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銀河エクスプレス  作者: 夏川 俊
16/23

16、作戦会議

16、作戦会議



 ダクトの中で待つ事、小1時間。

 ソフィーが、コックリコックリ、し始めた。

「 こらこら、寝るなソフィー・・・! 」

「 オジちゃん・・ ソフィー、眠たいよぉ~・・・ 」

 そりゃ、見れば分かる。 でも、寝るな。 イザという時、お前さんを、おんぶして行かにゃ、ならなくなるじゃないか。

「 ・・カエルさんの歌、歌っていい・・? 」

 何じゃ、そら・・? ダメに決まってんだろ? そんなん。

 人差し指を口に当て、ソフィーを制す、俺。

「 じゃ、カード持ってるから、ゲームしようよ。 ね? 」

 ・・・あのな。

 見つかれば、即刻処刑かもしれないのよ? この情況にして、カードゲームかい・・? 発見した兵士も、どういうリアクションをするか、ある意味、興味があるわ。 それに・・ 君、いつも持ってんの? カード・・・

 俺は、指先でバッテンを作り、ソフィーに見せた。

 再び、ソフィーが言った。

「 オジちゃん、おしっこ・・ 」

 ぬうぅ~・・・!

 元帥が、下で、引き笑いをしている。 何か、俺・・ 全然、緊迫感が無くなって来たんだケド・・・?


 やがて、無線のバイブレータが振動した。

『 グランフォード殿。 お待たせ致しました。 ブルックナーです。 シュタイナー伍長が配電室のヤツを買収し、5分ほど、明かりのみ切ります。 B16の、エリア21と22の間の廊下の左舷方向の端に、ダクトの点検扉があります。 アントレーとシュタイナーが、大きめのバスケットを台車に載せ、待機していますので、 それに元帥閣下とソフィーには入ってもらい、336号まで戻って来て下さい 』

 助かった・・! また、あのダクトを延々と戻るのかと思い、憂鬱になっていたところだ。

「 了解した。 カウントダウンは、あるのか? 」

『 しばらく、お待ち下さい。 ・・シュタイナー・・ イケそうか? コッチは、OKだ 』

 どうやら、シュタイナーとは、携帯でつながっているようだ。 幾分、声の音量が落ちたブルックナーの声が聞こえる。 やがて、明瞭なブルックナーの声が返って来た。

『 グランフォード殿、宜しいですか? やります! 3・2・1・・! 』

 フッ、と明かりが消えた。

「 閣下・・・! 」

 そう言うと、俺は、前もって外しておいた金網をどけた。 無線をかざし、パネルの明かりで下を照らす。 元帥は、素早くベッドのへりに足を掛け、両腕を上げた。 その腕を掴み、引っ張り上げる。

「 ・・そりゃっ! 」

 元帥は、意外に軽く、簡単に引き上げる事が出来た。

「 おじいちゃんっ! 」

「 ソフィー・・! 」

 抱き合う、2人。

 俺は言った。

「 長居は無用だ! Bの16の、エリア21と22の間の廊下って分かるか? ソフィー 」

「 任して! こっちよ 」

 俺たちは、急いで移動を開始した。


「 グランフォード殿、早く・・! こっちです・・! 」

 金網越しに、ダクト内を移動して来た俺たちを見とがめ、シュタイナーが声を掛けた。 点検扉を開け、外に出る。 ブルックナーが言った通り、大きなバスケットが台車に乗せられ、用意してあった。

 シュタイナーが言った。

「 閣下! ご無事で何よりです・・! 」

「 おお、シュタイナー。 手間を掛けたな、すまん! ・・これに入るのだな? ソフィー、早くおいで! 一緒に入るんだ 」

「 今度は、イチゴ無いの~? 」

 悠長なコト、言ってんじゃない。 早く、入りなさいってば・・!

 バスケットの蓋を閉めると、俺とアントレー、シュタイナーは、何食わぬ顔をして台車を押し始めた。

 俺は言った。

「 シュタイナー。 先頭を歩いてくれ。 雑役をさせている下士官が、業務員と一緒に歩くのは、おかしい 」

「 了解です・・! 」

 アントレーが、前を向きながら、小さな声で言った。

「 うまくいったな・・! ソフィーも、よくやったぞ? 」

「 へっへっへ~・・・! 」

 バスケットの中で、自慢気なソフィー。

 俺は言った。

「 腰が痛いぜ・・! 早く、部屋に戻ろう。 ソフィーは、トイレだし・・・ 」

 俺たちは、336号に戻った。


 アントレー、ブルックナー、シュタイナー、ソフィー、元帥に、俺・・・ まあ、新兵に混じってニックもいるのだが、今のところは、頭数に入れないでおこう。 主要メンバーが一同に会したところで、シュタイナーが『 新人 』を紹介した。 シュタイナーが現在、従事しているバウアー大佐だ。

