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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
9/51

熊さんと出会ったら

(マスター、此方に接近してくる者がいます)


 自己流ジビエを堪能し終えて煙草を咥えながら魔法の練習に励んでたら、アイちゃんからそんな報告がきた。


 既に日は落ちている森の中。少しだけ開けた場所で野営をしているのだが、これはアイちゃんの指導の元で作った結界があるからだ。

 動物を拒絶する為に焚火をするような描写が元の世界でもあったけど、あれはちょっと間違っている。

 この世界でも当然逆効果。

 料理の匂いだとか焚火の明かりだとかって獣を寄せ付ける。

 まあそれ故の結界な訳だけど。


 しかし、森の中で他に人なんて居ないと思ってたから忌避の魔術は魔獣のみに対応している。

 魔獣達が忌避する魔術も想定してない人間だと全くもって効果がなかった。

 だからと言ってアイちゃんの結界を超えられるということではないんだが。


 きっと明かりがあるから近づいてきたのだろう。

 考えてみてほしい、普通の森で迷っているのならばあり得るかも知れないが、ここは魔物の住まう場所、どんな相手がいるかも知れないのに明かりがあるから近づくなんて真似を一般人や冒険者がするだろうか、否、普通はしない。

 こういった悪い予想は外れにくい。




「なんだ、進めねえぞ」

「兄い、こりゃ話に聞く結界ですぜ」

「チッ、こんなもんぶっ壊しちまえ」


 山賊や野盗の類だろうか、非常に野蛮である。

 結界をぶち壊せと言ってる時点でまともな相手では無い事だけは確定した。

 一応アイチャンの鑑定もお願いしたけど容疑者達は黒である。

 剣や棍棒で結界を叩いている。ご苦労なことだとは思うが、アイちゃんの指導で作った多重式の結界が普通の力量の人間に壊される訳がなかろうて。


(確かに、あの程度の者達の攻撃は大したことはないのですが、遮音までは不可能です)


「おりゃあー」とか「おんどりゃあぁ」とか「くそったれが」など騒がしいことこの上ない。

 森の中は虫の奏でる音色や梟が時折鳴く以外は静かである。

 狩りをする強者は己の存在を極力けそうと静かに移動するし、狩られる可能性のある弱者はより息を潜めているのに。

 そんな中で自分の存在をアピールすればどうなるか。



 回答はこちら。



 突如木々が騒めいたかと思ったら、騒がしかった音が止み、野盗の三人を黒い塊が吹き飛ばしていた。

 自動車に跳ね飛ばされたというよりも、某角付き超人の必殺技の一撃を喰らったかのように体をまき散らしながら上空に打ち上げられていた。

 現れた黒い塊の正体は体長が4m以上もあるような6本の足を持つ例の熊であった。


(夜間になり、餌を求めているところに騒がしい音を聞きつけて行動範囲から出てきたようですね)


 助けないのかと思われる人もいるだろう、だが助けない。

 そもそもが山賊、野盗の類であるから助ける理由がない。

 それに俗にいうほぼ即死、一撃で致命傷を負っていて助からない。


 六裂熊、物騒な名前を持つこの熊は冒険者殺しという存在らしいのだけど、アイちゃん曰く。


(六本の足をつかって森を切り裂きながら走ってくるとか、攻撃を受けると体が六分割されるから六裂熊と、私としては後者の説を押しますね)


 普通に激突しただけでは体は以外にバラバラになりにくい。

 トラウマのような出来事だが見たことがある、急行電車に投身自殺した現場でもバラバラになるのは挽かれるからで吹き飛んでホームに戻ってきた人はバラバラでは無かった。

 詳しい描写はしないけど、思い出しちゃうから。


 ではなぜ野盗の連中がバラバラになったか。

 六裂熊は弾丸のように六本の足で加速して突入し、野盗達をその勢いに加えて前足の爪で引き裂きながら中足の力によって打ち上げた。

 ベアーミキサーと命名してやろう。

 コーホーさんと角付き超人の合体技だな。2000万か。


 六裂熊は結界を数度叩いて無駄だと知ると忌避の魔術に因るものか忌々しそうに一度だけ低く唸り声をあげて獲物を咥えて森の中へと消えていった。


 鑑定では魂位が10、魔力生体障壁値は4350、生命力が4800とこの辺り周辺の中では最上位の存在だった。戦わなくて正解だね。

 確実に通常個体の六裂熊よりもつえーよ。


(マスターであればあれぐらいは楽勝ですよ)


 いや、勝てるよ。

 でも勝てるからと言って怖くない訳じゃないんだよね。

 倒し方の問題以前だな、あれは。


(正確にはギルドなどで登録後に確認する必要がありますが、あれだけの個体でしたら魔石も相当に良い値段がつきますし、毛皮なども安くないでしょう。

 また熊は有用な薬品の素材などもあります、ネームドに近しい存在であの大きさ、最低価格で40万エールは確実でしょう)


 なんだと、あの(素材)で日本円にして400万円だと。

 1エールが10円換算なのはアイちゃん情報である。

 月収で考えても一般的な雇われ職人で4万エール、奉公人で2~3万エールであるからまあ、価値観の違いも含めてそんなものだろう。

 となれば生きた自動車レベル。


 うーん、でもまあ一撃で仕留められる強さになるまで戦わないでいいや。

 俺の命や五体満足である値段は無限価値でなくては駄目だと思う。

 魔法なら恐らく簡単に、魔術を使えば確実に、いやいやイカンぞ。



連投中

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