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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
48/51

魔法があるさ

 俺に妹が出来た。

 大事な事だから二度言わせて欲しい、妹が出来たぞ。

 しかも美少女である。


 そんな妹にボフンと朝からダイブで起こされる定番。


「くーにい起きた」

「お、おう」


 最高の寝起きだと思う、笑顔が寝起きに見れるとか最高だろう。

 何と言う破壊力か、これが爆発案件にならない自信が無い。

 朝からバッチリ目が覚めたよ。

 だがルチャリブレみたいな技は危険だからやめなさい。



 一日が最高の形で今日も始まった。



 あれからの俺のタイムスケジュールは以前と大きく違う。

 基本的な流れを説明しよう。

 まず領主の城からブレーブスまでのクリスさんの護衛から一日が始まる。

 次に以前なら採取依頼を受け、夕方まで掛けて森を探索して様々な素材を得たり獲物を仕留めるのだけれど、昼過ぎまでに全てを終わらせている。

 そして孤児院にて作業をする、まあ内容は色々だよ。

 それが終わればクリスさんのを送る為にブレーブスへ行って、城に着いたらヴォルフさんとの訓練を行う。

 まあ大まかに言ってこんな感じだな。



 今日は孤児院にて、ようやく完成した道具を使ってスウィーツの試作と試食、試飲会。

 クリスさんも時間の調整をして参加している。

 少し驚きはしたが、同行の話を貰った時には既に仕事の調整まで済ませていた。

 流石スウィーツの同士だと思う。



 エリーさんに渡すレシピは余りアレンジをしていない物に止める予定だ。

 クレームブリュレとミルクレープ風は既に渡してある。

 まあアレンジはしないタイプのレシピだから問題は無いだろう。

 新しく用意するのは此方。



 フルーツを乗せた定番中の定番、日本のショートケーキ。

 スポンジと生クリームに季節で取れるフルーツを合わせて。

 因みにスポンジをふんわりさせているのは俺が見つけて錬金加工したドライイーストによるものだ。

 こちらのパンなどは自然発酵のみだし、フワフワ感が違う。

 こんな形で魔術式顕微板が役に立つことになるとは思わなかった。

 フルーツについては一応温室栽培を提案する予定だが、現状で年がら年中苺やバナナなどを栽培は出来ていないこの世界では季節ごとに乗せるフルーツを変える方が無難だろう。

 いや、異次元倉庫とか俺が付与したアイテムバックを作れば一年中提供出来るようになるけど、流石に捨てた自重を持ち出して来た。

 秘密の一つを明かすのがスウィーツを定番にしたいとか、どんな理由だよ。



 ザッハトルテ。

 チョコレートケーキの王様。

 さすが異世界というかカカオも見つけたので頑張ってチョコレートを作った。

 錬金が無かったら諦めてたね。

 カカオも薬の一つとして森に存在しているから材料的には季節を問わない。

 但し中層の奥にあるので採取してくるのは俺ぐらいだろう。


 プロフィトロール。

 シュークリーム=シュー・ア・ラ・クレームのっ小さい版。

 中身をカスタード、チョコクリーム、ホイップクリーム&カスタード、ホイップクリーム&フルーツソース、クリームチーズ、と小さなシューで色々な味が楽しめるようにした。

 クロカンブッシュじゃないよ。

 特に女の子に人気があったのがこれ。

 うん、見た目も可愛いし、味が沢山あって楽しいんだよね。


 ベークドチーズとスフレチーズケーキ。

 いや、種類を増やすと際限なく作りそうだったから制限してるんだよね。

 一番自分が好きだったのがチーズケーキなだけあってさ。

 個人的に一番気を使ったかな。

 問題はチーズの品質が結構、いや可也ぶれるんだよ。

 この辺りも近代的じゃないから仕方がないけど、職人の腕と舌まかせ。


 カトルカール=パウンドケーキ

 焼いた型がどうこうはあるけど材料が一緒だし。

 ってことで有名且つ最も覚えやすい材料のケーキ。

 卵・小麦粉・バター・砂糖を均等に用意するだけ。

 イギリスだと1ポンド、453gずつ使ったからパウンドケーキ。

 フランスは四分の四というのを表している。

 保存方法だけは気を付けないと駄目。

 基本的に25度以下の常温保存。

 しかも寝かせた方が美味しいというふざけたケーキ。

 まあ、お土産に使えない事も無い。崩れにくいしね。


 ロールクレープ

 まあ普通のクレープ。

 でもそれだけじゃ面白味に欠けるから、一般顧客向けで窓口販売が可能なようにしたかった。

 クレープ生地に挟むのは定番のホイップクリームとかカスタード、フルーツに加えて、薄く焼き上げたロールケーキの生地、簡単に持ち歩いて食べれるケーキにしてしまえと言う訳だ。

