イッツファンタジー
忌避魔術の範囲を超えると雰囲気が変わる。
獲物見つけたと襲い掛かる魔獣のテリトリー。
なんていうか、獣とか鳥とかね、動物系統は大丈夫なのだけど。
虫系はグロイ。もう只一言グロイ。
巨大になった複眼。
ギチギチという牙や体の部位から発生するノイズ。
跳びかかってきたのはスーパーの買い物かごサイズの眺咬蜘蛛。
大きすぎると思います。しかも木々を使った変幻自在な機動で真上から噛みついてきた。
こいつが厄介なのは上からと思ったら糸を尻から出していてそれを利用して急停止して機動を変えるところか。
自由にバンジージャンプするとは生意気な。
だがその動きは知っているぞ。
巣を張っている訳じゃないから、勢いのある跳躍は最初だけ。
あとは振り子のように糸をくっつけてある木に逃げるんだろ。
それに合わせて此方からの攻撃だ。
今日の課題は魔法の併用だからね。
槍でグサッとはやらない。
想像するのは可能性、空想は無限大だぜ。
大気、成分は窒素とか酸素とか二酸化炭素と諸々ある。
個体窒素を生成、金属酸素でコーティングさらに魔力でドン。
真空の刃はどうかと思うけど、物理ならどうよ。
序に体内に液体窒素で全身の血を凍らせてやんぜ。
【空滅刃】と名付けよう。
読み方はエア・バニシング・ブレード、恥ずかしいし、長い、却下だ。
え、空滅刃も変わらないってか、名前は意味が判り易けりゃいいんだよ。
ふむ、威力は申し分ない。
魔法であるから相手の魔力生体障壁も削って一撃を与えているし、追加効果も悪くないではないか。
弾丸状態だと障壁を削る魔力量的な問題が発生するな。
この世界の法則で魔力生体障壁を削れないと攻撃は弾かれてしまう。
最低でも魔法なら野球のボール程の大きさが必要になる。
昨日やったみたいに水に相手が突っ込めば別なんだけどね。
殺傷力的には空滅刃が上かなとレパートリーの一つに入れておこうと思う。
森を進む毎に色々と考えた魔法を試していく。
圧縮空気の塊で攻撃するエアハンマー的な何かを発展させて、圧縮した空気を爆発させる方法とかね、体内に放り込んでみたらスプラッターだった。
思い出しただけでヤバイっ、但し魔力生体障壁を削って放り込むという行程がある。
化学の実験風に水素と酸素を纏い付かせて電撃でドカンと一発は爆破系でいいのだろう。
他には酸素を三つ結合させて毒とか、二酸化炭素で気絶とかね。
一番良くできたのは圧縮した空気とエアロゲルで作り上げた物理攻撃さえ防ぐ障壁かな。
まあテンプレだと思うのだが大気を操るってのは凄いもんだと思った。
まあこうして様々な事を試した訳だけれど、発現させやすい魔法とそうじゃない魔法があった。
まずイメージが正確に把握出来るもの程効果も発現するのに必要な魔力は小さくて済んだ。
次に大気の中に元々ある物質を変化させるのは魔力のみで生み出すよりも状態を変化させる方が楽と言う事。さらに空気中から取り出すだけなら更に消費は抑えられた。
次に難しいのが空気から炭素のみを取り出したり、オゾンを作り出したりするのは大変だった。
この辺りの理由はどうなってるのだろうか。
まあ良く判らん。
なんで世界があるんだと言われてもあるからとしか答えようがない。
イッツファンタジーでいいじゃないか。
でも疑問に思っている点を、一応この世界のアーカイブにリンクしてるアイちゃんに確認してみた。
アイちゃん曰く。
まず水での窒息現象について。
(水での攻撃ですが、相手の魔力生体障壁値を超える量の魔力が籠っていた事で脱出が不可能となり窒息がさせる事が出来ています。
もしも水に込められている魔力総量が低かった場合は水を操っている状態を相手の魔力生体障壁に打ち破られるでしょう。
序に述べますと体内で爆散させる事も同様に相手の魔力残量との勝負になりますので発動するかしないかは、相手との魔力量の差と考えてください)
流石です。
一を聞いて十。答えを知るんじゃなくて教えてもらってます。
じゃあ攻撃というか酸素とかでの効果ってどうなってんの。
実際攻撃というか特定の気体のみを散らないように魔力で操作してただけなんだけど。
(魔力生体障壁は攻撃に反応していますが、気体がそこにあるだけでは反応しません。
また動きが素早い敵、知性のある魔獣や周囲の魔力を感知する事に長けた敵には通じにくい攻撃ですのでご注意を)
まあ穴がある攻撃ってことだよね。
次は魔力の消費についてかな。
(基本的な魔法の発生は体内の魔力で自身のイメージした現象を発動させます。
その際に原理や仕組みなどをより深く理解している事が重要な要素となります。
マスターで例えるなら、思考想像の補正値の部分になります)
つまり、明確なイメージで消費する魔力が大幅に削減されているって事だよね。
(そうですね、爆発の魔法でご説明すると、なんとなく爆発するという現象を見たことがあって魔法で再現するのと、火薬という物が爆発したと知っていて爆発させる現象を起こすのと、水素と酸素を結合させて爆発を起こすのとではその威力、消費魔力が違って当然と言う事ですね)
ふむ、イメージの違いは現象の違いか。
(次に、魔力の消費量の変化するのは魔力を変化させて作った物質、魔力を使って物質に変化を齎した物質、存在する物質を動かしたりするだけ、と消費量が抑えられる訳です。
無から有を作り出すのが大変なように存在していない物質を作り上げるのは魔力を大量に消費し、作り出した物質も仮初の存在ですので魔力を失い次第消失します。
次は相転移させる方法と、二酸化炭素から炭素のみを取り出したりする事を理解しているマスターですからこそ少量の魔力で発現を可能としてます)
そこが理解度ってことね。
魔法世界で化学や科学が進歩しにくいテンプレか。
となると、疑問に思うのが俺の作り出した障壁だよな。
あれって所謂結界の簡易版じゃん。
(一般の魔導士で結界が使えると言っても通常は魔力生体障壁と同等の物を展開させています。
また神官などが利用する障壁は神様からの神秘を借りているとしていますが、マスターと殆ど同じ魔法現象をシステムに組み込んで許可制で運用していると説明した方が判りやすいと思います)
オーッケー女神様達がサボれる方法を確立しているってのは素晴らしいな。
んじゃ最後に、魔力生体障壁で直接とか、槍の形状とかにして戦闘するのってどうなのかね。
(サボる為では無く神秘の発動を確実にする為だとおもうのですが。
魔力生体障壁を削りあうのが戦闘の基礎ですので間違ってはいませんが、魔力生体障壁は防御という概念が自動的に発生している物ですから効率が悪いですね。
壁を壁で殴るよりも魔力を武器にして攻撃した方が効率的と言う事です)
納得した。
あとは此奴で実践だな。
40万エールゲットだぜ。
(最後に、新しく作り上げたマスターの魔法ですが、発動させればさせる程、世界がその魔法を認識していくというステータスシステムによって発動しやすくなっていきますので使い続けて下さい。
それと、今お使いの現実的な魔法では無しえない事も魔法では可能なので、そのあたりをまた勉強しましょう、マスター)




