友梨のある日
宜しくお願いします。
亜久留が空母で色々としている頃、家では友梨が亜久留の不在という事実に慌てていた。
「兄さん朝ですよ~!早く起きて下さ~い。」
当たり前だが亜久留からの返事は無い。
しかし、何も知らされていない友梨は不思議に思って亜久留の部屋へと向かう。
友梨は彼の部屋のドアの前に立つともう一度呼び掛けた。
「兄さんいい加減にして下さい。本気で学校に遅れますよ。」
やはり当然ながら亜久留からの返事は返ってこない。
友梨は本気で何かがおかしいと思い、遂に亜久留の部屋へと突入する覚悟を決めた。
「失礼します…」
恐る恐る友梨が部屋に入っていくと―
「―!?」
居るはずの亜久留が居なかった。
(あれ!?兄さんが居ない?)
(今日はたまたま朝早く行ったとか?いやいや無い無い。
だって夜更かし、寝坊、遅刻、の常習犯だよ。絶対あり得ない。)
その時だった。
「うわっ!」
いきなり友梨の端末がメッセージを受信して鳴った。
「なんなのよいきなり、もうっ。」
しかし、メッセージを読んだ瞬間友梨の表情が固まった。
「嘘…どうして…」
そこには亜久留の乗艦の事が書いてあった。
今日は亜久留も居ない為、バスで高校に向かった。
何となくどんよりした雰囲気を醸し出している友梨に、誰も近づこうとはしなかった。
高校では、普段通りの授業だったのだがいつも以上に身が入らなかった。
(何故兄さんだけが空母に乗らなきゃならないんですか?
とてもおかしいじゃないですか。)
「友梨ちゃん。」
友梨にはその言葉が耳に入っていない。
(やっぱりおかしいです。絶対的に何かが間違っています。)
「友梨ちゃん!」
「ひゃっ!」
「大丈夫?なんか今朝から様子がおかしいけど。」
そう声を掛けてくれたのは柳瀬詩織だ。
「ごめんごめん。ちょっと考え事をしていただけだから。」
「何?考え事って。もしかして…お兄さんのこと?」
友梨の顔が真っ赤に染まった。
「そそそそんなわけ無いでしょ!あのバカの心配なんて―ってあ~っ!」
「ふ~ん、そういうこと。」
「なにニヤニヤしてるのよ!」
「いや~恋する乙女は難しいですなぁ~って思ってさ。」
「誰が恋する乙女かっ!」
「いいのよ別に我慢しなくても。だって貴女たちは義理の兄妹だからギリチョンセーフよ。」
「だからそんな気は無いって言ってるでしょう!」
「精々美咲先輩には気を付けなよ~じゃないと盗られるかも知れないよ~」
「別に良いわっ!」
そう言い残し詩織は行ってしまった。
「はぁ…兄さん…」
友梨は複雑な思いで窓の外を見続けた。
午後の授業はシミュレーターを使った訓練だった。
シミュレーターを使った訓練というのは、学生が作戦指揮官になり講師がパイロット役になり状況に合わせてレーダー画面が変わるようになっている。
「―CIC,kotaniCIC!」
「はっはい、こちら港谷CIC,デルタ1どうぞ。」
「さっきからずっと呼び掛けているのだけれど、本当にやる気ある?」
「すみません…」
「まあ良いわ。では訓練を開始します。」
そして―
「やっと終わった~」
「おつ~友梨たん。何か今日いつも以上に疲れてるように見えるけど。」
「ううん、大丈夫だから気にしないで。」
(はあ…今日の私どうしちゃったんだろう?)
帰りにはリニアを使って帰った。
「ただいまです、兄さん!―って居ないんでしたね。」
誰も居ない我が家を見て思わずため息をついた。
(こんなにここの家って寂しかったっけ?)
早速夕飯の準備に取りかかるがイマイチ気力が入らない。
その後の風呂掃除や洗濯などにもやる気が無くなっていた。
(本当にどうしちゃったの私…)
「もう早く寝よう。」
しかし全然寝付けることはなかった―
最後まで読んでいただき有難うございました。