亜久留、乗り換えます!
今回も宜しくお願いします。
突然の移動が告げられてから一夜開けて、亜久留は何となく漠然とした不安を抱えているのだった。
「はぁ~今日からT-11かぁ。流石にいきなり空母に向かって下さいは無いだろうな。」
「おはようございます兄さん。」
「うおぉ、お早う友梨。」
「さっきは何をボソボソと呟いて居たのですか?」
幸い友梨にはさっきの言葉ははっきりと聞こえていなかったらしい。
「いいや、何でも無いよ。」
「そうですか…」
「あぁ。」
「そうだ!今日はリニアで行きませんか?」
「そうだな、そうしよう。」
(やった!今日は兄さんと横やりが入らずに行ける!)
そして、いつもの様に港谷高校に着いた。
しかし心なしか亜久留の顔がいつもより少し表情が暗いように見える。
「兄…さん…?」
「ん?どうしたんだい?」
「いえ、何かいつもより表情が少し暗かった様に見えたので。」
「へ?あぁ、いつも通りだよ。と言うか良く見てるなあお前。」
「別に良く見てません、何勘違いしてるんですか。兄さんのバカ!」
と言っている友梨は耳まで真っ赤になっていた。
「ハイハイ、もう時間だから早く行け。」
そう言って亜久留は航空科へと向かっていった。
航空科の校舎前に見知らぬ顔の人が立っている。その人はどこかスラッとした印象で誰かを待っている様に見える。
何も知らずに航空科へと向かっている亜久留はその人影に気付いたが、特に何も考えずにスルーしようとしたその時―
「君は亜久留君だね?」
―いきなりその人から声を掛けられ、亜久留は思わず振り返った。
「はい、そうですが何か?」
「今日から君のT-11の訓練担当になった高堂久留美だ、宜しく。」
「は、はぁ。…宜しくお願いします。」
亜久留は普段から美少女を見ていたので美少女には耐性が付いたのだが、流石にこの手の美女となると動揺を隠せなくなっていた。
「そうだ、君には今日から空母に乗って貰う事になるから。覚悟は出来てる?」
「……は?」
「て言うのは冗談だけど―」
「良かった…冗談なんですね。」
「―明日から乗り込む事になっているから、今日1日で機体と空母の着艦手順に慣れて貰うよ。」
「そんなの鬼畜過ぎるだろおおおおおお…」
つい亜久留は大声を上げてしまった。そのせいで周りの視線が結構痛い。
「と、言うわけで君にはこちらに来て貰おうかな。」
そう言うといつもの格納庫とは真反対の方向へと歩いて行く。
「あの…何処へ行くんでしょうか?」
「え?格納庫だけど。」
「格納庫ならあっちですけど……」
亜久留がそう指摘すると久留美は急に真顔になって
「これはオフレコなんだけど、T-11と言う代物はこういった高校には配備されてはならないモノなんだ。」
「じゃあ今回の事は異例だと?」
「ああ、今回は異例中の異例だ。それだけ君には価値があると言うことなんだ。」
「だからいつもの様に手を抜くなんて真似は絶対にしないで貰いたいな。」
「……分かりました。」
「分かってくれたなら良いんだ。じゃあ早速始めるとしようか!」
「はい!」
そして、亜久留のスパルタ訓練が始まった。
T-11が高校に配備されてはならない理由
表書きはtrainingのTを使っているが、実際にはfighterのFを使ったF-11として使用されているからである。