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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
41/51

伝説の

「どうだった、カーチャ、世界にはまだまだお前の知らぬ強者がいただろう」

「はい、お父様。

 私など所詮は世の中を知らない王城という名の籠の中しか知らない小娘でしかありませんでしたのね。

 己の武が全く通用しない事で修行不足を痛感しましたわ。」


 いやそうじゃないだろ。

 なんで更に修行する方向に話を持っていこうとしているのかね。


 一勝負終えて部屋に戻ってきたのに、気が休まらないね。

 ああ、お茶が美味い。


「まあ、クロウ殿に負けたのは仕方ないわよ、あの無双にして自分より強いと言わしめた方だもの」

「なっ、お母様、それは真なのですか。

 では最初から私が敵う相手では無かったと言う事ですわね。

 もしや、既に無双叔父様に勝利を」

「手紙にはこう書いてあったよ『俺の筋肉を超えている』とね、ヴォルフの筋肉を真正面から打ち破った唯一の男だそうだよ」


 あー腕相撲なら勝ったな。

 しかし、国王陛下、アルさんだけしかヴォルフガングさんの名前で呼ばないのかよ。

 無双叔父様なんて失笑もんだろうよ、いや、リアルに叔父様だったわ。

 つか王族にも筋肉基準で通じるんだね。


「ハッ、それでは私の夫となるのはこの男、いえ、クロウ殿になりますのね。

 『私に勝ち無双叔父様を倒せる者と婚約する』と私は以前に宣言しておりますもの」


 いやいやいや、それは無理があるんじゃなかろうか。

 腕相撲以外は全力じゃないけど武術的な部分では全敗中だぞ。


「……」

「ふむ、そう言われると……」

「あら、でも困ったことにならないかしら、クリスちゃんの事もあるわよ」

「そう言えばその話を聞こうとしたところでカーチャが部屋に入って来たんだったね」


 ひいっ、またクリスさんの温度が。

 別に誑かすつもりとか御座いませんから。


「あの、そういうのは辞退する方向で」


 あ、エカテリーナさんが沈んだ。

 乗り気じゃなくても断られるとショックだよな、悪い事をしたが許していただきたい。

 俺の平穏を守るためなんです。

 こういうのははっきりと断る必要がある。


「ふむ、クリスちゃんの事は置いて置くとして、カーチャとの結婚を辞退すると」


 なんで不満そうなの。

 いや自慢の娘の結婚を断られたら怒るのは当然なのか。

 でも、今までの二人は筋肉で立ち塞がって、いかん、筋肉がデフォすぎて普通の親の対応が判らない。


「決してエカテリーナ様が美しくないなんて思ってもいませんからね」

「そうなの、だったら結婚したら将来はこの国の女王の王配としての王位、つまりは国王なのだけど」


 それが嫌なんですよ。

 あら不思議って顔されてもね。

 嫌な物は引き受けませんよ、王族なんてボランティアな存在でしょ、下手すりゃ国民の奴隷ですらあるって言われるんですよ。

 いや、本人の前では言わないけど、判ってて言ってませんか。


「俺はそういう器では無いですよ。どこの馬の骨かも判らないのに貴族も国民もついてこないでしょう。

 それにヴォルフガングさんと勝負して勝ったのは腕相撲であって、悔しいですけれど武術の試合では負けっぱなしですよ」

「成程、考えられない事ではないね。

 フフフ、でも全力を出さない武術の勝負ではとヴォルフも書いているよ。

 その状態で尚打ち合ってくる者だとね。

 さて、国王は無理だとして、では公としての王配であるならば問題はないと思うのだがどうだい」

「いや、公としての王配でも変わりませんよ」


 なんで権力を持つ王がだめなら配偶者として座ってろになるわけですかね。

 さらっと結婚で取り込む方向ですか。


「フフ、やはりヴォルフからの情報通りだね。直臣、陪臣問わず貴族にするのも難しいだろうって書かれていたんだけどね。

 王の座でも王配の座でも駄目だったか」

「無双を超える逸材を逃すのは勿体ないですね、貴方」


 夫婦して俺の事を試すのは勘弁してくれませんか。

 試されてると思ってても心臓に悪いし、エカテリーナさんもネタにされると可哀想ですよ。

 ダウンしているけどさ。


「そうなんだけどねえ。

 最初はヴォルフの言っている事を確かめるだけだったんだけどね、本当に貴族にならないかい。

 そうだ、例えば牧場や農場なんかはどうなのかな、お勧めできる牛や鶏、果物なんかが豊富な場所があるんだけど。

 貴族って言っても管理は代官に任せられるよ」

「いえ、基本的にコレクターで十二分に稼げていますから、ご提案は嬉しく思いますが」


 情報網凄いですね。

 スウィーツ情報まで把握しているのかな。

 確かに牛乳や果物が手に入るのは魅力的だが人生を奉仕活動に捧げる程には人間は出来ていないよ。


