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久留宮あさぎが学校にたどり着き、自分の教室に向かう途中、ちらりと隣の組を覗いた時、珍しくそこには庸人の姿はなかった。朝練がなくとも、この時間にはいつも来ていたのになあ、とあさぎは思い、首をかしげた。携帯を取り出し、庸人に対してメールを打つが、返事は来なかった。

あさぎは庸人のことはただの腐れ縁、と思い込むようにしている。ただの幼なじみ、そして部活の仲間。切磋琢磨し合うだけ、そう思っているが、どうも最近はそう言う感情以外のものが自分の中で育っていることを、彼女は認識していた。


(参ったなァ)


昨日友人たちに言われたように、恋人になれたら、なんて考えることさえあるのだ。

街での異常があるというのに、気楽なものだよなあ、と自分自身に苦笑したあさぎは、まあ、こんな日もあるか、と自分に言い聞かせた。

そうやって、庸人が何かに巻き込まれた、という最悪のケースだけは考えないようにした。


結局、この日庸人は学校に来なかった。



心配したあさぎは学校帰り、庸人の家によったのだが、庸人の母も父も不在であった。近所の人曰く、昨日の夜は少なくとも両親はいたはずだという。三人家族の用途の家族はおらず、鍵も閉まっているため、中の様子はうかがえない。

仕方なく、あさぎはすごすごと家に帰ることにした。



その日の夜、珍しく優輝があさぎの部屋に来た。父は残業であり、母も一時は家に帰ってきていたが、またすぐ仕事に戻っていた。風呂にさっさと入り、宿題をしていたあさぎのもとに、優輝は何かに怯えるように部屋の扉を開け、あさぎに抱きついた。


「どうしたの、優輝?」


小学校に入る前は、怖い夢を見た時、母よりもまずあさぎのもとに優輝は来たものだった。母や父を愛していないわけではないが、優輝にとって最大の家族は姉であるあさぎであった。仕事で忙しい両親に代わり、母のようなあさぎは全てであった。そんな優輝をあさぎも愛していた。


「どうしたの、また怖いものでも見たの?」


あさぎの問いに、「夢は見てないよ」と優輝は言う。けれど、その怯えは傍目から見ても、尋常ではない。

幼いころより、よく悪夢にうなされてきた優輝。小学校に上がってからは、そうそう夢を見るとこもなくなり、一緒の布団で寝ることもなくなったはずだった。

けれど、事件の影響でまた・・・・・・・そう思ったあさぎは優輝を強く抱きしめた。


「ねえ、優輝。何かあったの?お姉ちゃんに言ってみなさい」


「・・・・・・・・・・・・・・」


口をへの字にして、手を振るわせる優輝。もとより青白い顔は、かわいそうなくらいに白くなっていた。まるで、幽霊でも見たかのように。


「僕、見たんだ」


「何を?」


「さっき、家に帰る途中、僕を見る何かに・・・・・・・・・・・」


「何か?」


あさぎが問いかけると、優輝は青白い顔でうなずいた。


「最初は猫かな、って思ったんだ。けど、違う。あの大きくて、黄色い瞳はまっすぐに僕を見て、笑ったんだ・・・・・・・・・・・・悪魔みたいに」


悪魔。そんなもの、いるはずないじゃない。そう言おうとしたあさぎだが、優輝の様子を見て、その言葉は飲み込み、ただ優輝を撫でた。


「それで、言ったんだ。見つけた、って」


「・・・・・・・・・・・・・・」


あさぎは沈黙した。不気味なことだとは思う。けれど、それ一回では優輝の見間違いや聞き間違いなのではないか、と思ってしまう。悪魔なんて、にわかには信じられないことであった。


「何かの、聞き間違いじゃないの?」


「違うよ、お姉ちゃん。あれは、あいつらは、もっといっぱいいて、僕を見ているんだ。さっきも、お風呂の鏡で僕の顔をした悪魔が言ったんだ。『見つけた、逃がさない』って」


ゾワリ、と背筋が凍る。あさぎは、この子が嘘を言っていない、と本能的に察知した。優輝のことは、誰よりもあさぎが知っている。いたずらでも、こんなことを言わないし、優輝がこんな顔をすることはない。夢などよりも、もっと深刻な、目に見えない何かが、迫っているのだ。