 彼が、俺に向かって言った。

「 第8ブロック、戦闘指揮 副官のバウアーです。 お目に掛かれて光栄であります、グランフォード殿・・・! 」

 敬礼するバウアーに、俺も敬礼しながら答えた。

「 頼りになりそうな戦力が増えて嬉しいですよ、バウアー大佐 」

 バウアーは笑顔を見せると、元帥の方に向き直り、言った。

「 閣下、ご無沙汰しておりました。 シュタイナーから、全て聞いております。 ご無事で何よりでした・・・! 」

 歳は、50代後半くらいだろうか。 落ち着きのある、いかにも将校といった雰囲気の男だ。

 元帥は答えた。

「 心配掛けたな、バウアー少将。 ・・いや、今は、大佐か。 グランフォード君のお陰だよ。 こうして、ソフィーにも会えた・・・ 感謝するよ。 アントレー君も、よくやってくれた 」

 ソフィーは、元帥に会えて満足したのか、元帥の膝の上でスヤスヤと寝ている。

 俺は言った。

「 大変なのは、これからです。 何せ、仲間は・・ これだけですからね 」

 バウアーが、胸を張って言った。

「 グランフォード殿。 私が所属する第8ブロックの将兵は、全て、閣下を敬愛していた者たちです。 いざとなったら、ゲーニッヒ打倒に一役、買いましょうぞ・・・! 」

 心強い。 最悪、乱戦となった場合は、第8ブロック内でした方が良さそうだ。

 早速、俺は、今後の作戦を検討する為の会議を始めた。

 シュタイナーが説明した。

「 現在、シリウス乗艦のゲーニッヒ派将官は、元、第1艦隊副官のリッター准将、航空参謀のライヒ中佐、1等警務官のタイラー少佐に、シリウス副艦長のラインハルト少将・・ あと、特務軍医のカトウ中尉でしょう。 カトウ軍医中尉は、シュタルト提督の従兄弟に当たります。 ろくすっぽ、治療も出来ないクセに、コネで入って来たヤツです 」

 バウアーが提案した。

「 作戦会議で、全員が顔を揃えたところを抑えてはいかがでしょう? カトウ軍医中尉だけは列席しませんので、別働隊が必要かと・・・ 」

 ブルックナーが尋ねる。

「 将官の側近たちは、どうなんですか? 会議にも、同行すると思いますが 」

 バウアーが、腕組みをしながら答えた。

「 う~む・・・ シュタルトの息の掛かったヤツがいる可能性は、否定出来ん・・! 見極めが厄介だな 」

 元帥が、寝ているソフィーの頭を撫でながら言った。

「 ワシも、ゲーニッヒには、注意をしていたのだが・・ まさか、ヤツの側近のタイラーまでもが、シュタルトに通じていたとは気が付かなかったな 」

 バウアーが言った。

「 ・・バークレー中将には、残念な事でしたな。 貴重な人材を失いました・・・! 」

 元帥は答えた。

「 バークレーと共に、数多くの将兵たちが命を落とした。 ワシは、その償いをしなくてはならない。 グランフォード君たちのお陰で、その道は開かれつつある。 神の思し召しだ。 感謝しよう・・・! 」

 くすぐったいな・・・ 俺だって、崖っ淵なんだ。 元帥救出は、成り行きだぜ。 そう感謝されても、コッチは困る。 礼を言うなら、膝の上で寝ているソフィーに言ってくれ。

 ブルックナーが進言した。

「 バウアー大佐の案で、やってみませんか? 私は、親衛隊員として、勤務監視の命令で乗艦しております。 当然、会議にも同席致します。 拘束する際、私も同様に拘束して下さい。 そうすれば内通者がいても、後で拘束出来ます・・! 」

 シュタイナーが言った。

「 なるほど・・・! それは名案です! いかがですか? 元帥閣下 」

「 うむ。 保険付きか・・ イケそうだな 」

 バウアー大佐も、同意した。

「 やりましょう! まさか、親衛隊がこちら側だとは、誰も気付かないでしょう。 うまく行けば不穏分子をも、一掃出来ますぞ・・! 」

 計画は決まった。 後は、カトウ軍医中尉だ。

 俺は、ブルックナーに提案した。

「 ブルックナー。 軍医さんについては、俺に案がある。 ニックを呼び出してくれ。 あいつが適任だ 」

「 了解しました。 でも・・ どうやって呼び出します? 何か、呼びつける為の理由が無いと・・・ 」

「 お前さんは、勤務監視で乗艦している、親衛隊の士官候補生なんだろ? 勤務怠慢でも、服装風紀違反でも、何だっていいよ。 あいつなら、呼び出しを食らったら、その理由を指折り数えて確認するだろうよ。 疑問に思う事すら無いだろう 」

 ・・そんなヤツが、俺のクルーだなんて・・ 自分で言っていて、恥ずかしいぜ、全く。


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