とある天界の黙示録――所謂閑話
此処は大羽九朗ことクロウの今いる世界を管理する神々の園。
「古の契約の発動を確認しました、がこれは……管理自動運行システムからエラーメッセージ発生」
「くっ、古の契約に割り込みなさい、緊急停止」
「ダメです完全に制御不能です。緊急停止ボタンに反応ありません」
「なんですって」
「権能でも不可能です、女神様達じゃないと世界の管理しているシステムに介入なんて不可能ですよぉ、緊急連絡ボタンぽっちっとな」
人間世界で言うところの天使、生前に功があったりして死後に下級の神のような存在へと取り上げられた者達なのだが、大羽九朗が世界を渡りこの世界初の古の契約の発動が確認された瞬間から見事な程にパニックに陥っていた。
何かに状況が酷似している気もするが気のせいだ気にしてはいけない。
例え異世界の神との交流で齎された円盤が棚にあってもだ。
「古って言われるだけあって取り決められたのがこの世界の構築前ですよ。
そりゃ管理自動運行システムにバグの一つも起きるってもんです」
「あら、貴方随分と軽いわね。
で、これが重要なのだけど、これって暴走では無いのよね」
「想定外の渡世人であるのは間違いありませんよ。
あれ、管理自動運行システム再起動されました」
「そ、なら問題はなかったのね」
「ええ、もう通常の監視任務だけですよ」
天使達はこのとき忘れていた。
緊急連絡ボタンが押された事に。
無かった事にしたかったのでは無い、慌てていたから忘れているだけである。
当然無かった事には出来なかったが。
一柱の女神はボタンを押される前に気が付いていた。
この女神は時空を司るのだから。
侵入してくる異物、邪神を最初に見つけるのが彼女の役目である。
「あらあら、まあまあ、これはどうしたことかしら。
面白いわこの子。
ウフフフフ、エラーが起きたのね。
修復に丁度いいから、唯一無二の加護を授けてあげましょう。
この世界初の渡世人歓迎しなくてはなりませんわよね」
一柱の女神も時空の女神に遅れはしたが緊急連絡が入るよりも早く気が付いた。
この女神の司るのはこの世界に生けるもの全ての生死。
当然のように自分の関わりが大きい管理自動運行システムの異変に気付かぬ筈がない。
「全く、あの子たちも此れ位で慌てるなんて、はしたない事。
それと、私が気が付いていないと思っていることこそ不遜なのだけれども。
あとでお仕置きね、何にしようかしら。
まあ、それよりも、古の契約の想定内から外れているのであれば此方から加護を与えて……あら時空の女神が与えたのね。
……へえ、確かに面白い人の子だこと。
珍しいわ、スキルを持っているだなんて。
うふふふ、死に難いですって。
これって私に喧嘩を売るような異世界のスキルね。
興味が沸いたわ、あの子も加護を与えたのだから問題はないわよね。
うーん流石に不死ではやり過ぎで文句を言われるでしょうね。
死に難いというそのスキル名そのままの加護とエラーの原因の不老の能力を授けてあげる」
非常に偉そうだ、上から目線という奴だろうか、いや、実際に偉い女神様であるから不遜ではない。
だが、何をしたかと言えば古の契約によって起こるスマホを原因としたシステムの異常に対して、単なる能力の追認のみという為体。
存外怠け者なのだろう。
そんな様子を見守っていた者いや一柱の神がいた。
白亜の柱の陰から覗いていたが家政婦では無い、その者もまた女神であった。
一柱の女神は二人の女神が注目した事を憐れんでいた。
幸運、偶然に携わる女神故に彼の今後が心配になったのである。
「想定外の古の契約の発動。
さらに女神の意味不明な程の過保護な加護……悪い予感しかしません。
彼には苦労を掛けるであろう分、私から細やかな幸運を齎す加護を。
見守り続けましょう、ええ、それが加護を授けた責任というものです」
お分かり頂けるだろうか、最後の一柱に至っては初期の言動を見事に卓袱台返ししている。
見守ると言いつつ、それは実質的に他の女神よりも過保護な行動であった。
因みに髪の色はピンクゴールドだ、お察しという属性色。
何故に其処まで入れ込むのか、単純な話である。
なにせ幸運と言っても司っているだけで普段は何かすると言う事もない。
時折運命的な出会いを人々に齎すだけなので、ぶっちゃけ二柱の女神よりも暇な女神である。
たまたま、そう権能の効果を発揮して、きっと暇つぶしでは無く、今回も偶然を装って二柱の女神が何かしてるのを隠れ見たわけではない。
「この偶然は必然、そして幸運の女神だからこそ出会えた暇つ、もとい、役目」などと一部本音を暴露していた。
異世界へと渡りし者。それが注目を集めない訳がない。
彼の苦難は己の与り知らぬ所で進行しつつある。
なにせ天界なので。
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