「伯父様、クロウさんは私が専属受付になるので予約済みですよ」


 おお、クリスさんが援護射撃を。

 そうそう、言ってやって欲しい、ちょっと勘違いしそうな科白がなお嬉しい。


「フフ、クリスちゃんにもガードされると辛いなあ。

 だよね、王配を断るぐらいだものね。

 うーん、辺境伯領でその手の物を探していたって聞いたんだけど。

 じゃあ、クリスちゃんとの婚約のお話し」


 何と言うか人はいいけど王様なんだなあ。

 油断が出来ない人だと思う。

 試されているのは判るんだけど、あわよくば配下に引き込もうという感じがする。


「クロウ様が王配、旦那様……クリスお姉さまとの婚約者、つまりクロウ様と一緒になればクリスお姉さまと本当の姉妹になれると言う事ではありませんか、そうすれば家族としてずっと一緒に入れることになりますわよね。

 クロウ様、末永くお願いいたしますわ」


 突然再起動したエカテリーナさんが嫁入りの挨拶をしたんだが、クリスと姉妹になるからって嫁入りを決意するってどうなのよ。

 それにだ、その姉妹は姉妹でも意味が違うからな。

 もし両方と結婚したら確かに家族にはなるけど、それも結婚をしたらって事だからな。


「ハハ、これは、どうしようかね。

 我が家の問題の解決策を教えてくれないかなクロウ殿」

「難題が持ち上がったわね」


 まだお墨付きの話もしてないのに、なんで王家の相談に俺が乗れると思うのかね。

 あーエカテリーナさんまたトリップしてるなあ、暫くは放置だね。

 話も進まないし。




 クリスさんも一緒に偽装婚約について説明中。




「そういうことになっているのね、フフフ。

 さすが美貌だけでなく優れた知性で国宝と称されたエレオノーラ様ですね、智謀に衰えが未だ見られませんよ」

「ああ、我が妹ながら油断のならない相手だ。

 これは厳しいな」


 ええ、あなた方も含めてね。

 本当に油断ができませんよ。


「それで、此方がお墨付きです」

「おお、確かに聖遺物だ以前見た物と同じように神気を発している」

「このように神気の強い聖遺物を拝見したのは初めてですね」

「伯父様、伯母様、それでもまだ抑えられております」

「そうなのかね、クロウ殿」


 ええ、開放したら大惨事です。


「ええ、初めて出した時には大事になりましたね。

 今は俺の魔力で覆うことで抑えられていますが、無いと大変な事になります。

 しかも一定距離を離れると消えて戻ってきます」

「神託されてから時間が経っていないのもあるでしょうけれど、流石は名のある女神様からのお墨付きということですね」




 エリーさんとクリスさんの計画書と言うなの報告書を王様と王妃様が熟読中。




「気が付いた時には手遅れにする計画なのだね。

 フフフ、これは是非とも進めて貰いたい。

 私に出来る事なら可能な限り協力する事を約束するよ。

 受け皿の件も了承した、褒美には数えないが約束しよう、欲も無く真面目に仕事をしている本物の聖職者を困らせる訳にはいかないと言う事には私も賛成だよ」

「先ほどの偽装婚約の件もですが、深慮遠謀な計画、正に神算賢謀と言えます。

 これならば厚顔無恥な無心をしてくる教会の力を抑えられます」


 成程な、実際に鬼はいるから神算鬼謀の鬼が賢になってるのね。

 エリーさんとクリスさんに似合うよ。


「そして、此方が貸し出しと言う形になり申し訳ないのですが、治療魔法を効率よく使う為の補助的な魔道具になります。

 使う事によって必要な魔法のイメージを習得する助けになるので一度治療魔法使いが理解すれば次代へと知識の継承が可能になるかと。

 この治療魔道具で、報告書にも記載があったと思いますが、俺が野獣の二つ名を持つ元高位の冒険者の治療をした事と同じ処置が施す事が出来ます」

「そう言えばブンの腕も治ったと聞いていたよ」

「あの怪我が治ったならマルさんも安心したでしょうね」

「ご存じでしたか」


 流石元高位冒険者の夫婦だね、国王夫妻に名前を知られているなんて。


「クロウさん賢人、野獣、無双、山猫、国宝、聖女と言うのは一緒に冒険をした伝説の仲間ですよ」


 王様が冒険者って夜8時の時代劇かよ。

 出歩くにしても超危険地帯でしょうに。

 だが一緒にいるのがヴォルフガングさんとブンさんか、エンシェントマッスルブラザーズ達がピンチに陥るシーンが見えない。

 エリーさんとマルさんも一緒だったのね。

 あとは聖女さんも入れてフルメンバー。

 つか6人組でフルメンバーってまさか。


「いやだわ、懐かし呼び名だけれどクリスちゃんに聖女なんて呼ばれると恥ずかしわ」


 やっぱりかですか、なんていう最強パーティー。

 でもその伝説のパーティーって何を倒したの、魔王、魔王をぬっころしたのかな。


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