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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
32/51

けしからんぞ

「貴方たち、反省してますか」

「ごべんざさい」「ジズダー」「ごめん」

「もうしちゃ駄目ですよ」

「……」

「反省は」

「じでまず」「ごめんね、シスター」

「次したらメですよ」

「……」


 おい、さっきは泣く程反省してたのに急に黙るって。

 拒否ってんのか、反省はするけど次もするってか。

 ほら、お前らじゃなくてシスターさんが泣きそうだよ。


「みんなが傷ついたり、何かあったら……ぜんぜいは泣いじゃいまずよ」

「ぅ……」


 既に泣いているのは仕方がないだろうな。

 現在は子供たちのいる孤児院でシスターが泣きながら子供を説教している最中だ。






 無事に子供たちを連れて帰って来たわけだが。

 森を抜けて、門の所でトラブル発生である。


「ふん、獣耳か、孤児院の子だと誰が証明できるのか、例外は認めない」


 冒険者カードや住人の証明カードを持っていないと通行料が必要だとか。

 子供でも取るのかよとは俺の常識だけである。

 お子様運賃もありませんでした。

 子供達は住人カードを不所持だった、住民カードの発行申請にも金がかかるとか、まあ当然か。

 仕方がないので俺が払っておいた。


 しかし、さっきの門番とか、なんだか子供たちに対する態度が悪いな。

 どういう教育されてんだか、ケモミミ馬鹿にするとか許さん。

 後で領主にちくってやろう。

 フハハハ。


 どうやって出てきたのかと門を過ぎてから聞いてみたら抜け穴があるのだとか。

 先に言っとけよ。


 屋台のある広場で塩胡椒味の串焼きを人数分かって小腹を満たしておく。


「食べていいの」

「遠慮なんてしないでいいさ、子供は笑って有難うっていっとけ」

「ありがとう」「兄ちゃんウメー」

「ほらな、そいつみたいに齧り付くのが正解だ」

「うん」


 更に商店街で卵や塩なんかを数点買い求めては収納して子供を驚かせた。

 まあ、物が手から消えたら驚いて当然だ。

 リアルマジックだもの、俺でも日本でみたら騒ぐわ。


 そんな感じのやり取りを終えて着いたのは意外と悪くない区画。

 住宅地と商店の広がる区画の間だな、教会の敬虔な信徒などの寄付で運営している孤児院なので元が教会に寄付した商家の持ち家だったのだとか。

 土地は所謂領主様の物である。

 だからその土地に住まう権利を持たせるかどうかになる訳だ。

 それはこの領都だって変わらない。

 税金が納められなければ基本的には土地に住む権利は取り上げられるという仕組みになっている。


 さて、現在泣き落とし状態で子供達に説教をしているシスターだが、ものすごく感謝された。

 子供達を助けて連れて帰ってきただけでなく、通行料も払っているのを知ったからだ。

 森では偶然の巡り合わせだったし、通行料は喜捨だということで納得してもらった。

 そして先ほどの会話と言う訳で。



 つかシスターさんが若い。


 アイちゃん曰く。

 教会によっても違うが、殆どの宗教が世間の隔絶していない。

 一部の巫女のように自信の意思で神に身を捧げたりはあるけれど、シスターというのは貴族の子女が花嫁修業の代わりにと奉仕活動として働いている。

 治療魔法に適正がある場合は教会に取り込まれる事になる。

 流石宗教、テンプレ的に暗黒面がありますな。


 それで、孤児院を運営している若いシスター、ソフィーさんは後者。

 週の何日かを教会での活動に充てているそうで、今日も出かけた所で孤児たちが脱出していたのだとか。

 途方に暮れて、探しに行くか迷っていたところに俺が連れて来たと言う訳だ。


 そして現在、説教に疲れたシスターが目の前にいる。

 俺はちょっと遅い昼ご飯を作っているんだが、ソフィーさんが自信を無くししょんぼりしてる。

 お前らちょっとは手加減してやれよ、落ち込んでるぞ。


 昼飯に作ったのはお好み焼きである。

 肉にしろ野菜にしろ大量に異次元倉庫にあったし、バーベキューとかでも良かったが、個人的にさくっと作れて大量生産が出来るお好み焼きの方が楽だったのだ。

 炭水化物も一緒にとれるからな。

 たこ焼き用の鉄板があったらきっとたこ焼きパーティーにしてた。

 錬金で鉄を加工して今度作っておこう。


 鰹節はないけれど、特製のソースとマヨネーズ、薬味に白髪葱の薬草(獣人も問題ないのはテンプレだった模様、まあ人だからな)。

「本日も糧を頂き」「あっつあつぅ」「ふわふわぁ」「お肉じゅーしー」「白いのがなんかうめえ」と子供たちにも大好評である、但し行儀は悪い、シスターがお祈りしてただろうに。


