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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
50/51

そうだ学校を作ろう

「へえ、教会の決定ね」

「はい、昨日届け出がありませして、あの孤児院の居住権放棄を申請してきました」

「詳しく教えて欲しいのですけども」


 冷静に、そう冷静にだ。

 しっかりと内容を把握しないとヤレナイ。

 朝一番のお迎えの儀とも言える城の前でいきなりの爆弾発言に驚いて、現在はお城の一室です。

 クリスさんの説明をしっかりとお聞きしよう。


「はい、少々大雑把な説明になりますが、国法として国の土地は全て国王の物、其処に貴族を封じ、貴族に領主として治めさせています。

 領主として任されている間は領地はその貴族の持ち物となります。

 都市だけに限って言えば、住民は其処に住む居住権だけを持っています、そして居住権を持っている者は土地の税金を払う義務が発生します。

 居住権を寄付された教会としては寄付された居住権を売り払うと外聞が良くありません。

 と言って居住権を持っている限り税金は必ず払う必要がありますので、寄付が無ければ教会からの持ち出しになります。

 そこで恐らくは一旦孤児院の居住権を放棄し、領主に返却された居住権が売り出された時に結託した商人が購入するという手段に出た物だと思われます」


 はっはーん。

 教会のクズのプライドか。


「でもそれだと、なんで態々嫌がらせを仕掛けたんだろうか、俺が詰めるようになってから止まってるけど」

「推測ですけれども、立ち退かない場合も考えられますし、また救済措置として事情によっては一ヶ月から半年程の猶予が与えられます、その間に院長を務めるソフィー・ベルマーさんの実家若しくは支援者が現れると其のまま維持される事になりかねません」


 つまり、あれか俺みたいに寄贈する形で手助けする人間がいると邪魔だってことか。

 ソフィーさんも貴族だし、何かの拍子に支援で特定の建物に対する寄付をされたら断れなくなってしまう。

 そうすると商会と裏で繋がっている教会の人間に寄付と言う名の賄賂が入らなくなってしまうって事だな。


 くそ、こんな事なら商会をさっさと割り出して潰しておけば良かったか。

 教会の屑と一緒にあの世に旅立ってくれていれば。

 と言ってもこれは如何した物かな。


 あ、そうだ。


「クリスさん、エリーさんとヴォルフさんに頼みが出来ました」

「きっと何か思いつかれて行動されるとは思ってました、この話をしたら連れて行くと既に伝えてありますよ」

「ハハ、流石は半専属受付嬢ですね」

「クロウさんの行動が読みやすいだけですよ」


 読みやすい、だろうなあ。

 まあいいや、今はまずエリーさんとヴォルフさんも巻き込んでしまえばいい。




 朝だけど何時もの如く執務室へ伺う。




「いらっしゃいクロウちゃん」

「お邪魔します、えーとヴォルフさんは」

「あの人なら普通に騎士団の訓練中。

 内政関連だから私の決済で済む話よ」


 うん、脳筋領主と賢妻だ。

 話が早くていいのかねこれも。


「では、例の孤児院の件なのは話すまでもありませんよね。

 あの場所に学校を作りませんか」

「学校って貴族の通うあの学校かしら」

「ええ、貴族は王都まで行って学ぶんですよね」

「そうよ、余程の事情が無い限り王都で教育を受ける決まりね」

「この学校は領主が運営する無料の一般市民向け教育施設です」

「それって、祈日に教会が開いているのと何か違うのかしら」

「教会の教えているのって、聖書を利用した読み書きと足し算、引き算位の奴ですよね」

「ええ、最低限の教えを布教する代わりに読み書き計算を教えるというものだわ」


 まあそんな事だと思ってましたよ。

 布教というか洗脳というか子供の頃なら教えに感化されやすいからね、只で教えるにも秘密はあるわな。

 祈日、まあ日曜みたいなもんだ、英語だったらサンデーか。

 此方も一週間は七日だが、曜日の設定に使われている言葉は異なる。

 七曜に陰陽五行、まあ其の辺りは色々と混ざるから、置いて置こう。

 まあ日本と西洋で同じところと違う所があるのに似ている。

 世界が変わればそれもまた然りであろう。

 土=最初に大地を作り、水=次の日に雨を降らせて海を生み出し、風=次の日には大気を震わせて風を起こし、火=火で温もりを与えた、陽=命の恵み育む昼の太陽が現れ、月=安らぎを齎す夜の月が訪れる、祈=感謝を神に祈り捧げる安息日

