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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
28/51

ホイホイ

 充実した一日だった。まだ終わってないけど。

 今は冒険者組合への帰り道です。

 ちょっとお互いに意識しちゃったりしてて、会話がない。

 ヘタレとか言うな。ちゃんとした理由があるんだよ。

 腕相撲の勝負が終わって、クリスさんが父親の頭をハリセンで叩いた後の話になる。




「クロウちゃん、このままクリスの婚約者になって頂戴」


 そんな無茶な事をエリーさんが言い出した。

 当然クリスさんが「お母様」と抗議をしようとしたんだが。


「どうせこのまま婚約者も作らずにいたら、有象無象の男が今まで見たいによってくるのよ。

 ならクロウちゃんに頼んで婚約者になってもらえば、少なくとも礼儀を知る相手には効果があるんじゃないかしら。

 ちょーっとクロウちゃんは嫉妬と妬みぐらいは買ったりする可能性はあるけど、クリスが専属受付嬢になるなら、遅かれ早かれそういった輩は出てくるもの。

 クロウちゃんならそんなの吹っ飛ばせる実力もあるから安心でしょ。

 それにクリスちょっとこっちにいらっしゃい……でしょ、……おか……、……貴方……わ。ね、専属受付嬢になるんでしょ」


 偽装婚約に不満もあったようだけど、最後には言われた内容に間違いが無かったのを認めていた。

 まあ、俺との繋がりは損にならないとかそういう説得もされたようだけど。

 ここはクリスさん達ノルトマルク家の家風を信じよう。


「クロウさんが良ければ宜しくお願いできますか」

「えーと婚約者って事で今日みたいな輩から守ればいいんだよね」

「はい、それでお願いします」


 それぐらいならエリーさんが言うように専属受付嬢になってもらうのと何も変わらんだろう。


「クロウちゃんには何か報酬を渡したいのだけど、欲しい物とかないのかしら」


 報酬ねえ、今欲しいものっていうとあれだな。


「えーっと、では槍とか武術の指導者の紹」

「では、我が直々に鍛えてやろうではないか」


 どんだけ乗り気なんですか。

 紹介して頂けないかと思ったけど、辺境伯当主自らってどうなのよ。


(騎士として最高の評価を受けたこともあるようです、中々の好条件になるかと)


 へえ、凄いな。

 足りない本格的な槍捌きとかも習得したかったんだよね。


「あら、いいわね。

 クロウちゃんが我が家に来る事で信憑性も増すわ」

「えっと、領主様のお仕事に問題が無ければ大変ありがたいのですが」

「問題はないぞ。

 自己鍛錬の時間を使って有望な若者を鍛えるのは楽しみだ」

「基本的にこの人って暇があれば鍛錬しているか、騎士団の訓練をしているのよ。

 内政は私もいるし問題はないわ」


 いいのかそれで、大変ありがたいけどね。

 エリーさんもヴォルフガングさんも納得してるし、いいか。

 最高の騎士と言われた人から習う武術だ、必ずや俺の力になる筈だ。



 そんな訳で訓練と偶にの食事を報酬に偽装婚約者として振る舞う事になったのが無言での帰り道の真相だ。

 腕ぐらい組んで帰らないと信憑性がないわよとかエリーさんが言うから。


 いや、俺は幸せですよ。

 こんな美人と一緒に歩けるのだから、しかも腕を組んで。

 なんか良い匂いがするんだよねぇ。

 これがフレグランスというものか。



 危うくトリップするかと思った。



 街を歩く中、俺を嫉妬の目付きで射殺さんとばかりに睨む男性達。

 キャーというような黄色い声を上げる女性陣。


 刺されないように気をつけなきゃ。


(大丈夫ですよマスター。マスターの障壁を貫けるような人物はこの都市に存在していません)


