Episode 2 西の……ローマ?
第五話と入れ替えました。
――神聖ローマ帝国。
一般的にそう呼ばれている集団は、いまいち謎である。そしてその集団のもとはフランク王国と言われている。かつて、その国は西ヨーロッパの多くを支配下にした。しかし、フランク王国は西・中・東の三つに分裂してしまう。やがて、西フランクはフランス、中フランクはイタリア、東フランクは神聖ローマと、それぞれの国の母体となり、現在の西ヨーロッパの基礎を作った。
そうした中で生まれた神聖ローマ帝国は、諸侯によって分割統治されていた。史実においては、ヴェストファーレン条約が結ばれるまでは神聖ローマ皇帝という立場には価値があったが、それ以降、つまり諸侯に主権が認められてからはほぼ有名無実と化した。それ故、ヴェストファーレン条約は「神聖ローマ帝国の死亡証明書」ともいわれるが、つまりは本から支配体制が脆弱であったということである。大空位時代もまたカオスで、そのような神聖ローマ帝国に対して、このような名言がある。
「神聖ローマ帝国と自称し、そしていまだにそうしているこの集団はいかなる点においても、神聖でもなければ、ローマ的でもなく、ましてや帝国ですらない」
これはヴォルテール(本名:フランソワ=マリー・アルエ)の言葉で、彼はプロイセンのフリードリヒ2世からサンスーシー宮殿に「招かれた」、18世紀を代表する啓蒙思想家の一人である。いくらヴェストファーレンのあとだからと言って、彼をしてそこまで言わしめるほどであったのではないだろうか。