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第一章 ドクロ杖の少女〈8〉

「その点、私の式神やのどかのドクロ杖で、悪魔が魔法を使う前に〈狩って〉しまえば、ほかの悪魔に気づかれることもないし」


「それならそうと、さいしょから云ってくださればよかったのに。私とて〈冥土(メイド)巫女(ミコ)〉。その程度の分別はつきます」


「でもさ、愛しのしのクンが、あんたの目のとどかないところで悪魔と闘ってるかもなんて知ったら、やきもきするでしょ? 心配するでしょ?」


「そ、それは、まあ……」


 ニヤニヤ笑いでからかう紀里香の言葉に、モヘナがもじもじとほおを染めてうつむいた。そんなモヘナのようすに、しのぶもなんとなく照れてうつむく。


「こらこら、ふたりだけの世界をつくるんじゃない。……ただ、ちょっとモヘナに訊きたいんだけどさ」


「なんですか?」


五大元素(エレメント)なしで魔法を使うことってできる?」


 紀里香の質問にモヘナがあごに手をあてて沈思する。


「それはムリです。……五大元素(エレメント)の消失を隠すような結界魔法があるのかもしれませんが、そう云った魔法陣の組み方は想像できません」


「なんでそんなこと訊くの?」


 しのぶの問いに紀里香が答えた。


「吸ケツ鬼が魔法を使った痕跡がないの。発見されたミイラに魔法の残滓があるって云うから十中八九、悪魔だとは思うんだけど、あそこまで人を吸いつくすのに魔法を使った痕跡がないのはおかしくない?」


「そうですね」


 モヘナが首肯した。


「吸ケツ鬼による連続殺人事件だとわかって、陰陽師が鳴鳥市で警戒網をはってたにもかかわらず、新たにふたりのミイラが発見されてる」


「陰陽師の目をかいくぐって犯行はくりかえされているのか。坐浜(ざはま)市は大丈夫なの?」


「繁華街とか人目につきにくいばしょとかアヤシイところへキクちゃんを配置してるけど、いまのところ異常はない」


「キクちゃんってだれ?」


「人じゃなくて、式神よ。遠隔型監視式神・聴駆追烏(きくおう)。こう云うヤツ」


 紀里香がしなやかな人さし指をとまり木のようにさしあげると、小鳥のような1本足の式神があらわれて、その指にとまった。


 小鳥と云っても頭部はない。胴体正面に大きなひとつ目があり、翼はとがった耳のかたちをしていた。尾羽があるのは飛行時のバランスを取るためであろう。


「かわいい!」


「気色悪っ!」


 モヘナとしのぶでキクオウの外観に対する評価が割れた。


「かわいいよねえ? しのぶ、あんたセンスないわ」


「いや。アイドルコスプレの紀里香にだけは云われたくない」


 初対面の時、紀里香が着ていたのは究極団体アイドルのコスプレみたいな全身タータンチェックのミニスカート。のどかにいたってはエプロンドレスのメイド服だった。


 人里離れた山奥(の神社)育ちとは云え、TVもインターネットもあったのに、それらを最先端のファッションと勘違いしていた紀里香・のどか姉妹である。


「い、今はちがうでしょ!?」


 紀里香が赤面した。鹿香(かのか)家からふつうの高校へ通いはじめて、さすがに自分たちのファッションセンスの逸脱ぶりを自覚したのだ。のどかの私服もまだまだサイケデリックだが、あれでも改善された方だ。


「とにかくっ! モヘナを足どめしておく必要もなくなったから、明日からは私があんたと一緒に警戒にあたるわ、しのぶ」


「マジかよ……」


「モヘナもしのぶが私と一緒なら心配ないでしょ?」


「そ、そうですね。しのクンは胸ちっちゃなコに興味ないから、紀里香さんとふたりきりでも誘惑される心配は……」


「そっちの心配じゃないっ! 私の式神でしのぶを守るから心配ないってことよ! だれがこんな白馬鹿、誘惑するかっ! て云うか、今あんたハッキリ云ったね!? 私のこと胸ちっちゃなコってハッキリ云ったね!?」


「だれが白馬鹿だ、だれが!」


「私はあくまで客観的観測に基づく事実をのべたまでで……」


「あの~、お3方。そろそろお休みになられた方がよろしいかと……」


 3人の眼前にふわりと舞った式神のタカオが、あきれ声でいさめた。



     7



 そして翌朝。


 坐浜(ざはま)市北東部で新たな犠牲者のミイラが発見された。

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