緊張の着艦
今回も宜しくお願いします。
「―はぁ…はぁ…」
「お疲れ様。良くここまで頑張ったな。今日は明日に備えてゆっくり家で休むと良い。」
「はい。」
結局、亜久留は明日の本番に備えて座学を1からやり直し、フライトも慣れないIFLOLSを使用した訓練をみっちりとやり遂げたのだ。
「ああ、そうだ亜久留君、空母に持っていく荷物を義妹さんに見られる訳にはいかないから、あるボックスを用意しておいたからそこに着替えなり隠したいデータなり何なりと入れて置いてくれ。」
「……?」
彼は良く意味が判らず首をかしげた。
「まあ、入れてみれば分かるさ。但し今日、明日必要な服や貴重品は入れないこと。いい?」
「……はい。」
「よし!じゃあ今日はこれで解散!また明日!」
「さようなら…」
何なんだあのテンションの高さと言い、謎のメッセージといい全く以て意味がわからない亜久留なのだった。
そして、亜久留は自室に入ったすると…
「げっ!」
なんと、そこには、言われた通りのボックスが置いてあったのだ。
「んで、此処に色んな物を入れれば良いと。」
(これが空母に繋がっているって信じがたいよな?)
彼は半信半疑に為りながら必要な物を入れていく。すると、
箱の底が外側に開き、床の方へと落ちて行く。
ああ、と亜久留は納得した。
つまり、ボックスに荷物を入れると床の底が抜け、地下の荷物専用の通路に流れ込む。
その通路の先には輸送機が待ち構えており、輸送機を使って空母まで運ぶと言うプロセスになっている。
「成る程。だからあの人はボックスに必需品を入れろと言ったんだな。」
(さて、と。どうやってあの我が義妹に説明するかな。)
頭を抱える亜久留なのだった。
〈次の日〉
「昨日は良く眠れなかった…てかこの時間だから妥当っちゃ妥当か。」
そう、現在の時刻は[AM04:30]だ。
「―結局家の義妹にどう伝えるか考えている間に寝落ちしてしまった!」
しかし、今の亜久留に時間はない。
「はぁ…もうどうでも良いか。」
遂に彼は覚悟を決めた。
「さぁ彼女には黙って行こう!」
そう言うとダッシュで家を出た。
家をダッシュで出てから数分後港谷高校に着くと、そこには昨日と同じように高堂久留美が立っている。
「お早うございます。」
「お早う。亜久留君。」
「高堂さん、そう言えばどうやって空母まで移動するんでしょうか?」
「ではこちらに付いて来て下さい。」
(C-6Aだと良いなぁ。)
二人は昨日と同じ方向の格納庫に移動する。
「これです。」
「―げっ」
そこには―T-11がやはり置いてあった。
「一刻も早く空母の着艦方法に慣れて頂きます。」
(そりゃそうだよなぁ。早く慣れないと使い物にならないからな。)
「では乗って下さい。」
「…はい。」
〈数十分後〉
『アク、CATCCです。残燃料数は足りますか?』
「CATCC、まだ足ります。」
『では、空中待機位置にて旋回待機してください。』
「了解」
そのまま亜久留達は左旋回を開始した。
数分後、
『アク、着艦進入経路に進入しプライ・フライの指示に従って下さい。』
『アク、プライ・フライより着艦を許可する。』
遂に亜久留に着艦の時が来た!
「亜久留君、リラックスだ。」
「はい。」
そう言葉を交わすと、亜久留は機体を降下させていく。
今、亜久留達の機体は空母の進行方向と真反対に機首を向けている。
まず、空母の艦尾に向かって左旋回を開始、しかしまだ高度が高いため空母よりも右側に出て空母と平行に移動、一旦追い越したあと又先ほどのルートと同じ様な経路をとる。
そして、
「ふぅ、やっと艦尾が見えて来た。」
亜久留は空母の艦尾と正対する位置にいる。
『LSOだ、高度が低い。エンジンパワーを上げて上昇しろ。』
IFLOLSの表示と共にLSOの指示が入る。
高度が低いと艦尾に激突することもあるから亜久留は少しパワーを上げ、高度を稼ぐ。
『機首方向がずれている、09゜左に向けろ。』
そう、空母の着艦場所は左に9゜ずれているのだ。
さらに、今機体はアレスティング・フックを下ろしているがこれをワイヤーに引っ掛けなくてはならない。
亜久留達の機体は―何とLSOの指示があってから進入角度をなぞるかの様な的確な進入をしていた。
そして―
車輪がタッチ・ダウン、その瞬間亜久留はエンジンを全開にした。
しかし機体は前には進まない、何故ならアレスティング・フックがワイヤーを捉えていたからだ。
亜久留はすぐエンジンパワーを下げ、アレスティング・フックを上げる作業を開始する。
アレスティング・フックを上げると同時に主翼を畳みプレーンディレクターの指示で駐機位置まで誘導される。
そして―
「お疲れ様。良くやったな!」
「はい!何とか無事に出来ました。」
「じゃあ、歓迎会と行こうか。」
二人は艦橋へと向かった。
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