亜久留 空母に降り立つ
今回も宜しくお願い致します。
空母【準鷹】
全長約1200メートル級の標準的な空母だ。
何故1200メートル級かと言うと輸送機/早期警戒機に737クラスの機体を積んでいるからである。
空母の発着艦はCATOBAR方式を採用している。
今、その準鷹は信濃の東南約250kmの沖合いである任務の為に航海をしていた。
亜久留は今、艦長室で高堂久留美と二人きりで向かい合って座っている。
「ようこそ、私の準鷹へ。」
「…え?」
「今日から君には空母に慣れると共に実戦、とまでは言わないけれどそれに近い訓練をしてもらう。」
「いやいや、ちょっと待って下さい。何故あなたがここの艦長席に居るのですか。」
「いや何故って…私がこの艦の艦長だからですよ。察して下さい。」
そう言って久留美は顔をしかめた。
「で、君にこの空母に来てもらったのには最近EACUの動きが活発になりこの艦の人員不足に陥った為です。」
EACUとは東アジア共産主義連合の略で、元中国、朝鮮、ベトナム、ラオス、バングラデシュ、インドの人々で形成される国家で超大型都市艦を採用している。
「はぁ…」
「そして君は本来の力を隠しているのではなくて?亜久留君。」
そう、亜久留が過去に最強と謳われたキャシーをあくまでシミュレーターだが、撃墜することが出来たのもその力を使用したからである。
「何故今この話を蒸し返すのですか?」
亜久留は無意識に久留美のことを睨んでいた。
「あの力を使う事をしなくなった理由も分かっているでしょうに。」
「でもこれはこの信濃に、信濃の人々に関わる問題なんです。
それでも使用しないと?」
「では少し考える期間を下さい。」
「良いでしょう。なるべく早く良い返事を期待しています。」
そして亜久留は艦長室を出た。
何処へ行こうかなと少し考えていると一人話し掛けて来た。
「あの…新しく入ってきた方ですよね?」
「そうですが…何か?」
髪は薄茶色、ポニーテールでまとめており長身でスタイルの良い美少女が立っていた。
亜久留は不覚にも一瞬、目を奪われてしまった。
「私、佐久間日和って言います。日和と呼んで貰って構いません。」
「俺は七波亜久留だ、よろしく。」
「もし良かったら一緒に甲板を見に行きませんか?」
「飛行甲板を見渡せる場所なんて空母管制塔や航海艦橋、それに司令部艦橋以外に有るのか?」
「はい。記者の為に用意した報道専用艦橋が在るんですよ。」
「そんな所勝手に入って良いのか?」
「大丈夫です!記者が居ない間は勝手に使って良いことに成っているんで。」
「じゃあ、案内して貰える?」
「こちらです。」
二人は艦橋の3Fに着いた。
「此処です。」
「おお…これは圧巻だなぁ。」
窓から見える景色はとても迫力のあるものだった。
右側にはJBDが立ち上がっており、丁度今発艦準備をしているE-4の姿がある。
2基のギャート・ターボファン・エンジンを積み、しなやかな翼を持ち、前傾姿勢になっているその姿は鷹の様な雰囲気を醸し出している。
ふと亜久留はそんな事を考えているとE-4は少し跳ねる様な動きを見せ一気に加速、上昇していってしまった。
次に左を見ると着艦してくるF-11の姿があった。
航空機が着艦する際には失速ギリギリの速度まで落として進入してくるので、左右にヨレヨレと揺れながら降下する事になるのだが―
「うわ!端から見るとめちゃめちゃ危なっかしいな。」
「そうですよね。見ていてとてもヒヤヒヤしますよね。」
二人が会話している間にも機体は徐々に降下していきタッチ・ダウンした。しかし―
「あ~…ボルターですね。」
「ワイヤーに引っ掛かんなかったか。」
亜久留があちゃーと、額に手を当てた。
F-11はワイヤーにアレスティング・フックが引っ掛からず、着艦やり直しになってしまった。
最後に、亜久留は飛行甲板を見渡した。
所狭しと言わんばかりの機体の量である。
翼をお手上げといったように折り曲げているF-11,翼を180°曲げている(と言うより折っているが正しいかも知れない。)E-4/KC-4、さらにVTOL機であるV-30等も駐機している。
「やっぱスゲーわ、ここ。」
そんな様子を見て日和が微笑みながら訊いた。
「気に入っていただけましたか?」
「あぁ、とっても良い場所だ。」
「ふふ、良かったです。」
「本当にありがとな。」
亜久留は少し照れながら言った。
二人はその後、食堂に向かいランチとなった。
日和は亜久留の為に艦内を色々案内して回り、1日が終わった。
CATOBAR方式…カタパルトを使用して発艦し、アレスティング・ワイヤーで着艦させる方式。
電磁カタパルトを使用している。
E/KC-4…737クラスの姉妹機。 E-4は早期警戒管制指揮機、KC-4は空中給油/貨物輸送機。