 とまあ、こんな風になっている、西洋風に担当する神様でもいるのかと思ってたからちょっと意外。

 でも、元は神話だそうだ。

 食い込むなあ宗教って何処にでも。

 いやまあいい、今はそれを叩き潰すだけだ。


「この学校で教えるのはもう少し上を目指したいですね。

 計算については最低でも四則演算は暗算で出来る様に、分数辺りまでは覚えさせましょう。

 読み書きについては宗教と全く関係のない物で生活に密着した内容をテキストにします。

 道徳として国の伝統、法律上の罰になる事や道徳上で忌避される内容を理解させる様に寓話で教えます。

 運動として体術訓練、棒術と護身術になる物を中心に。

 魔法の授業として生活魔法と魔法の危険性と簡単な治療魔法の習得など。

 職業教育として実際の商人や各種職人を招いての実演と見本作成。

 遊具の設置と給食施設。

 まあこんな所ですかね。

 序に大人も教えてあげれば地方から来た大きなお兄さんお姉さんも集まるかもしれません」


 まあ小学生の習う内容位はね、覚える必要がある最低限の事と楽しみと食事。

 一部違うのも混ざっているけど、貴族社会ならばこれ位は必要だろう。

 どこぞのラノベみたいに無償で学力を上げるなんて事もないし、或る意味世界への害悪にしかならない行為をする訳が無い。

 民主主義なにそれ美味しいのだ。

 国語で読み書き、算数という意味での計算、社会と歴史教育、そして謂わば国民教育も含めた道徳、体育の体術、理科の代わりに魔法、保健の一部が治療魔法の授業といった所だろうか。

 只で施すには其れなりの理由と目的があるのは当然だろう。


「こう言っては何だけど、子供や庶民と言われる人たちに其処までする意味は」

「まあ、貴族社会は下の者、つまりは民を支配して守り、動かす者ですからね、何も一般の人を教育するだけが目的じゃないですよ。

 教育を貴族が施す事でより優秀な領民を生み出して生産性の向上や商業の活発化、そして領民としての誇りを植え付けてやることで貴族の役割を果たしつつ、尊敬と感謝もされるという寸法ですよ」

「なるほど、だから宗教ではないテキストや道徳教育としての寓話があるのね、そして優秀な子を見極めて才能を伸ばす事ができる権利を一番最初に手に入れるのが私たちね」

「そこまで気が付いて貰えれば大丈夫そうですね」


 フフフ、そう教育を施して優秀な人材を育てて辺境伯家の元へ。

 これが肝だ。

 流石直に見抜いてくれるのは平民官吏も登用する辺境伯ならではだね。

 まあもう一つ、中央でしっかり勉強しないと貴族出身者もうかうか出来ないから発破をかける事が出来るおまけ付き。


「ええ、でもこれって冒険者を育てる部分も入っていたりするのかしら」

「そうですね、孤児の子供達の多くが進むのは冒険者ですから、其の辺りを含んでいるのは間違いないですよ、衛兵になるかも知れませんけどね」

「フフフ、そうね確かに其方の可能性もあるけれど、教える先生次第な部分もあるわね」

「ああ、俺はテキストやなんかは提供しますけど、先生はやりませんよ、其の辺りは冒険者を怪我で引退したり、一線を引いた商人や武官、文官辺りか暇を持て余している貴族のご隠居でも採用してください」

「成程、そうすれば少なくとも雇用も生まれるし恩を売れるのね。

 それじゃ、商人達を呼ぶ職業訓練は……これはある程度の年齢になってから受けさせるのね」

「ええ、職人を希望する子もいるでしょうけども何をどう作っているのか体験するのは悪くない事だと思います」

「遊具と給食っていうのは」

「まあ勉強だけなんて子供にとってはどれだけ楽しい内容にしても詰まらないものですからね、遊ぶ時間に何かあった方が楽しいし、体を動かす事で体が作られていく訳ですよ、そして給食として昼ご飯が出るなら通わせようと思う親がいるだろうって事で親向けの餌ですね」

「そう、後は、一番問題なのだけど、魔法も教えるのというか、生活魔法を教えるのは良いでしょう、親から子供に成人前には教えるものだし、危険性も教えるわ。

 でも治療魔法を教えるって言われても難しくないかしら、ほら適正とか」

「魔法に適正なんて存在しませんよ」

「え」

「え」


 もう定番だよな。

 これ説明して大丈夫かな。


(何時もの事ですね、マスター)

http://ncode.syosetu.com/n3813do/

短編を一本上げました宜しければ此方もどうぞ

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