義理というよりギリギリ妹分的な扱いで
「そうか、アルとヨハンナに会ったか」
「まぁあたし達も当時は知らずにパーティーを組んだけど、クロウさんも驚いたでしょ、気さく過ぎて。
で、元気だったかしら」
「ええ、元気過ぎて、娘さんの婿にしようとするぐらいでしたよ」
ワイルド&キャッツに帰って来たがもう閉店後になっていたので一階のカウンターで軽くお茶を貰いながら王都での話をしておいた。
知り合いだって教えてくれてなかったけど、俺もアルさんに会いに王城へ行くと言ってなかったしな。
「ブッフォ、ゲッホッゴッホ。
あいつ本当に何考えてるか判らねえ。
賢人って名の変人だな、相変わらず。
で、クロウどうすんだよ」
「いや勿論断りましたよ」
「相変わらずねクロウさん。
それを断るって、ウフフ。
絶対にアルが悔しそうにしてたでしょう。
まあ断るようなクロウさんだからクリスちゃんたちが集まるのだろうけど」
いやいや、責任を持つなんてノーサンキューですよ。
自分から名誉と位だけ高い国の奴隷になんてなりたいと思わないからね。
「あーでも思い出したがよ、カーチャの結婚相手って無双に勝つのが条件だったか。
クロウを王配へって誘いも或る意味全て納得したぜ」
「そういう事ね、察したわ。
アルとヨハンナも大変ね」
色んな意味で大変だと思う。
是非俺の関係ない所で頑張って欲しい。
「勝負する切っ掛けにもなったんですけど、情報網が凄いらしくて、即日レベルで俺がこっちで呼ばれてた綽名とか知ってるんですよ」
「まあ、伊達に賢人とか言われてない、変人だけど。
俺らや辺境伯家は勿論だろうが、特にクリス嬢ちゃんと知り合いって事で注目もしてたろうよ」
「ふふ、そう言う事ね。
報告で興味を持ってて、いざ実際に目でみて確かめたら、欲しくなっても仕方がないかしら。
アルは優秀な人材欲しがるものね。
この人も散々誘われたけど、怪我を理由に逃げたものね。
それにしてもキティの競争相手が現れたわね、頑張るのよ」
「ちょっとお母さん、もう」
「いやいや、待て待て。
とりあえず、誘いを断ったのはマルも一緒だろうけど、そうじゃねえ。
何時の間にキティとそうなったのか知らないが、勝負するって事でいいかクロウ」
おい、腕をボキボキと鳴らしてるんじゃねえよ。
話をよく聞け、今のはマルさんがキティちゃんを揶揄っただけだ。
「ブンさん落ち着いて、俺は何も言ってないだろうが。
何時の間にもなにもないし、マルさんがキティちゃんを揶揄っただけだし。
ヴォルフさんと反応が全く同じだ娘の事になると急に視野が狭くなるな。
いや待てよアルさんも何気に断った時にムッとしてた筈とかヴォルフさんが言ってたな。
何なの伝説のパーティー、男が三人揃って同じ思考とか」
「いや、男親が拳で語り合うのは当然だろう」
「マルさん……」
「これはもう手遅れよ。
まあ、私の父とも勝負はしてるから思い込みもあるわね」
伝統にするんじゃねえ。
死人がでるわ。
「なにお父さん、私に結婚させない気なの」
「え、いやそう言う事じゃないぞ、俺が見極めるってだけでだな」
「ふーん、そう、ならお父さんに勝てるんだったら誰でもいいんだ、そうなんだ」
「いや、違うぞ、そうじゃなくてだな。
おい、マル」
「知らないわ」
「ぐぬ、まずキティの想い人である事が重要だ。
だが、だからと言ってハイそうですか、とはいかないだろう」
「この国でお父さんに勝てる人って何人いるか分かってて言ってるのかな」
「ぬ、父親とは最強であるべきだろう」
