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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
36/51

プリンは好きですか

 数日に渡ってお城に伺って話し合いをした。

 午前から採取をし夕方にクリスさんと一緒に城い赴いて訓練を終えたら密談を開始するという日々を送った。

 案件がどれだけの重大な事だろうと、戦闘訓練の一環である採取活動と万が一の為に鍛えているオッサンとの模擬試合は止めたら駄目だ。


「クロウちゃんって真面目というか、普通は此方からお金を出して来てもらう事案だと思うのよ。

 お仕事も訓練も休んで昼から此方にきてお茶を楽しみながら会議してもいいのよ」

「いえ、採取しているのは何も稼ぎの為だけじゃないんですよ。

 それに、訓練は自分の身を守る為に必要ですからね、何事も継続は力なりと言いますから」

「お母さま、クロウさんの採取のお陰でどれだけの薬が齎されているかご存知なのに、もう」

「フハハハ、連日に渡って休まずに我との訓練を続けるその気概、真に天晴だ。

 婿が駄目なら養子でもよいぞ。

 うん、冗談だ、ハッハッハ、だから叩くでない。

 いや、継続は力なりとな、いい言葉ではないか。

 我が騎士団でも採用決定だな。

 どれ訓練場の壁に一筆したためようか」


 エリーさん的には案件を出来るだけ早く進めたいという思惑なのだろうか、昼間から来てくれればお金も出すわよと提案してくれる。

 だが、クリスさんもオッサンも何故か息がぴったり合って反対意見を述べていた。

 クリスさんにオッサンの血が入っているんだなと思わせる一幕だな。




 合間にワイルド&キャッツで宴会があったりと色々あったが、その話はまた別の機会にしよう。




 話し合いの結果だが、最終的に教会と全面対決するような案件なので、まずは内々に進める事になった。

 出来るだけ問題が起こらないように国王陛下などにも相談をする予定。


「お兄様と軍関連の大臣を務める貴族にについては問題はないと思うのよね。

 問題は宰相や内政系の大臣かしら」


 いや、お墨付きがあるじゃないって思うだろうけど、人間の欲望なんて歯止めが効かないから。


「其の辺りはお任せします」

「ウフフ、クロウちゃんは大物よね。

 この案件って地方の貴族の配下の叙爵じゃなくて国王配下の叙爵だってありえるのに呑気だわ」

「いえ、褒美だというなら、名前を出さないで貰えれば結構ですよ」

「クロウさんですものね」

「うむ、正にこれぞ筋金入りというもの、クロウらしい」


 おい、褒めてんのそれ。

 でも爵位とか直臣陪臣みたいなのを言われてもな。

 領地の管理とかするんだろ、そんな大勢の人の人生を背負えるかよ。


「そうですね、後は教会だからと言って全員が権力欲に溺れている訳でもありませんから、其の辺りの受け皿を作ってあげて貰えれば、負い目がなくなるんでお願いしたいですよ、例えば――」


 ソフィーさんの例もあるように、神殿で治療をしている神官や治療魔法師いが悪い訳じゃないんだよね。

 其の辺りは偉い人にどうにかしてもらうしかない。


 個人的に述べたのは治療魔法師協会を設立して国で庇護する方法だ。

 要は現状の教会の医療行為を国が受け皿になって協会と組合を作って引き受けるってことだね。

 何処かの国が民営化すればなんでもいいと思っているのと逆をいく発想だけど、国がすべき事だってあると思う。

 但し、宗教に余計な権力を持たせるのは地球の歴史でも判るように碌なことにならないからさ、きっちりと抑えつけてもらわないとね。



 爵位が不要って言ったら呆れられたのは既定路線です。



 まず手始めにこの辺境伯領で実際に治療魔法師が知識を覚え、実践出来るかを極秘裏に確かめようという事になった。

 そうしてる間に各方面に対して様々な根回しや準備を裏で進めて準備を整え、用意が整った段階で知識を流布すれば、教会が反対しようと強権を発動しようとしても無駄になるだろうという目論見、発案者は勿論エリーさんとクリスさんだ。




 この素晴らしい女性二人を敵に回さない様にしようとオッサンと目を合わせた。




 知識を習得するのは酷い生傷などの治療経験のある者が好ましい、どうしてもグロ耐性が必要だから。

 そうした理由から、領軍から軍に在籍している治療魔法師と、従軍した経験がある治療施設の治療魔法師の中から信頼の置けて秘密を厳守出来る者が選ばれた。

 病気治療に関しては信頼できる人物という選考基準で、辺境伯家で長年勤める御典医のお爺ちゃん先生とその息子さんが習う事になった。



 俺からこの事案に対して提供するのは複数の医療用魔道具。

 解体図面とかは自分たちで作ってもらう。

 道具さえあれば何とかなる筈だし、自分で書いた方が勉強になるだろう。


 体内透過板。

 体の上に置くと体内の様子を直接に見れる内視鏡とレントゲンを足したのような水晶板。

 人体を解剖しなくても済む透過の魔術の術式が書き込まれている。

 魔法を教えるのが難しければ魔術を付与した道具ならどうよと思った訳ですよ。

 何処かのお貴族様のセリフにあるケーキとパンみたいなノリだ。

 あの真犯人は気になるよね。


 選考基準の一つになったグロ耐性がないと体の内部を直接みるような魔道具なので可也キツイと思う。

 魔道具の利用出来るのは死体は勿論の事、生きている人にも可能だ。

 そうじゃないと診察に仕えない。

 これを使って原理を理解する事で魔法の習得を促す目的もあるからさ。

 使用上の注意というか、生きている人に対してはまず使用対象者の魔力を登録する必要がある。

 これは例のハリセンと同じ仕組みを応用する事で魔力生体障壁や体内の魔力を無効化して透視する為に必要な処置、これをしないと無理だからね。


 実は気軽に振るわれていたあの魔道具は危険な代物だった、登録した魔力があるので攻撃の魔術を仕込まれたりして利用されると魔力生体障壁が意味をなさなくなり直接肉体へダメージを与える事ができてしまう。

