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勇者…スーツを装備する

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「なぁティア。お前のお父さんってどんな人なんだ?やっぱり魔王の親だし怖いのか?」

魔王は俺の首に閉められたヒモ状の帯ネクタイとか言うのを閉めながら俺を見上げた。

「お父さん?ん――……別に怖くはないと思うよ?」

「何を言ってるのですかお嬢様。お父上様は私でもまだ震えがきますよ。」

ドラゴンの娘キサラが言うとティアは柔らかく笑ってキサラの頭を撫でた。


それにしてもこのスーツとか言う装備はきつい。

明らかに防御力なんか無い。しかも見た感じでは魔法の効果も感じない。腕も思ったより上がらずに激しい動きには適していない。

にも関わらずティアはサンワリマシとか言う呪文を繰り返し、俺を着飾っていく。

そしてティアもドレスアップし二人で鏡の前に立つと満足そうに呟く。

「うん。どっから見ても人間のカップルね。」

色々突っ込みたい。

その俺の心を見透かしたようにキサラが

「お嬢様。いい加減に中二的な発言はお止めください。」

「え~でも人間にみえるでしょう?私」

「人間には六枚翼は生えておりませんが?」

「な…何を言ってるのキサラ。この翼はアホにしか見えないのよ?」

このって言ってる時点で自分も見えている事を示していて色々おかしい。ってか、普通に翼…見えますが。

「なぁ…魔界では人間の真似をするのが中二なのか?」

人間の世界とまるで逆なのか?色んな発言や服装で変わった趣味を持っているのは人間の世界にもいる。こともあろうか魔族だと言い張る人間までいるのは事実だ。

しかし、魔王が中二で人間かぶれってのはどうかと思う。

俺が色々考え込んでいると、俺を見透かすような瞳で見ていたティアが膨れっ面になった。

「…シオン…お嬢様は心を読めますよ…」

最初に言ってくれキサラ!!とは言えず俺はティアが笑顔になるまで何十回も謝ることになった。




「話は戻すけど、ティアのお父さんって一緒に住んでねーのか?」

三人で長い通路を歩きながら尋ねると、ティアの代わりにキサラが鼻息荒くこたえた。

「お嬢様のお父上様はお忙しく、世界を渡り歩いております。ですからシオンのような人間がおいそれと会えるような方ではありません。」

何でお前が自慢気なんだと……喉まででかかった突っ込みを飲み込む。キサラ…俺の事を名前で呼んでくれるんだな。人間と呼ばれていた俺は少しだけ嬉しいと思えた。

ズガン!!

隣でニコニコ笑いながらティアが俺の足を踏みつけやがった。ごめんなさい?なんて言っていたがあれはわざとだ。ティアは笑顔で怒るタイプか…つまり、一番怒らしてはいけないタイプだ。肝に命じておこう…。



再び機関車に乗りゲートを潜ると、そこは満天の星が輝く夜空が目に飛び込んできた。

クリスタルのような鈍く輝く湖。

向こう岸には楽しそうに走り回る動物達がみえる。

夜だというのに温かくて……

まるで魔王の親が住むような風景にはみえない。


「あら?ティア?いつ帰ってきてたの?」

優しそうな、柔らかい口調で女性が話しかけてきた。

俺をはじめ、ティアとキサラ三人が話しかけてきた女性の方を振り向くと……


「せ、精霊の女王様!!」

「え?あなたは確か……どこかの世界の…商人さん?」

「勇者です!!」

あぁそうそうと、両手を合わせ笑顔をみせる。

「でぇ、その勇者さまが何でこんな所にいるのお?説明してくれるわよねぇ?ディーヴァ。」


ゴゴゴと擬音が聞こえて来そうな笑顔で精霊の女王がティアに詰め寄ると

「マ……ママ…ちょっと怖い。怖いよ。ねぇ、キサラぁ………あ。逃げた…」

キサラの方を見ると、遥か向こうに飛び去っていくドラゴンが見えた。


「って言うかちょっと待てぇぇぇぇ!!今ママとか言わなかったかぁ?」

「ん?そうだよ?私のママだし。どうしたの?シオン」


ティアは首を傾げて可愛く俺を見ている。

いやいや、今はそこは問題ではない。魔王の親が精霊の女王様!?普通におかしいだろ。ありえないですよねー?

俺は魔王を、倒すために天空城に行き、光の剣を神より授かった。その天空城に行くための最後のクリスタルロッドを授けてくれた精霊の女王様が、魔王の母親ぁ?

俺が頭を抱えて考え込んでいると、後ろから声がかかった。


「おお?ディーヴァ!!帰って来てたのかぁ。パパは嬉しいよ!」

と言うのが早いか、動くのが早いか、男がティアを抱き締めた。

もうここまで来たら驚かない。

光の剣を授けた創造神だった………


俺が更に頭を抱え、しゃがみこみながら悶えていると

二人の親は声を揃えて言った。



「彼…面白いねぇ…」



ティアは顔を真っ赤にしていた。



続く

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