 安心できる情報だけど、刺されることが前提になってるよねそれ。




 エスコートしてきたという風に冒険者組合までクリスさんを連れていき、そこでお別れして無言のドキドキタイムが終了した。

「ではまた明日」「お待ちしております」と目線を合わせた二人の交わすやり取りは再会を約束する風に見えただろう。

 職員達からの祝福の声と冒険者の怨嗟の声が耳に残るわ。

 実際は「明日仕事受けに行きますね」「ええ、受付で仕事見繕って待ってますよ」という会話である。

 エリーさんの言う通り息だけは既にぴったりなのかもしれない。

 いや、クリスさんが自棄で合わせている可能性もあるな、うん。




 しかし、マップがヤバイ状態だな、ちょっと笑える程釣れた。

 そのまま注意しつつ、建物を出て冒険者組合が見えない距離になったところで予定調和の如く絡まれた。

 組合から出てくるのを出待ちしてたんだよね。

 其処から陰に隠れながら着いてきたとか、本当、ごくろうさまだよ。


「てめえ、クリス様と何で腕なんか組んで」

「そうだ、どういう事かクリス様親衛隊である我々に説明してもらおうか」


 雑魚A~Zという感じの輩が現れた。

 エンカウントはええよ。

 つかクリス呼びってお前ら許してもらってないだろうに。


 にしても親衛隊って、これがクリスさんの所に並ぶ冒険者の一部かね。


「何者か知らないが、クリスさん見守る会としては先ほどの光景見過ごすわけにはいかんな」

「拙者たち、街の有志で作ったクリスお嬢様と会話し隊も同様だ」


 さらに雑魚が増える増える、おい其処の会話し隊って普通に話しかければいいだけだろうが。

 此処までコアな連中が集まるとか、どんなけ変態から人気を集めてるんだよクリスさん。

 雑魚が仲間を呼ぶ動作をしてもいないのに自然に増殖したぞ。




「え、婚約者なんだから当然だろうに、あ、領主様公認だからね」

「なんだと」「まさか」「そんな」「馬鹿な」「あり得ない」「無双が許しただと」「奴に勝ったというのか」「公認」「既に挨拶をすませたということは……グハァ」


 色んな叫びと嘆きと哀愁が漂っている。

 素晴らしいハーモニーだな。

 数名を残して粗方の男が膝から崩れ落ちて地に臥した。

 拳を交える程でもない奴らが脱落した。


「信じぬ。

 知っているぞ、貴様が只のコレクターに過ぎない事を納品しているのは調べがついているのだ。

 コレクターの件で悩んでいたクリスさんに上手く近づいたに違いない」

「もしもそうだとしてだ。

 クリスがコレクターの件で悩んでる事を知っててお前何してたんだ」

「俺はバスターでこそ輝く男だぞ、採取など弱者がすることだ。

 幾らクリスさんの頼みでも引き受けれない事がある。

 彼女のような美しい女性は俺の横に居ればいいだけだろう。

 貴様を倒せばコレクター窓口などに行くと言わずに正気に戻るだろう」

「はい、妄想癖乙」


 気持ち悪い妄想野郎だったので、バチンと電撃を当て失神させてご退場願う。


「フッ、何をしたか知らぬが、今倒した奴など所詮はバスターだけの脳筋ぞ。

 我らが貴様の秘密を知らぬと思うたか、貴様昨日はワイルド&キャッツに潜り込み、次はクリス嬢を狙おうなどと男の風上にも置けぬ、故に成敗する」

「へえ、なんでそんな事を知ってるの」

「ククク、日夜クリス嬢の周囲に潜み情報を得るのは当然の事。

 昨夜もクリス嬢の後を付けた際に不審な人物である貴様を見つけた。

 貴様の動向を探る為に我自らワイルド&キャッツに一晩張り込みをしたのだよ」

「はい、ストーカー確定な、自白もオッケーと。

 犯人逮捕」


 バシッっとこれまた失神させる。

 つか犯罪者じゃねえかこいつ。

 野放しは拙いだろう。


「我らはクリス嬢を影から見守り不穏な輩を悉く排除する真の守護者」

「さっきの奴をまず排除しとけよ」

「あれは同志、情報担当のみの弱者、守護者の狗として使っていたに過ぎぬ」

「叩けば余罪がでてきそうだなお前らの集団って。

 犯罪者は捕まっておけよ。

 一網打尽だ」


 近づく不穏な人物を排除とか良い人かと思ったのに。

 あれを同志とか言っちゃうのね。

 ビリビリでまとめて排除してやるよ俺がな。


「なんなんだ一体、なんなんだよお前。

 どうやって同志達を倒しているんだ」

「なんでも聞けば教えてもらえるのは学生だけだ」

「意味が解らんぞ、卑怯者がっ」

「解らないから卑怯とか、笑えるぞ。

 ま、チートなのは確かだけどな」

「やはり、ズルでは、ギャア」


 同じようなやり取りを更に十数回続けた、変なのに絡まれてたんだなあクリスさん。

 変人に人気あり過ぎじゃね。


 さてと、こいつ等どうするかね。

 変態とか犯罪者は衛兵行だなあ。

 枷でも嵌めて、所持品没収っと。

 触れるの嫌だし、魔法で回収していこうかね。


 後始末を終えたけど、ギャラリーも増えたしどうするよ。

 うーん、良い事思いついた。

 喧嘩騒動もお祭りみたいなもんなんだろうし、いっちょみんなで騒いだらいいだろう。


「クリスに群がる変態達を一掃したお祝いをしよう。

 全員に酒奢るからついてこい」

「うひょー気前がいいな兄ちゃん」

「その代わりに、聞いてた事だけで構わないから、こいつ等の言ってた変態発言について証言してくれよ」

「おうおう、それぐらい安いもんだぜ」

「んじゃ、こいつ等縛りあげて運んじまえ」

「おっしゃ、俺は衛兵のとこまでひとっ走りしてくるぜ」

「あとこの都市で変態見つけたら俺まで通報よろしくな。

 犯罪者にはきちんと教育するからさ。

 会場はワイルド&キャッツな」

「任せて、変態には鉄槌よ」


 オーディエンスを引き連れてワイルド&キャッツになだれ込んだ。

 悪人から回収した分の金はぱっと使い切る事にしたので、みんなに酒と料理を振る舞った。

 うん、泡銭の悪銭だから気前よく浄化するには、協力者のみんなの為に使わないとな。

 既にブンさんもマルさんも俺の噂話を聞いていて、事情を或る程度話したら笑っていた。


 縛りあげた奴らのその後だが衛兵が引き取って取り調べされた。

 ストーカー恐喝、不法侵入など犯罪行為をしていた人物は審議を経て正式に逮捕され犯罪者の労働所へ。


 会話し隊など、最初に崩れ落ちた多少迷惑な行為のみだった者は俺からも減刑を求めたこともあり、領主の娘に対しての不穏な行動にのみ注意をされ、奉仕活動を言い渡されていた。


 俺が所持品を回収したのは問題にならなかった。別にこれは圧力をかけた訳でもなく集団に囲まれて命の危険にさらされた事に対する慰謝料ってことになるのだとさ。


 今回の騒動で俺が得たのは「何をしたのか判らない間に十数人の男たちを沈めたチート野郎だった」という強ち間違いではない好意の欠片もない噂と、翌日に喰らったクリスさんのお説教だった、解せぬ。

まだまだ連投はこれからじゃから




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