冬の乾いた空の下で
あぁ
そっか、俺って死ぬんだ
何年生きた?16と半年ちょっとか
短いな。いや、十分長かったか
結衣にも教えてあげたいな
走馬灯ってほんとにあるんだぜって
無理か
もう結衣とは話すことは無いのか
もう少し長く続くと思ってたんだけどな
8ヶ月間近だったな
せっかく2ヶ月ぐらいかけて創った歌も
だれかに聴かれることもなく死んでいくんだ
もったいないな
けっこういい歌なのにな
しかしまさか振られるとは
1年も経ってないのに
誕生日の5日後だから6月半ばだったか
いきなりLINEが来たと思ったら
告白されて
別に嫌いなタイプじゃなかったし
適当な気持ちでOKした
まさか
こんなに惹かれるとはな
特に可愛いわけでも無いし美人でもない
ただ優しくてクシャっと笑う顔が好きだった
最初の頃はマックで昼飯食べて
ぶらぶら歩いて公園のベンチに座って
ひたすらまったりしてたな
そのうち繁華街とか行って
お揃いのサングラス買って
ゲーセンでプリクラ撮って
イチャイチャしながら歩いてた
それなのに2月に入る直前から
急に遊ばなくなって
LINEの返事も遅くなって
帰ってこないような時もあって
なんだろう、倦怠期ってやつか?
とか軽く考えて
前々から考えてた歌を次の記念日の日に
サプライズで歌おうとか思ってたら
記念日の3日前に
ごめん、別れようって
突然言われて
俺はバカみたいに突っ立って
黙り込んでたら
結衣が泣きながら謝って
どっかに走って行った
ほんとはちょっとまてって
もう一回チャンスくれって
すげー思ってたけど
なんか
なんか言えなかった
別れる原因は多分俺なんだって
なんとなくわかった気がして
俺が死んだら葬式来てくれんのかな
来て泣いたりしてくれんのかな
もし泣いてくれんなら、死んでもいいかな
葬式か
誰が来てくれんのかな
来て、泣いてくれるようなやついるのかな
いないだろうな
そんなに仲良いやついなかったし
そうだ
総一郎と誠也がいるか
あいつらは泣いてくれるだろうな
うん、きっと泣いてくれる
総一郎とは長いな
小3からずっと遊んでたな
中1の時は学校に馴染めなくて
2学期に入ったあたりから
俺は引きこもってた
けどあいつは俺んちまで来て
学校サボって一緒にゲームしてくれたな
でも
それで学校の先生とお母さんに怒られたって聞いて
俺はあいつにとって邪魔なんじゃないかって
考え始めたら止まらなくて
次の日あいつが着たら
ウザい
そう一言だけ言って帰らせた
それがあいつのためだと思った
だけどさ
違うかったんだな
俺にお前しかいなかったみたいに
お前にも俺しかいなかったんだ
中2になって少しした時
母さんにあいつがいじめられてるって聞いて
次の日、俺があいつの家に行った
1年ぶりぐらいだった
俺を見るなり
あいつが俺の目の前で
初めて泣いた
次の日から学校に行った
周りのやつはみんな
いろいろ言ってきたな
なんで今更?とか
何しに来たの?とか
全部無視してたけど
けっこう辛かったな
そしたら1人だけ
久しぶり、元気だったか?って
心配してくれた奴がいた
誠也だった
中1の時同じクラスだった誠也とは
妙に波長が合って
割と一緒にいることが多かった
けど引きこもってからは
なんの関わりもなかった
だけど
誠也はずっと心配してくれていたらしい
すげー嬉しくて
珍しく泣いたな
それからは俺と総一郎と誠也の
3人でいつも遊んでた
カラオケも行ったし
ゲーセンにも入り浸ってた
俺んちでゲームしまくったし
学校サボってコンビニで立ち読みもした
それで3年にあがる直前に
総一郎が言い出したんだ
バンドやろうぜって
俺はバカだと思った
でも俺は賛成した
なんでかわかんないけど
こいつらとなら
どんだけ辛くても平気だと思った
誠也も当然のように賛成してた
でも現実甘くなかったな
総一郎は
音楽の専門学校に行くって言って
俺も誠也も同じ気持ちだった
けど俺の親は許さなかった
引きこもってた割に勉強が出来た俺は
公立の高校に行けって
親と教師が言ってきやがった
俺の人生は俺のもんだって
言って専門に行こうとしてた
けど俺はビビってたんだ
これで専門に行って売れなかったらどうしようって
無駄に現実主義だった俺は
結局、専門に行かずに公立に行った
誠也も専門に行かなかった
違うな
行けなかった、が正解かな
家庭の事情ってやつで
行けなくなってしまった
仕方ないなって
3人で無理やり納得した
専門じゃなくてもバンドはできるって
それさえも上手くいかなかった
総一郎は専門で頑張ってるのに
俺なんかが総一郎とバンド組んでいいのかって
俺より上手いやつなんかごまんといるのにって
思ってた
誠也も多分同じ気持ちになったんだと思う
そのうち集まらなくなって
LINEもしなくなった
俺らが弱かっただけなんだけど
すげー辛くてさ
何にもやる気起きなかった
だけど
今だから言うけど
ほんとはお前と組みたいんだよ
総一郎
誠也も絶対そう思ってるよ
けどお前といるのが
不釣り合いなんじゃないかって
勝手に俺らが思ってるだけなんだ
だからさ
誠也とバンド組んで成功してくれないかな
この気持ちが
お前に届いたらいいのに
総一郎
あぁ、眩しいな
ヘッドライトがもうすぐそこだよ
怖いな
怖いよ
怖いなんてもんじゃないよ
けど怖い以外に表せないんだな
あんなの馬鹿でかいトラック
ぶつかったら即死だよ
なんでこんなクソみたいな人生歩んでたんだろ
そりゃその時はこれがベストだって
この道で行くしかないって
思ってたけどさ
もっとあっただろ!
絶対に!
もっと結衣のこと見てあげれば
他の女の子なんか見向きもせずに
ただただ見つめ続ければ
絶対にまだ付き合ってたはずなのに
あの時勇気を出して
もう一回チャンスくれって
そしたらまだ付き合えてたかもしれないのに
親に気持ちぶつけて
専門行きたいんだって言ってれば
今も総一郎と誠也と
スタジオでバンドの練習してたかもしれないのに
引きこもって無かったら
もっと長く一緒に遊べたはずなのに
もう一回抱きしめて
もう一回キスして
クシャっとした顔で笑いながら
俺の名前呼んで欲しいよ
3人でゲームして
コンビニで立ち読みして
もう一回笑い合いながら
夢について語り合いたいよ
もうぶつかるな
16と半年ちょっとか
長いな。いや、短すぎたな
絶対にもっと楽しい人生送れたな
今なら自信あるよ
こんなにいい彼女と
こんなにいい友達が
すぐそばにいてくれてたんだから
はは、もったいないな
死んだら
結衣のことも
総一郎のことも
誠也のことも
忘れちゃうんだろうな
けどこの思いは
覚えておきたいな
せめてこの思いだけは
忘れたくないな
どんな人にも
周りを見れば
自分を思ってくれている
大切な人が
必ずいるんだ
その人たちの事は
何よりも
大切にしよう
冬の乾いた空の下で
自分が強く思っている事を
実体験も織り交ぜながら書きました。
自分の心の中から出てきた言葉を
繋ぎ合わせただけなので
とても雑な話ですがいかがでしたか?
こんな拙い話を読んでいただいて
ありがとうございました。
心の底から感謝を申し上げます。