「お姉ちゃん、僕、怖いよ」


もしかして、とあさぎは感づいた。朝、優輝の様子がおかしかったのも、これのせいかもしれない、と。


「ねえ、優輝。そいつらは、何時から優輝の近くにいたの?」


「わからない、ずっと見られている感じがするんだ。ここ、数週間・・・・・・・・・・・・」


まるでそれは、この街に事件が多発するようになってからではないか、とあさぎは思った。

これは、街の事件とは無関係ではない。何かが、優輝に迫っているのだ。

あさぎは自分の中にある恐怖をおしこめると、優輝の顔を抱き、その瞳を覗き込み、強い口調で言う。


「大丈夫、大丈夫よ、優輝。お姉ちゃんに任せなさい。何があろうとも、あんただけは私が守る。絶対にね」


「お姉ちゃん」


大丈夫、とその身体をさする私に、優輝は泣いてすがりついてくる。

たとえ、何が来ようとも、弟を渡して堪るものか。悪魔か何かは知らないけれど、と私はカーテンから夜の闇を見た。

その闇の向こうで、何かが光ったように思えた。



何やらトラブルがあったとかで、あさぎの両親の帰宅が遅れると知ると、あさぎは弟とともにベッドに向かった。本来ならば、もう少し起きているのだが、眠る弟に合わせ、あさぎも寝ることにした。

戸締りをしっかりとみて、自分の部屋に弟共に入ったあさぎは、きょうだい体を寄せ合わせ、弟の頭を撫でる。

ここにいるからね、と言うと、幾分落ち着いた様子で優輝は目を閉じ、しばらくして規則正しい寝息が聞こえてきた。

よかった、と思うあさぎは、その時彼女の形態がブルブル、と震えたのを見た。弟が寝ているため、マナーモードにしていたのだ。あさぎはそれを取り、受信したメールを見た。送ってきた相手は、連絡の取れなかった幼なじみの庸人であった。

件名のないメールを見て、慌てて開いたあさぎは届いたメールを見る。

ずっと空白が続くメールを、下に下に、とみていくあさぎ。どことなく不気味で、庸人らしくないメール。それに言いようもない何かを感じていたあさぎは、ぎゅ、と弟の手を握る。

そして、ついに文字が見えてきた。そして、それを目に入れた時、あさぎは息を吞み込み、目を見開いた。


『みつけた、見つけた、ミツケタ 見つけたミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタ』


ひぃ、と声を上げてあさぎはついつい携帯を手放した。そして、あさぎは己の肩を抱いた。

庸人はこんなことをしない。誰だ、庸人の携帯で私を脅すのは誰?もしかしてこれは、優輝の言っていた「悪魔」の仕業ではないか。あさぎの脳裏に、黄色い目の悪魔の姿が思い浮かぶ。

危ない。ここにいては、危ない。そう思ったあさぎの耳は、玄関で響く物音に気付く。

いつもならば、それは帰宅した両親だと疑いもしなかっただろう。だが、あさぎのナーバスになった神経は、そうは考えなかった。メールの内容と、優輝の言葉。


(優輝を狙うやつが、来たんだ・・・・・・・・・・!)


あさぎの前身の毛が総毛だつ。恐怖に敗けそうになるが、優輝の顔を見てあさぎは落ち着こうと深呼吸を繰り返す。


(落ち着け、あさぎ!お前が落ち着いて、優輝を守るんだ・・・・・・・・・・)


あさぎはゆっくりとベッドから起きると、何か護身用のものはないか、と部屋を見る。そう言えば、悪ふざけでいつぞや買った木刀が、と思いあさぎはそれを握ると、優輝を起こす。