 基本の組み合わせはお手頃に食べれる値段にして、トッピングで注文を受けれるようにしておけば問題はないだろう。


 軽食。

 いや、一応男性用にもね。

 パスタ、ピザパン、フワフワの食パンで作ったサンドイッチなんかも用意した。

 パンケーキや蒸しパンとかなら甘い物が苦手でもいけると思う。

 但し入店するのには其れなりに気合が必要だと思うけど。


 お土産用。

 カヌレ、フィナンシェ・マフィン、クッキーなどは持ち帰りしやすいのでテイクアウトを見込んで用意した。

 チョコレートも単品で選べる仕組みにしている。

 まあ高級品として販売するので手間はサービスだ。

 気に入った物だけ選んでくれればいい。


 値段は貴族をターゲットにしているし、付加価値が高いので一粒100エールの高級品。

 日本でもまあ、偶に専門店にいけばある値段だよね、一粒で400円位のもあるあるだから。

 流石に一粒1,000円は食した覚えがないが。

 中身もボンボンにしたり、トリュフ、生チョコ、スパイスミックスなどを用意した。

 うん、これならこの世界で妥当な値段だと思うよ。


 実際、これらを作るのは大変だった。

 材料もそうだけど、調理器具が全く無かったに等しい状態からのスタート。

 そこで出番なのが魔法ですよ。

 ええ、色々と自重せずに用意したった。

 薪のオーブンで大量になんて作ってられないし。

 例のブラックボックス技術を使って業務用サイズの生地捏ね機、コンロ、オーブンと冷蔵庫、冷凍庫、アイスクリームメーカー、ショーケース、レジスターを作りました。


 え、技術の無駄遣いだって、何言ってるんだか。

 品質を揃えるのに最高の調理器具は必須ですよ。

 つか、手でシャカシャカしてたら大変だから、某ミックスとかそれのデカい装置とかも作ったし。

 スパチュラや口金、シフォンケーキのあの穴の開いた型とか普通の調理器具も錬金ですよ。



 真面目に鍛冶する異世界なんて此処には無いのさ。



 でも一番苦労したのは絞りの袋とヘラ、最初はスライムの出番かと思ったけど、ちょっと無理があったので芋虫系の魔蟲から糸を吐く材料を取り出して薄くのばして作り出した。


 まあそんな苦労があって出来上がったスウィーツ達。


「みんな神様に感謝――」

「おいしぃ」

「冷たーい、甘ーい」

「このクッキー可愛い」

「うう、クロウ様にも感謝を捧げます」

「頬っぺたが落ちそうですよ」

「芸術品のような仕上がり、食べるのが勿体ないと思わせるのに、食べてみると酸味と甘さが調和して口の中で新たな世界を生み出してる、このソースとホイップクリーム、そして果実のハーモニーが全身を震わせる程の感動を私に与えてくれているわ」


