マッチポンプは駄目ですよ
冒険者と一言で言っても多種多様な仕事があるのは、仕事が分類されていることからも明らかだ。
分類された其々の分野を選ぶのは冒険者の気質が元になている。
バスターのランクを上げていくタイプ。
魔獣の討伐を主に受ける冒険者と言う事だがこいつ等に多いのは。
英雄願望が強い若い冒険者。
魔物や魔獣に恨みを持つ復習者。
魔獣との戦闘を愛する戦闘狂。
高額な討伐報酬と素材報酬を狙う実力者。
など、他のクラスと比較しても戦闘力がある強者が多い。
依頼が無いと他の仕事も受けるけれど、討伐系は何かしらあるものだ。
ハンターのランクを上げるタイプ。
森に詳しく動物を罠に嵌めて狩猟する罠系の狩人。
単独を好み、隠密行動が得意な弓を使う狩人。
魔獣は相手にせず動物のみを狙う狩猟専門家。
普段は村に住んでいる村専属の狩人。
基本的に彼らは協調を好まず単独で森に入り狩りをしているらしい。
冷静で自分の実力を把握している者が多く無理な奥地へは入らない慎重派。
大規模な畜産業が難しい辺境の貴重な蛋白源の供給者でもある。
ガーディアンのランクを上げるタイプ。
安定した稼ぎを目的としている冒険者。
対人戦闘のスペシャリスト。
各地を巡る事を目的とした旅を愛する放浪者。
商人と懇意になり専属で護衛を続ける者。
収納系の能力を金儲けに使う冒険者。
商人や商隊の護衛、貴族の警護などを受けるタイプ。
実力はあるが積極的に戦闘をすることを好んでいない者が多い。
何よりも一定期間以上は町に居なかったり何処に行くのか不明な者達だ。
シーカーのランクを上げるタイプ。
冒険者として活動するのはダンジョンアタックのみ。
一攫千金を狙う者。
修行に潜る者。
希少なアイテムを狙う者。
探求を愛する者。
ダンジョン内の希少素材である薬草などは取ってくるが基本的に一攫千金タイプが多いので浅い草の金にならない物には目もくれない。荷物の限界なども在るため仕方ないとも言える。
コレクターのランクを上げるタイプ。
このクラスだけ上げるタイプじゃないかもしれん。
ニュービーからシングルの新人冒険者。
薬師として材料から集めるタイプ。
魔獣討伐、戦闘行為を苦手としているタイプ。
単純に戦闘力が低く他の職に就けないタイプ。
積極的に冒険者組合が育てようとしているのがコレクターになる。
単純に高ランクのコレクターが存在しないのが問題になっているだけだ。
クリスさんがコレクターを育てるのが難しいと判断し他で補おうと考えたのは正しい判断だったと俺は思う。
現状のコレクター事情を見れば仕事を受けている者達は戦闘力の低さが目立つ。
何故クリスさんがバスターを選らんだかについては簡単な消去法だろう。
現状で何か依頼と一緒に薬草を納品してくれているのは実はハンターだ。
だけれども彼らは慎重で自分の実力以上の深さの森に決して入らないし、協調性より単独を好む為にパーティーを組ませたりも難しい。
ガーディアンは護衛で森の奥に行くわけもないし、元々一所に留まらないので森の知識も少ない。
安定志向の者が多いので依頼を受ける可能性が低い。
シーカーはダンジョン内部の希少なアイテムを探してくるのと同時に一攫千金を狙う博打打で、金にならない仕事を受けるはずがない。
やってる事は何となく森もダンジョンも似ているが稼げる時の確実性の割合が違いすぎるし、似たような事だからと思っていても森とダンジョンでは気を付ける事や魔獣への対応などが全く違う事が大きい。
こうした理由から中層、深層の素材を取れるとすれば戦闘力が一番高く、森の深くまで入り込み討伐報酬を狙うことがあるバスターになった訳だ。
一部のコレクターの仕事とされる魔獣系の素材集めを担っているというのもあった。
だがしかし、こいつらってば火力馬鹿とか阿保が多い。
まず薬草の知識が少ない。
採取方法を知らない。
保存方法を知らない。
こんなのばかりだったそうだ。