「優輝、起きて」


「お姉ちゃん、どうしたの?」


目をこすり、暗闇の中であさぎを見る優輝の口に人差し指を当て、シィーッと言い、あさぎはその手を握る。


「優輝、手を離さないでね。もしも、私が逃げるように言ったら、素直に逃げなさいね」


「・・・・・・・・・・・・・・あいつらが、来たの?」


姉の言葉に何かを感じた優輝の言葉に、わからない、とあさぎは返す。

姉の言葉に、優輝は頷いた。いい子ね、とあさぎはその頭を撫でた。

玄関のかぎが開いたような気がした。物音は聞こえないが、何かが二階のあさぎたちの部屋に向かってきているような気がした。

怖さに震えるあさぎだが、弟の手の冷たさで何とか立っていられた。私が守らないと、私が。その思いだけで、彼女はそこにいた。

やがて、部屋の前に来たそれはゆっくりと扉を開けた。


「こんばんわ、あさぎに、優輝君」


部屋の扉を開け、部屋の電気をつけた幼なじみは不気味な笑みを浮かべてあさぎと優輝に挨拶をした。


「庸人、一体何の用?いくらあんたでも、不法侵入はいただけないわよ?」


あさぎは木刀を構え、優輝を背後に庇いながら言う。そんな彼女を見て、庸人は笑う。


「あさぎ、どうしたんだい、そんなものを構えて?僕だよ、渋谷庸人だよ」


「違うよ、お姉ちゃん!その人、庸人さんじゃない、その人、あいつらの仲間だよっ!!」


絶叫した優輝の言葉に、キ、とあさぎは庸人の姿をしたものを見ると、糾弾の声を上げた。


「あんた、誰!?庸人は、庸人はどうしたの!?」


ヒステリックに叫ぶ少女の脚は震えている。その様子を見て、満足げに口を歪めた庸人の姿をしたものは、黒い人間の瞳から黄色い悪魔の瞳に変化させ、二人を見た。


「この体のもとの持ち主なら、今頃は、そうさなァ・・・・・・・・・・」


そう言い、悪魔は自分の腹を指して、ニタリと笑った。


「この辺、かな・・・・・・・・・・・・・・」


おいしかったぜ、と悪魔は笑う。その様子に、あさぎは目を見開いた。

この悪魔は何と言った?庸人を、喰ったのか。そんなこと、あっていいのだろうか。

日常が崩れていく音がした。

まだ、隙かどうかもわかっていなかった、幼なじみ。一緒に走り、そして走ろうと約束していた。陽気な奴で、鬱陶しい奴だったけど、嫌いじゃなかった。悪い奴じゃない、いい奴だった。

それを、それを、こいつは。

怒りに体を震わせるあさぎは、木刀を構える。


「悪魔に、そんなもので太刀打ちできるとでも?」


「・・・・・・・・・・・・・」


悪魔の言葉に、そうだろうが、と思うが、引き下がれるはずがない。弟を守るのは、姉の役目なんだから。


「お姉ちゃん」


姉のパジャマの裾を引っ張り、優輝が小声で言う。


「どうして、あいつ、悪魔なのにわざわざ家の玄関から入ってきたのかな」


その言葉に、あさぎはそれもそうだな、と思う。

悪魔なのだから、もっと手っ取り早く侵入する術はあるはずだ。なのに、しなかった。

それはもしかしてこの悪魔には何か事情があるからではないか、と。

だとしたら、あさぎにももしかしたら勝機はあるかもしれない。少なくとも、優輝だけでも逃がせるかもしれない、と。


「さて、と。遊んでいる暇はねえんだ、さっさとサタン様にお前を差し出さねば・・・・・・・・・」


そう言い、詰め寄ってきた悪魔の顔に、あさぎは木刀を振った。悪魔は油断もあり、その一撃を顔面にまともに食らい、よろけた。


「ガァァ!」


「優輝!」


弟の手を握り、庸人の横を通り抜けたあさぎ。悪魔は喚きながら、少し遅れて二人を追いかける。

思った通り、悪魔は何かの要因で全力を出せないようだ。その動きは人間離れはしておらず、飽くまで庸人の身体能力程度しかない様子だ。これなら、なんとか逃げられる。

そう思ったあさぎと優輝が家の外に出て通りに出ると、そこには何人かの人がいた。

助かった、と思ったあさぎだが、優輝が隣で「あいつらだ」と言ったのを聞き、目を疑った。よく見ると、暗闇の中で光る人々の目は、黄色であった。


「・・・・・・・・・・全員、悪魔!?」


「よかったぜ、保険に何人か連れてきておいてよぉ」


そう言い、庸人の姿の悪魔は笑う。


「天使どもか、それともオンミョージか、クソッタレの神父かは知らねえが、この地区に結界張りやがってるせいで、慣れない体でこんなことしなきゃいけねえ」


そう言い、庸人はだが、と笑った。


「これで、ジエンドさ。これで、俺たち悪魔の勝利が決定する」


じりじりとにじり寄る悪魔たちに、それでも優輝を庇いながらあさぎは周囲を見る。けれども、もう無理なのはわかっていた。

悪魔だか何だか知らないけれど、どうか、と目を閉じあさぎは心の中で叫んだ。


(どうか、優輝だけはお救いください・・・・・・・・・・・・・)


神様とかは、信じてはいない。けれど、今だけは神の存在を信じたかった。

けれど、無情にも悪魔の手はあさぎに伸びてくる。


「お姉ちゃん!」


「大丈夫よ、優輝」


そう言い、その手を握ったあさぎ。そんな少女に伸ばされた庸人たち悪魔の手が、その肌に触れようとした時。


暗闇を、何かが切り裂いた。



「!!?」


悪魔たちが驚き、狼狽えた。あさぎは、目を開き彼女たちより少し離れたところに立つ、一組の男女の姿を見た。

年のころは、あさぎとそう変わらない様子の少年少女。黒髪の野暮ったい眼鏡の真面目そうな少年と、それとは真逆のタイプに見える茶髪の髪の少女。少年は刀を持ち、少女も何やらよくわからない札、らしきものを手に持っていた。


「ダークスリンガーどもかァ!!」


庸人が叫び、配下の悪魔たちに優輝を連れ去るよう合図した。悪魔たちがあさぎたちに向かっていくが、それを阻むように少年霧伏巽が動いた。鞘から刀を抜き放つと、一気に距離を詰めてあさぎと悪魔たちの間に割り込んだ。