 何かが憑りついたように感想を述べてるのは放置しよう。

 兎に角子供達に大好評。

 フフフ、また作りに来て上げようではないか。


 だが、今日の驚きはそれだけではない。

 新商品第二弾、衝撃の飲み物。


「葡萄なのにしゅわしゅわー」

「レモン味は舌がピリピリ」

「子供達にも大人気ですね、私もこのアイスの入ったのが好きです」

「シュワってしてて美味しい……」

「これは生姜かしら、なのに甘くもあり、辛くもある、口の中で広がる刺激、それが飲み終えた後に口に広がる清涼感の正体ね、今までに飲んだことがない味だわ」


 だから最後のな、流石は王妹とでも言うべきなのか、どっかのレポーターみたいになってるよエリーさん。

 クリスさんはついて来るって言ったから知ってたけど、何時の間に混ざってたのかな。


 まあいいや、新商品第二弾、そう正体は炭酸飲料だ。

 あの辛口のジンジャーエールや有名な葡萄味、オレンジ味、メロンソーダ、レモンスカッシュを再現した。

 冗談で薬草なんかを混ぜたらドク○が出来たがちょっと不人気だ、だが構わない俺は好きだし。


 作り方だけど、炭酸飲料なんて純水と空気中から二酸化炭素を取り出して魔法で錬金すりゃいいだけ。

 まあ今は圧力を掛けて炭酸水を作る家庭用の機械もあるし判りやすい。

 後は其々の味の原液と混ぜれば完成だ。

 メープルな国のジンジャーエールだとパンチが足らないなあって人だったので、砂糖を無しで生姜の汁を入れればちょっとキツメの味を楽しんでいた。

 まあ個人的には一寸時間は掛かるが、砂糖とスライスした生姜を煮詰めて作った物に炭酸を注ぐ方が好みだけどね。


「これは成功間違いないわ、でもこの炭酸っていう飲み物はその魔道具が無いと無理なのよね」

「そうですね、出来なくは無いですけど、理解して作るのは難しいかもしれません。

 俺なら魔法のみで炭酸を作れるんですけどね。

 料理も出すとなれば味を付けない炭酸のみにレモンだけを絞った物を提供するのもありですし、活用法は在りますよ」

「そうね、お酒か水、お茶しか選択肢が無かったところにもう一つ選択肢が増えるのは嬉しいわね」

「個人的にはお酒は飲みませんし、料理の味のみを楽しむつもりなら味の無い炭酸やお茶がお勧めですよ」

「あとこの食器、これもいいわ。

 基本的に手掴みでとナイフで切り分けてパンに挟んで食べる今のスタイルから違うもの」


 まあ、ナイフはあったけどフォークが取り分け用のデカいトングみたいなのしか無かった。

 実際に西洋の料理のマナー云々なんて言ってるけど17世紀まで手掴みのみの文化だからね。

 此方でも其の辺りは変わらなかった、なにしろフィンガーボールを使わないでも生活魔法があるから。


 食器を使って食べると其れなりに優雅に見せやすいからね。

 さくっと広まると思う。

 そうした文化的なリーダーである事は貴族の強み、謂わば武器として使える。

 マナー講習として人を招くことで顔も売れるし、人材を派遣したりも可能だろう。

 そしてその道の権威的な立場になる事で人脈を形成するのが仕事になっていく。

 悪い例で言えば討ち入りされた方の人とかね。


 エリーさんがどう使うのかは大体察しているけど。


「これは兄上に教えても構わないのかしら。

 いえ、それも見越しているのよね」

「そうですね、見越して紹介したつもりですよ」

「もう、また借りだわ。

 でも、これは文化としての先駆者となれるもの有り難く頂くわね、サロンを開くのが楽しみよ」

「こんなものも用意してるので、持ち帰りも可能ですよ」


 そう、まあ空滅刃の時点でお察しだろうし、炭酸飲料を作ってるんだからお解りだろう。

 お持ち帰り用に用意したのはドライアイスだ。

 材料費は魔力と魔道具の制作代のみ、後は無限に空気中から二酸化炭素と水分を取り出せば作り出せる。


「これが保冷材になっていて、空気を冷やしますから持ち帰りして貰っても数時間は大丈夫ですよ」

「クロウさん、それは他の物にも転用が可能なのではないでしょうか」

「まあ、そうですね、でも必要は無い気がしますけど。

 可能ですけど、これも多分作れる人は居ないんじゃないかな。

 それに時間が経つとこれ……こんな感じで無くなるんで」

「不思議な物体ですね」

「ええ、まあ元々空気に含まれているものなんですけどね」


 説明はするけど、ちょっと危ない物だしなあ。

 スウィーツ以外に利用を考えるとしたら何だろうか、舞台演出か腐敗防止ぐらいだよなあ。

 基本的に魔法はあるから、氷で冷やす方法はあるしね。

 ああ、そうか安い方の冷蔵庫の仕組みが悪いんだったな。

 昭和初期仕様だったはず。


「冷蔵庫、お城の分限定で良ければ用意しますよ」

「本当ですかっ」

「クロウちゃん何が欲しいの言ってみて」


 食いつくなあ、まあ貴族が使っているタイプでも燃費的な問題はあるだろうしな。

 何しろ真空断熱とかないだろうし。


「材料さえあれば直に作れるので対価って言われても困ったな、取り合えず、必要なのはあのタイプでいいですか、冷凍と冷蔵が可能な製氷機付き仕様」

「せっかくこんなに美味しいスウィーツを手に入れても冷蔵庫が無いとサロンの準備の効率が違うもの」

「はあ、でも一応世間一般の砂糖の塊よりも砂糖の使用量は減ってますけど、他の成分が美味しいと感じるだけ入っていて普通の食事に比べると数倍はカロリー、つまり栄養分になる物が多いので食べ過ぎたら……」

「クロウさん、もし食べ過ぎたらどうなるんですか?」

「人によって増える場所は千差万別ですから、運動量を増やしてください」


何が増えるなんて口には出さずとも判るでしょう。


「危険ですわね」

「ええ、お二人には必要ないですが、サロンの方が沢山食べるならその分運動をお勧めするしかありません」


 ダイエット系のケーキとか無い訳じゃないけどさ、結局カロリーを取るなら運動して基礎代謝を増やしていたほうが有効だよね。

 この世界ならではの魔法を使い続けるというダイエットもあるけど可能なのは一部の魔力量の多い人だけだしな、運動した方がスタイルの維持にもいい。

 何故かスタイル維持についてのお話しに最後はなって色々と質問を受けたけど、それ自分用じゃないですね。

 でも美人がこんな方法でって勧めてたら説得力が違うけど、詐欺だと思う。

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