 余程に信頼の置けるもの以外には渡せない。

 だからこそ管理もエリーさんがアイテムバックに入れて持ち歩いているんだろう。


 つまり医療用魔道具全般に言えるがを使用する治療魔法師を患者が信用出来なければこの魔道具は使えない。

 魔力の登録ができるのはハリセンと違って短時間にしているが、其の辺りの信頼関係や処置の問題はお任せした。

 だって魔道具には良いも悪いもないからね。

 包丁の話と一緒だと思うので。

 料理を作るために作られた包丁でも、殺人犯が持てば凶器になりえるのだから。

 当然の話だよな。



 先に述べた、魔道具以外だと以下の物になる。

 診断水晶。

 体温、血圧、心拍数、状態を表示する医療用の鑑定道具。

 本来の鑑定という技術を付与した魔道具だが、鑑定だと出てこない情報を表示する代わりに、医療用に特化させてあるのでその他の情報は出てこない。


 魔術式顕微板。

 その名の通り魔術で対象を拡大して見る事が可能。

 此方も板になっていて、タブレットの様に使用できる。

 ミクロの世界へ行ってらっしゃい。

 俺にはあれは耐えられぬ。


 治療指輪。

 患者の魔力を登録してもらう事で補助具として治療魔法を体内に掛ける手助けをする指輪。

 治療魔法を体内に施すのは結構難しい。

 魔力の反発があるのが理由なので、この指輪で魔力を同調して魔法が発動するようになっている。

 やっぱり手に付けるなら指輪だと思うんだよね。

 実際には訓練用の補助具として使ってもらう予定だ。

 この指輪が無くても魔力操作を極めていくか、部分的に魔力量を増やせば治療行為は可能な事なのだから。


 原理や仕組みを説明した仕様書と魔道具を使う為の使用説明書は付けたが、これらは聖遺物ではないけれど一応貸し出しとして預けた。

 魔術式については悪用されるのが怖いから完全にブラックボックス状態。

 他にも思いついた物はあるよ、薬効を判断する物や脳波とか血液検査だとか、いっそ治療の判定をして治療自体も出来るんじゃないかとも思ったが、それはやり過ぎになるので提供していない。

 後は使う人たちにお任せになる。



 


 数日後、無事に医療用魔道具の提供も済みました。





 ふむ、俺の目の前に微笑を浮かべた美女がいる。

 見た目だけなら微笑だよ。

 

「探しましたよクロウさん、ではご説明を頂きましょうか」

「どうぞお掛けになってください、今お茶を用意しますから」


 もしかしてまたクリスさん怒ってらっしゃる。

 サボってた訳じゃないしなあ。

 いや、まさかアレがバレたのか、いやそれだけはないな。

 それとも、手抜きじゃないけど治療が出来る魔道具を作らなかったからとかかね。


「フフフ、貸し出して頂いた魔道具の資料を拝見しましたけれど、位階:宝級以上の魔道具を数点も預ける事が何を意味するかご存知ですか」

「あ、そっち」

「どっちとお間違えなのかお聞きしてもいいですよね」


 失言である。

 思わず思ってた言葉を口走ったようだ。

 覆水盆に返らずとはこの事か、ザマァ故事で好きなのよね、じゃない。

 口は禍の元だな。

 説明するのかぁ。


「いえ、もう少し直接治療できるような魔道具はないのか尋ねられるかもなと」

「それはありませんよ、ええ。

 この上でそんな物を貸し出しとして出されても預かれません」


 目が在りませんよねと問いかけてる、作ってませんよ。

 そうですよね、危険物を渡せなんて言わないですよねぇ。

 鑑定不可能にしてたから又もや誤解が生まれてた。

 クリスさんは位階:宝級以上と言っていたが、実際はこちら。


 分類:医療用魔道具

 位階:幻、

 特殊:不壊:清浄:補助:鑑定不可:魔力操作:魔力同調

 

 名称は其々ついているが分類から下だとこんな感じ。

 全て位階:幻級で後は其々に特殊な魔術付与を付けている。

 採取を続けてたのはコレを作るためなのが大きかった。

 付与を沢山付けるにはそれだけの素材がいるんだもの。


 教えられない。

 いやあ、どんどん秘密が増えるね。


 まあ絶対にバレない自信はあるからいいか。


「ハハハ、作れと言われたらどうしようかと思いましたよ」

「……クロウさん、もしやこれらの魔道具は作られたと言う事ですか」

「……」


 うぉぉ、思考加速。


(マスターらしい失言と態度ですよ、ええ)


 いや待って、今の会話で判る筈がないだろう。


(いえ、今の流れで普通の人なら聞き流す可能性はあっても、クリスさんなら聞き逃しません。

「作れと言われたら」と言う事は作れるけど言われたら困ると解釈できると言う事です。

 さらに問いかける事で判断してますよ。

 思考加速に入るまでのマスターの一瞬の沈黙、クリスさんにはこれで十分だったでしょうね、恐らく確信したと思われます)


 思考加速終了。


「何卒、ご内密にお願いします。

 此方をお一つどうぞ、お勧めの一品です、えへへ」


 俺は頭を下げつつ、シエスタに楽しんで食べようと思っていた試作品のアレを進呈した。

 クレームブリュレ、女性にはスウィーツだ。

 これで、どうかご勘弁を。

 締まらないなあ。


(大変マスターらしいので宜しいかと)

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