綺麗なありふれた言葉たち
[落ちる]
あの落ちていく感覚が好きだ。
暗く深海のような心地良さ。
陽は自分を照らしポカポカと暖かい。
それでも、どこかスゥとする寒さがある。
ヒュウヒュウと、風が横から入っていくのを感じ気持ちがいい。
あぁ、どんどん落ちていく。
どこまで落ちるのか、わからない。
それでも、あの落ちる感覚が好きだ。
周りの音は雑音のようにしか聞こえず。
もう、ここは自分の世界なのだという実感。
あぁ、気持ちがいい。
この落ちていく感覚がどうしようもなく、好きだ。
瞬間。
バシッと背中を叩かれたような感覚がして、ガタッと起き上がる。
そこには、見慣れた教室で黒板には字がビシッと書いてある。
先生は怒ったような顔でこちらを見ていて、クラスメートたちはクスクスと笑っている。
あぁ、寝てたのか…
[人間]
人間から何をとったら、人間じゃなくなるんだろう
人はいつか命を手放す
[商店街]
商店街のお店が次々と消えていった。
私が小さい頃はあんなに活気に溢れていたのに、今はひっそり閑としていて人の気配は ない。
子供の頃の商店街を思い出す。
色とりどりの野菜がたくさんある八百屋さん。
銀色に煌めく魚や綺麗な青い魚がある魚屋さん。
よく駄菓子を買いに行った駄菓子屋さん。
おばあちゃんに渡す菓子折を買いに行った和菓子屋さん。
そのどれもがシャッターで締め切られ、あの頃の風景はどこにもない。
あぁ、こうやって自分の知っていた街は消えていくのか…
[今、この瞬間]
今、この瞬間
誰かが死に、誰かが生まれている
今、この瞬間
誰かが泣き、誰かが笑っている
今、この瞬間
誰かが傷つき、誰かが傷つけている
今、この瞬間
君は何を思う?