数分後―
(は?マジで撃ち落としちゃったよこの人達。何?このまま交戦するのか?)
その時、亜久留は何故か艦長室で話された言葉を思い出した。
「今、我々がこんな所に派遣されているのには理由があります。」
「はあ。」
「私達はこれからも信濃で過ごしていくのは不可能だというデータが出たのです。そこで上層部は新たに人工島の建設を始めました。
しかし、EACUはその事を知るやそれを奪取しようと考えたのです。」
「要するにEACUから人工島を護る為に我々は派遣されているのです。」
『ヒウラ、ホーク。デコイの撃墜を確認、例の物の使用を許可する。』
『ヒウラ03、ヒウラ04、ヒウラリーダーだ。我々は前方のJ-22を撃墜する。03、04は後方2機をやってくれ。』
「了解」『了解』
『アク、ジュオだ。君はF-12の隠し武器については知ってるか?』
「いえ、何も。」
『そうか…まあ無理もない。いいか、そのF-12にはAIM-54Sが積まれてる―』
(え?マジか。)
『―撃ち方はふつうのミサイルと同じだから心配は無い。後はリーダーの指示に従え。以上。』
「了解」
(確か後方のJ-22だったよな。よし!)
亜久留はすぐさま安全装置スイッチをONにすると兵装を“AIM-54”に変更、するとレーダーが作動し、3機目を
ロックオンする。
敵機からすると、今まで4機だった機体が急に5機になった上に、その1機が突っ込んで来たから撃ち落としたら、まさかのデコイで、その直後にロックオンされるという事態になっていた。
(照準よし、兵装問題なし、安全装置ON、よし。)
「フォックスワン!」
その瞬間、亜久留はサイド・スティックのボタンを押した。
直後、機体の下から「ガチャン」と音がしてAIM-54が切り離された。
機体から切り離されたAIM-54は、自らミサイルのレーダーを起動、自ら目標に向かっていく。
亜久留は機体の下から延びていく白い煙を見て本当に発射されたのだと実感した。
このままだとこちらも撃墜されてしまう為、一旦戦線から離脱する。
MFDに映し出されたデータリンクの画像にはどんどんと敵機に迫っていくミサイルの姿がある、そして―
『ヒウラ、ヒウラ、ホーク。全機体の消失を確認。撃墜したものと思われる。』
(ふぅ、何とか撃墜したけど…)
MFDに3機の機影が不意に現れた。
『ヒウラ、ヒウラ、ホーク。ニューボギー、スリーシップス、エアクラフトJ-31!』
『J-31!?…了解』
(J-31だと!?嘘だろ!?そんなことがあるわけ―)
『―ボギー、ブルズアイ0-9-0、エンジェルス20』
(散開!)
亜久留は隊長機から送られて来た指示に従って左に機体を傾けた。
今まで水平だった景色が右に流されていく。
その時だった。
(クソッ!ロックオンされた!)
亜久留のMFDには〔warning,LOCKED ON〕と表示されている。
直ぐ兵装を“AIM-120”に変更、ロックオンし返す。そのまま―
「フォックス、ワン!」
とミサイルを放っていた。
機体をドン、と揺らした後、白い煙が延びていく。
相手も放ったらしく、小さな赤い点が自機に向かって来ている。
(まずい!EPモードにしなきゃ!)
サイド・スティックのスイッチを上にずらし、EPモードにする。
(間に合わない!)
亜久留にミサイルが迫って来ており、シーカーを破壊することは最早不可能だ。
「グッ」
いきなり亜久留は機体を右に大きく傾け―ギリギリの所で回避した。
「ハァハァ」
しかし、相手もミサイルを回避したらしく又正対する位置に来ている。
(兵装をAIM-9に変更、最悪ガンを使わないとな。)
ミサイルを“AIM-120”から“AIM-9”に変更、ほぼほぼACM戦に入ろうとしていた。
(よし、そのまま向かって来い!)
亜久留は敵機が射程に入るのを待っていた。
(掛かった!)
レーダーが敵機をロックオン、もう準備はほとんど整っている。
亜久留は機体を180°ロールさせて、主翼の前縁を下ろし、前縁の吹き出しを強くした。すると―
「ぐっ」
―勢い良く下に吹き飛び、高度を案外失ったが、相手の機体を目視出来た。
機体をまた180°ロールさせ、前縁と吹き出しの強さを元に戻す。
(よし、このままインメルマンターンを決める!)
亜久留はエンジンのA/Bを全開にし、機首を引き上げ、180°ターン、又180°ロールを行い、相手機の後ろに着いた。
レーダーがまたロックオンした。しかし今回はシックス・オクロック・ハイ―つまり、相手の真後ろ上方から狙っているのだ!
(ここなら確実に仕留められる。いくぞ!)
AIM-9の赤外線追尾レーダーも作動、そして
「フォックスツー!」
機体の右から白い煙が延び、発射されたミサイルが吸い込まれるように近ずき、そして、命中、前にいたJ-31が炎と共に爆散した。
同時にレーダーからも2機消えていた。
AIM-54S…昔、アメリカ軍が開発したF-14トムキャット専用の超長距離ミサイルの小型版。
性能はさほど変わらないとされている。