魔獣系の素材に至っても運良く使える物があればいいけども殺して魔晶石を取る事が第一になっているから、何処かの馬鹿がやったみたいなボロボロの素材を持って帰ってくるのが関の山だそうです。
ごめんなさい。
そんなよしなしごとを思い浮かべつつ、何か改善案は無い物かと考えながら俺は森を進んでいる。
いやさ、テンプレ的な要素で魔晶石を砕きまくって魔素を取り出す何かを開発して栽培する施設でも作ればいいんじゃないのとかも考えたんだけど駄目だった。
薬草は魔法薬や薬に使えなくてもいいのなら、森じゃなくても栽培可能だという話を聞いて考えたんだけどね。
まず、試算段階で躓いた。
屑な魔晶石でやろうとしても維持費だけで莫大な金額が掛かる。
そして諦めた一番の要因は危険性だった。
一つ間違えれば魔物の誕生に繋がるような危険な行為になる可能性。
アイちゃんにも相談したけど魔物発生の確立は非常に高いと言われた。
都市部でそんな状況をつくる危険性は冒せない。
生活圏に近い分魔物の発生は確実だそうだ。
と言って森でやろうものなら魔素の循環に影響を及ぼしてバランスの崩壊から魔獣暴走の引き金を引きかねない。
自分でフラグ立てて魔獣大発生と暴走が起きたりしたら洒落にもならない。
最悪のマッチポンプじゃないか。
悩みは解決しなかったよ。
普通の動物は基本的に無視して森を進む。
なんで基本的にと言われると、美味しいとされる動物を狙わない理由が無いから。
メインにして狙う事はしないから見かけたら弓の練習がてらに的になってもらっている状況だ。
武器屋に陳列されていただけの購入した弓なので性能も語るべき所は何もない普通の弓。
はっきり言えば魔法の方が優秀なんだけど、物理的な遠距離攻撃手段は持っておくべきだとヴォルフガングさんからのアドバイスを貰ったんだよね。
あの筋肉鎧親父は優秀というのを通り越して、武神かよと言いたくなる程に様々な武芸に通じていた。
武芸百般を修めた騎士だったよ。
騎士で領主なのに二つ名持ちっていう点がおかしいけど無双って呼ばれるだけの事はある。
「敵の扱う武器を知らなければ守るべき者を守れないではないか」ってどこの兵法家なんだ。
いや至言だとはおもうけどさ。
そんな一言でありとあらゆる武器を修めてしまったとか、これだから脳筋は恐ろしい。
魔纏術を使わない全力の模擬戦、武器有、武器無で勝負をしたんだけど、精神的にだけどフルボッコにされた。
屈辱だわぁ。
喜々として斬りかかってくるオッサンの攻撃を往なしても軌道が変わったりフェイクに引っ掛かったりさ。
それって俺が加速世界に入れば勝てるだろうにと思うかもしれないけど、それじゃ修行にならないから。思考加速を封印して、通常の動体視力と集中力でのみ戦った。
昔から動体視力は良くて渡米した野球選手とかの記録を超えてたんだ。
そのお陰で喧嘩に負けた事もなかったのが自慢だったけど、そのよく見える目のせいでフェイントとかに引っ掛かって攻撃を貰うんだよな。多少は動体視力と集中力で世界がスローになったりするのにだよ。
格闘技における最大に重要な天性は動体視力と思考速度だと思うのだが、素人じゃこんなもんよと証明されたというところだろうな。
ついつい熱くなって夕方にクリスさんを送って真夜中まで手合わせしてしまった。
今日も伺う予定だ、暫く夕方から夜は毎日訓練漬けだな。
今も疑似的にEMSの能力で筋肉を鍛えながらの移動をしてる。
採取は基本的にアイちゃん任せな部分があるけどこれまた、アイちゃんに任せているだけじゃ技術が伸びない。だから最低限目に映る範囲内の薬草は自分自身で採取してる。
依頼を受けたのは薬草のみの採取。
生息している場所的には森の中層に入る辺りから中層にかけて。
森の深層への採取依頼も存在してけど保留にしている。
まだ俺には早い。
(マスター、左方向500メーターの付近に移動する子供と思われる反応が複数あります。
その背後を複数の魔物が追跡中)
おいおい、もうちょっとで中層に入るような場所でなにしてんの。