第一章乃 きゅう
最初の即売会の売上げの半分を渡そうとしたが拒まれ、
薄い本のお金も売上げから出すと言ったが拒否され、
しょうがないので、彼の家に入り浸り、
薄い本を読み漁りながら、2人で使い道を考えた。
出した答えは、隠れ家を持とうだった。
すでに撤去されたワンボックスカーの様な、
私たちだけの隠れ家を。
私は、父に交渉し、自宅の外縁ぎりぎり外に
小さな借家を、私名義で借りてもらった。
係るお金は、すべて売上げから出し、
私にとっては仕事場兼資料室、
彼にとっては専用図書館な隠れ家ができた。
仕事道具を持っていくときに、
母は、一言だけ注意をしてきた、
「生きるの死ぬのには、まだ早いからね」と。
未成年2人だし、強盗などに注意しろという意味に取ったが
片方は九十九乱造の如き巨人、私もすでに160cmを超え、
力では彼に劣るが、速さでは勝り、生半な相手に
負ける道理は無かった。
だが、意図はそこには無く、ほどなく借家の道路向かいに
腰までの高さの小さな自販機が設置されていた。
中には小さな箱3種が入っていた。
使い方を知るのは、まだ随分先だが
出産はまだ早いぞという意味だったらしい。
彼が3次元にまったく興味が無い人間だと知っていれば、
見当違いの心配だとわかっただろうに。
隠れ家ができたため、創作活動は順調以上に進み
夏コミケ分の本・イラストボード・コスチュームは、
夏休み前に準備できた。
そこで夏休み序盤は、シュラフと水着を持って
無計画自転車旅行に出た。
2人で地元の海岸線を自転車で巡り、
漁獲制限の無い海岸で潜り、
サザエ・アワビ・ウニ・タコ・カニを取って食べ、
シュラフで寝た。
2泊3日の約40kmの自転車旅行は、凄く楽しかったが
お尻が痛くなるので、2度はやらないと心に決めた。
そうして、夏コミまでの時間、のんびりしている時に
あの絵に逢い、この夏コミで女性作家Sと出会い、
編集Oに出会い、作家Kに逢うことになる。