「キティちゃん、要はこの野獣と言われる程の男を相手に立ち向かえる気概のあるような奴じゃないと認められないってブンさんは言ってるだけだよ」
たぶん、きっと、恐らくね。
「おお判ってるじゃねえかクロウ。
そういうことだな、うん」
「……疑わしい、本当にそう思っているような気もするけど、クロウさんに助けてもらったようにも聞こえる。
大体、お父さんの事知ったら勝てるなんて考えないと思うんだけどな、クロウさん」
「大丈夫だろう、最悪殴られればいいだけなんだから」
「そうなの?」
「ですよねブンさん」
「まあな、俺もマルのおやっさんと勝負したっつっても殴られにいったみたいなもんだったぜ」
「そう言いながら勝負は勝負だからってやり返してたわよね」
「ああ、おやっさんとは幾度も拳の交えて語り合った仲だからな」
ブンさんが現役の頃に殴り合いをしたおやっさんって一体何者だよ。
「野獣対猛獣の戦いよね」
なんだかどこぞのメインイベントのタイトルみたいだな。
ちょっと迫力があり過ぎるけど見てみたい。
「全く、おやっさんには参ったぜ俺の料理の師匠なんだがな。
これがあり得ねえ強さなんだよな、娘を持つってのはスゲエよ。
男親の理想像がおやっさんなんだよ」
「お爺ちゃんのせいだったの。
幼馴染も出来ない原因……」
「まあ、骨のある男の子はこの近所に居なかっただけよ、ね、貴方」
「まあな、俺なんておやっさんに小さい時から睨まれっぱなしだったからな」
「ふん、いいもん。
その話は聞き飽きたわ、幼馴染で恋人になって、一緒に冒険に出て、助けられて結婚でしょ、ご馳走様よ」
ダイジェスト版だな。
「私はクロウさんに構ってもらうもの」
「あらあら」
「テメエ、クロウ表に出ろよ」
「お父さん、何言ってるのかな」
「いや、だから拳で語ろうとだな」
「クロウさん位しかいないじゃないの、お父さんに怯まないで私と話せる男の人。
だから友達になって貰いたいなって思ってるのに、何言い出すのよ」
「ぐっ」
「思い出すわね、お父さんにも私が似た事を言ったわよ。
私にも貴方以外の男の子の幼馴染なんて居なかったでしょ」
「ぐぬぬ」
「キティちゃんは俺からしたら下宿先にいる可愛い妹だからなぁ。
幼馴染にはなれないけど兄みたいにはなれるかな」
「お兄ちゃんが出来るなら幼馴染より嬉しいかも。
うん、それでもいいよね」
「可愛い妹が出来るってのは嬉しいし、宜しくねキティちゃん」
「うん、お兄ちゃん。
でもキティって愛称だから『ちゃん』まで付けられるとむず痒いよ」
「じゃあキティの方がいいのかな」
「うん、代わりにクーにいって呼んでいいかな」
「おお、それは嬉しいね、愛称なんてつけて貰ってないから」
「じゃあ、宜しくお願いします、クーにい」
「うん、宜しくねキティ」
おお、妹が出来た。
ちょっと美少女の妹ですよ。
可愛がるに決まっている。
「キティも成長したわねぇ」
「これはどうなんだろうか。
なあ俺と一回拳を交えておいた方がいいんじゃねえかクロウ」
「いやいや、妹ですって」
「そうよ、お兄ちゃんよ。
クーにいに暴力振るったら一生口を利かないんだから」
「ぐはぁ」
「これは、色々とありそうね、ウフフ」
ブンさんが最大のダメージを受けた。
暫くは立ち直れないだろう。
いや、妹は最高だな。
ギリギリ妹って感じだが。
色んな意味で。
そんな感じで夜が更けていき。
妹も出来て幸せな気分だけど、明日も早いし寝るとするか。
色々と準備する必要があるからな。




