表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
29/51

取調室の常連

 冒険者組合を訪れること初日から三日連続、取調室(会議室)へ連行されること実に三度目。


 目の前にプリプリと怒っているクリスさんがいる。

 現在お説教を受けているのだ。

 あの町中での犯罪者撲滅騒ぎとドンチャン騒ぎについて。


 衛兵に連行された容疑者数26名、逮捕者数12名という中々の大騒ぎだったそうな。

 他人事のように軽いけど、言葉で心を折って、犯罪者は電撃で失神させただけだし。

 ある意味あれぐらいなら祭りと変わらんよね。


 喧嘩騒ぎはこの世界だと娯楽みたいな所もあるしさ。


 オーディエンスも楽しんだから何も悪くない……と思ってたんだが。


「既に領都全てで昨日の噂話が広まってます。 

 流石に私もこうなると予想していなかったのに悪乗りはしましたけれど。

 多数の人間を一度に相手をするなんて危険すぎる行為です」


 ネットもテレビも無いだけにホットなニュースはその手の噂好きな淑女の方々が波のように拡散させるんだろうね。

 必然的に面白がって広めるわけで、今では噂の内容が大分改ざんされているとか。


 一部ではクリスさんの恋人が両親に挨拶しに行って無理やり婚約を迫る婚約希望者集団を叩きのめして守っただとか、不可視の一撃で百人の犯罪者を殲滅したチート野郎だとか、クリスさんの恋人はコレクターの芋引き野郎だとか、凄い金持ちで騒ぎを見てた連中に酒を奢るほどに豪気だとか、敗者に追い打ちをかけるような非常な男だとか、クリスさんを騙す詐欺師だとかと色々な内容になっているそうです。


 間違えているのもあれば、中々に真実を言い当てているのもある。


 愚者にひそむ賢者だな。

 何も発表してないのに好い線いっている。


「まあ、これも計算通りと言っていいと思いますよ。

 変人や犯罪者は捕まったでしょ」

「それはそうなのですけれど」

「じわじわとやると逃す恐れがありましたから、昨日の小芝居だった訳ですよ」

「小芝居は誘いにのった私も私ですから、何も言いませんけど。

 クロウさんも約束通り今日も来ましたし」

「でしょ、それに婚約者って噂がこれだけ広まれば依頼は達成ですよ。

 少し広がり過ぎな気もしてるけど……まあ過去は変えられないです。

 未来を考えて取り合えずはコレクターの事を進めましょう」

「はぁ、自分でやり過ぎを認めておいて反省はしないけどねって、問題児が増えただけの気がしてしまいます。

 でも、そうですね言っている事は正しいので、こちらに用意した依頼書を見てください」


 おお、切り替えがはやいな。だいぶ呆れたという感の方が強いけど。

 あれか所謂、諦観というのだろうか。

 出来ればそうでないことを望もう。





 薬草の多くが魔素の濃い森で採取される。

 森の浅い地域に生息している薬草などで、なんとか一般向けの需要は賄える。

 だが其れなりの魔法薬の作成や冒険者に必要な薬草の量を集めようとすると中層地域、深層地域と深い場所へと森に分け入る必要がでてくる。


 在るか無いか判らない品物を探さなくてはならないというリスクが何よりも大きく、採取されてくる品物は全て討伐や狩猟の際に偶然発見した物のみ。

 その手の冒険者の採取技量や保管技術は宜しくなく、品質も下がる一方だとか。


 当然、採取品が届かなければ薬は調合されないし、希少な物は値段がつり上げられてすぐ高額になる。

 価格を領主が抑えれば売り渋りが起きるか別の領地で販売しようという事にもなる。

 そんな悪循環に陥っているのが現状だ。


 薬品組合、薬師組合、魔法師組合、魔術師組合、錬金師組合、等々色々な立場の組合が値上げを画策しているそうである。

 中には当然談合を組合の枠を超えて行っている組織も在るらしく問題視されているが、供給元である冒険者組合から薬草が届かないのも一つの要因なので強く出れないらしい。


 クリスさんがコレクターのカウンターからバスターのカウンターに移ったのも、改善が進まない為にバスターの専門家に協力を仰いで何とか少量の希少薬草を手に入れる為の活動だったそうである。



 薬草の採取依頼書と一緒に置かれたのは地図だった。

 例のブンさんが貰おうとしてた奴だな。

 採取できる薬草の種類、過去に採取された場所など冒険者組合がコレクターや採取した事のある経験者から情報を買い取って作った薬草分布図。

 但し森の上層と言われる浅い場所のみしか記入がない。

 浅い場所は群生地域まで調べ上げられていて、これを使えば新人でもそれなりに稼げるのでコレクターの仕事に見込みがありそうなら受付嬢の申請によって位置情報を教えてもらえるらしい。


 俺に求められているのは……


 コレクタークインタプルになる事。

 あれ、なんか違う気がする。

 ティーナって呼ぶために頑張る。

 クリスさんが喜ぶから。

 偽装でも婚約者として頑張る。


 どれも素敵な事だが違うな。

 領主一家に認められたんでちょっと違ってきてるけど、俺の異常性を理解できるクリスさんに専属受付嬢になってもらう為だったんだよな、当初の思惑だとさ。


 となるとだ、本当にやるべき事ってなんだろうか。

 コレクタークインタプルだけを目指す事が正しいのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