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チキン!  作者: せおはやみ
古の契約編
12/51

少年は手を振り続ける

 村を回ると言っても、大きな村では無い為店が無い。

 200人に満たない村で店舗を経営しても儲けが出ないから仕方がない。


 だけど目的は調味料の入手である。

 と言う事でその手の物を管理している村長のお宅へ訪問とあいなった。


「村長の爺ちゃーん、お客さん連れてきたよー」


 流石子供、遠慮が無い、又もや扉を開けて突撃していった、まるで自宅のようだ。




「ほうほう、これはお客人、ようこそ。村長のベンノですじゃ。

 してこんな辺鄙な村へ何用でしょうかな」

「どうも、突然の訪問ですいません、お聞きになってると思いますが修行中に立ち寄らせて頂きましたクロウです」


 現れたのは好々爺と言っていい爺様だった。

 見た目だけな、中々に強いとみた。

 目の光が違うとでもいうか、何かを嗜んだ目をしてる。

 まあ少し警戒はされているようであるが、当然の事だから構わない。

 トーマス少年との出会いから薬の話をすると大変有り難がられ、お礼を述べられた。

 立ち話もなんだからと居間へと通してもらい、そこで何故村に薬がないのかを教えてくれて、出来れば薬か薬草を買い取りたいとお願いされた。


「二日前です、村に賊が忍び込んだようでしてな。

 物資を保管している蔵の一つが荒らされましての。

 薬と食料を盗まれましたのじゃよ。

 幸いな事に全部持ち出される前に気が付いたのですが逃げられてしもうて」


 賊かあ、賊と言えば野盗が居たなぁ。


「逃げられたのは森の方ですか」

「そうですの、流石に森の中にまで逃げられると追手が危険ですからの引き返してきましたのじゃよ」

「あー、その野盗なら恐らく六裂熊に」

「なんと、そうですか。奪われた薬などは諦めるほかありませんの。幸いにもアレと出会ったのが追手でなくて良かったと思うしかありません」


 どの辺りで六裂熊にあったのかも教えたら安堵していた。村人でアレに対するってのは死亡すると同じだからだろう。


 薬は解熱と回復薬が盗まれてしまっていたとの事。

 森を迂回して町へ買い付けに行った者が戻るのに早くて六日その間に怪我人やトーマスの親のように熱を出す者がいないとも限らない。

 そんな理由から先ほどの申し込みと言う事だそうで、此方から薬を村からは料理に使う酒や酢、胡椒、砂糖、塩、食用油、牛乳、卵、小麦粉、野菜などを分けてもらった。

 備え用と言う事でそんなに量も必要では無いから、村に負担が掛かるような無理な取引では無かった。

 交換率もアイちゃん曰く悪くないらしい。

 因みに本職さんが作る薬と同じように、保存の魔術が掛かった瓶に封入してある。

 当然効果は上だけどそこはサービスってことで。


 驚く事でもなかったが、村で分かったのは識字率の低さというか、一般の人々に学ぶという考えが無い事。

 名前が書けて、簡単な計算が出来れば後は農業の知識の方が重要ってことだ。

 為政者、封建制度ならばコントロールしやすいのは学の無い人間であるから当然でもある。

 知識の独占ってのは当たり前だからな。

 そう考えると、江戸時代は化け物だな。

 高度な教育は一部だけが対象だったのだろうけどね。

 話が逸れたが、そんな中で村長はエリートだった。

 村の税や兵役を管理し、辺境にある故に神官の代理も務め、警備についても考える。

 この地方の領主に仕える店子な男爵家の従者でもあるのだとか。

 息子夫婦が男爵家へと奉公し、孫を町の寄宿舎に入れているのも納得である。

 巨大な支配構造のピラミッドが見えそうだ。

 村人の為に薬を常備し、無ければ町まで買いに行かせるのだから善政だなと関心した。



 村長の家を辞するときに村のみんなでどうぞとばかりに大牙猪の肉を一頭分プレゼントしておいた。

 散策する場所もないのでトーマスの家へと向かい、床を払おうとしている二人をもう一度寝かしつけて晩御飯の準備をした。

 炙った弾雀の肉をコトコトと見知ったような野菜達、多分同じじゃね、ってことで人参、玉葱、キャベツと一緒にホワイトソースで煮込みパンを浸しチーズを少し振りかけて作ったパン粥? グラタン? っぽい料理である。

 幾ら魂位がそこそこあっても、病み上がりで牡丹鍋って訳にもいかないだろうからね。


 そうそう、農民でも、いや農民だからこそなのだろう、両親共に確認させてもらったが魂位11だった。

 成人したら全員で狩りに参加して魂位を上げるらしい。

 聞き込みもしたのだが、兵役云々もあるけども、それよりも時折迷い込んでくる害獣などの脅威があるから村人の成人は男女問わず魂位が10位はあった。

 狩人とかはもっと高く21村で最も高かった。

 アイちゃん情報だと森の浅い場所で大牙猪位は仕留めるだろうとの事。


 夕食後の団欒も終わると就寝となる、農村の夜は早いのだ。

 雑魚寝だけど悪くないな。

 そして翌日、朝日が昇ってから出立を告げてお礼を言われるというやり取りをした後に村を出た。

 見送りは門まででいいとトーマスを説得して再度森へ向かう。


「クロウ兄ちゃーん、ありがとー」


 一期一会、悪くない出会いだったし、色々と俺も教えて貰えて感謝している。

 俺から姿が見えなくなるまでトーマスは手を振り続けていた。

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