「疾―――――」


「消えろ」


悪魔が何かを呟く前に、霧伏の刀が悪魔を一刀両断した。頭の鉄板から股間までを一気に切り裂かれた悪魔は、黒い血を噴出させ、霧のように暗闇に消えた。

続いてその横にいた悪魔の首を容赦なく霧伏は切り落とす。

逃げだ祖言うとした悪魔たちに向かって、少女入沢が唱えた魔術が襲い掛かる。


「行け、退魔の魔焔よ、罪を裁き、あるべき場所に彼の者たちを送れ!」


青い炎が悪魔を包む。


「厭だ、また地獄に帰るのは、いやだぁぁぁぁぁ!!!」


叫びながら燃え滓になった悪魔。

残り一人となった庸人の皮を被った悪魔は、霧伏を見て両手を上げる。


「こ、降参だ、俺たちの負けだ、ダークスリンガー・・・・・・・・・今日はこのまま手を引く、だから・・・・・・・・・・」


命乞いをする悪魔を見て、霧伏はなんの感情も篭っていない目で悪魔を見ると、迷いなく刀を一閃させた。

庸人の身体に三つの線が刻まれ、ずれる。そして、ぼとぼとと四つの肉片が地面に転がる。その肉片を、青い炎が焼き払った。

あさぎと優輝はそれを呆然と見ていた。そして、彼女を見る霧伏の視線で、やっと現実に戻ってくる。

とりあえず、自分たちを助けてくれたのか。そう思ったあさぎは、警戒心を完全に解かないまま、彼らを見た。


「あなたたちは、誰。これは一体、なんなの!?」


抑えていた感情が爆発する。異常だ。何もかもが。

これだけの出来事が起きても、誰一人住人が出てこない。それでころか、わけのわからない悪魔とかいうものに、見たこともない魔法のようなもの。彼らが誰かも、あさぎはわからないのだ。

混乱しても仕方がない、と言った様子で霧伏と入沢は肩を竦める。そして、霧伏は手を差し出した。


「俺たちは、君たちの味方だ。事情もすべて、説明しよう。その前に、移動しよう。時期、連中が来る」


「連中って、悪魔?」


優輝の言葉に、霧伏は首を振る。


「奴らだけではない。ほかの連中も来る。君を狙ってね」


そう優輝を見ていった霧伏はさぁ、ときょうだいを急かした。


「待って、名前を教えて!じゃないと、信用できない」


名前だけでも信用はできないけれど、どうこう言っても仕方がない。けれど、なんとなく聞いておきたかった。

少年と少女は顔を見合わせると、口を開く。


「入沢茉莉」


「霧伏巽だ」


そう言うと、二人はきょうだいに「さあ」と急かす。入沢と名乗った少女が何事か呟き、札を地面に捨てると、あさぎと優輝の身体が淡い光に包まれた。目くらましようの簡単な術式であり、悪魔たちの目を少しだけでも誤魔化せるであろう、というものであった。


「行くぞ」


霧伏はそう言うと、あさぎを抱え込んだ。入沢は優輝を腕に抱くと、コクンと霧伏に頷いた。突然のことに驚くきょうだいをよそに、二人の悪魔殺しは大きく大地を蹴り、夜の空に飛びあがった。

そんな彼らに抱えられながら、あさぎは彼らの後ろの漆黒の空に、何かがいることに気づいた。

最初は光り輝いているから、星かな、と思ったが、この街で星が早々多く見えるはずもないし、光がどんどん大きくなるなんてこと、ないはずだった。

あさぎの視線に気づいた様子で、霧伏は後方を見て、舌打ちをした。


「さすがだな、ザラエル。・・・・・・・・・・いや、あの展開の仕方は、エリサエルか・・・・・・・・!」


「何、あれ・・・・・・・・・・・」


呆然とつぶやいたあさぎに、霧伏は淡々と言った。


「天使だ」


「天使・・・・・・・・?なら、助けてくれるんじゃないの」


まるで敵のように言う霧伏に、あさぎが言うと少年は黒い瞳を曇らせて頭を振る。


「天使が救いはしない。あいつらは君の弟を狙っている。悪魔どもと同じようにな」


「どういう・・・・・・・・・・・・・」


「口を閉じろ、舌をかむぞ」


そう言うと、霧伏と入沢の身体がグン、と空を舞う。そのスピードはとてつもない早さであった。それを追う天使たちも、急速に彼らを追ってくる。

あさぎは訳も分からず、ただ隣にいる弟を見た。弟も困惑は隠せない様子であった。

何が何だかわからないが、少なくとも、もう日常には戻れないことだけが、漠然と彼女はわかってしまった。




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