「神に感謝を捧げます。そして恵みを齎してくれたクロウさんにお礼を」

「おー、にいちゃんに感謝を」「お兄さんにお礼をー」「うまままにままうお」


 おい、神様にも祈りを捧げて置け、本当にいるんだからね。


「お昼まで作っていただいてしまって」

「ソフィーさんもどうぞゆっくり食べて下さい。

 手前味噌ですが美味しいですよ」

「はい、頂きます」


 中身はオッサンな俺と違って、ソフィーさんはまだ16歳だ、苦労もあるだろう。

 成人はなんと12歳、早いな異世界。

 実際は15歳ぐらいで家を出る準備をするのだそうだが、それでも早いわ。

 12歳で成人とかちょっと利家さんの黒歴史を思い出しちゃうよね。


 話が逸れた。


 世の中にはクリスさんみたいな人物もいるけどあの人は特別に優秀なだけだからね。

 普通に17歳の女性が子供の面倒を見るのは大変なのだと思うよ。

 ましてやこの子供たちである。

 採取に出かけた年長組からすれば、母親のような存在というよりはお姉さんなのだろうな。

 若干気の弱い優しい姉の為にも年下の子供たちの面倒を見ている状態だろう。



 さて、孤児院の問題は色々あった。

 まず、資金が少ない事。今はギリギリでなんとかしているそうです。

 寄付は基本的に教会へと集まる。

 これは教会への貢献度として記録され、墓に教会からの感謝の文言が刻まれるのだそうで、死後の導きに影響するという。

 何そのお金を積んだら徳の高い素敵な長い戒名が貰えます的な流れ。


 孤児院に直接の寄付しても、一部を管理費として上納する必要があるのだとか。

 それに教会へ直接寄付したような特典はない。

 単に感謝を子供たちから受け取るだけであり、教会からは表向きは感謝され、裏では扱下ろされるという具合、信心する場所もしらぬ不心得者だそうだ。

 教会に寄付された孤児院宛ての資金は、多くの孤児院へ分配される。

 勿論一部の行方は管理費用、記録費用だとか文言作成費だとかで別の名目になって、別の場所へ行くのだそうである。

 それって懐って場所だよね。


 唯一の抜け道が物品の寄付だそうで、施設という意味で孤児院もそうした扱いなのだそうだ。


 孤児院のある土地に住む権利、立地の問題はちょっと複雑だ。

 この孤児院の立地は都市の中でもいい所にある。

 この孤児院を寄贈した商人の子が亡くなるまでは税の支払いもその商家がしていたが、孫になった所で打ち切られ、教会が支払う事になっている。

 其れなりの額だそうで、この孤児院への寄付金の給付額を減らされている。

 一部には売却してしまえという声もあり、買い上げ用とする商家から嫌がらせもあるのだそだ。

 まあ慈善事業だけで、霞を食べて暮らしていけないからね。



 預かっている子供たちの種族的な問題もあるそうだ。

 この世界は人類として文人族以外にも獣人族や光輝族、闇輝族などの種族が存在している。

 各種族毎に国を作り暮らしている訳なのだけれども、獣人族だけは事情が異なる。

 例の一国が滅んだ魔獣暴走を引き起こしたのが獣人族の王国だったのだ。

 統率者と国を失い命からがら逃げだした子孫達は他の国に流れ村を作ったりしたが周辺国にも当然被害はだしていたから、定住してもいい扱いは受けれない。

 入国を完全拒否する国もあったのだとか。

 結局選べたのは傭兵として活躍したり、流浪の民として世界を放浪する事だった。

 流浪する獣人族というのは今でも続いている。

 そんな歴史を持つ獣人族だから未だに屈辱的な目で見る人もいる。

 国を持たない放浪者だと。


 だが更に問題はあって、各種族には純血なのかそうでないのかという問題があるのだそうだ。

 所謂ハーフ系ってやつね。

 これをこの世界の純血である事を誇りに思う人は雑種と呼ぶ。

 獣人族というのは生まれ持って大きな体格を持ち、獣の相貌が強く毛皮な部分も多い。

 獣化という状態になる能力を持ち、獣人族狼系種なら人狼化といった能力がある。

 ハーフである獣耳族と呼ばれるこの子達は獣化が出来ない。

 故に人からも排他的にみられるし、獣人族からも出来そこないと言われるのだそうだ。


 けしからんぞ、非常にけしからん。

 顔が人間で耳と尻尾がふさふさとか萌えるだろ。

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