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詩花

詩花 夏の幻

作者: 葵冬弥

久しぶり


久しぶり



お盆の昼下がり


久しぶりの田舎は


ギラギラと太陽が照らし


セミの声が五月蝿く響く



珍しく実家に帰ってるんだ


あぁ、うん、まぁ、たまには



相変わらず歯切れの悪い返事


思わず笑いがこぼれた


ばつの悪そうに目をそらして


頬を指でかく


その仕草も相変わらずだった


だいぶリラックスしてるのか


ボサボサの髪で


よれよれの服を着て


サンダルをつっかけて


格好は昔と変わらないのに


顔の輪郭を覆う無精髭は


見たことが無かった



なぁ


何?



そっぽを向いたまま


ううん、ある方向を向いたまま


問いかけてくる



お前はまだあそこにいるのか


そうだよ


私はあそこから出られないから


そっか


えぇ、そう



悲しそうな顔をこっちに向けないでよ



あそこにずっといるのか


さぁ、どうでしょうね


私はずっと待ってるんだけどね


何を?


連れ出してくれる王子様を



吹き出すように笑わなくても


いいじゃない



悪い、悪い


思ってもないくせに


相変わらずで安心したよ



一体、何に安心するのか



あっちに行ってると


いつでも、ある日突然人が変わるのが多くてさ


それは人を見る目が無いからでしょ


そうかもな


俺にはお前ぐらい素直に生きてるやつじゃないとわからないよ



何が素直なものか


今もこうやって



それは誉めてるの?


俺の中じゃ誉めてるつもりだけど


貧相な語彙しかないのね


それじゃ、ただの寂しがり屋にしか聞こえない


あぁー、まぁ、そうかもな



恥ずかしそうに頭の後ろをかく


色んなところが痒くなって大変そう



いつまでここにいるの?


うーん、とりあえず今週くらいかな


来週からはまた仕事だよ


そうなんだ


うん、そうなんだよ


たまに田舎来るのは良いもんだな


何もないのに?


何もないから、かな


ふーん、そういうものなの


お前は色々あるだろ


そんなことないわよ



そんなことない


求めても手に入らないものはたくさんある



んじゃ、買い物の途中だからもう行くよ


えぇ、ごきげんよう



歩きだしてお互いすれ違う


少し歩いて



なぁ


何かしら



また話しかけられる



今度会いにいっても良いか?


駄目よ、会えないから


そうか



昔から変わらない


そう思われてることがありがたい



呼び止めて悪かったな


えぇ、そうね



あなたは苦笑いを落として


そのまま歩いていく


今度は振り返ることなく



さよなら


また会えたらいいわね



あの場所に私も帰らないと


いつまでここにいられないから




次の日


俺はあの場所を訪れたけど


そこには



俺は相変わらず鈍いままで


何にでも気づくのが遅すぎる


悔しくて


情けなくて


何で


気付いてからじゃないと


色々と気付けないんだろうな

わかりにくい場合はお盆の時期のことだと思っていただければ、と思います。

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